表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

民の審判

作者: ぱせりちゃん


「今こそ変革のときです!」


 声高らかに叫ぶのは、黒いローブに身を包んだ女だった。


 そこは城下の大広場。女はいつも王座の傍らに立ち、王が選んだ罪人を占っていた。しかし今日は、女が王と対峙するように立っている。いつもフードで隠していた顔を露わにして。


 高く上げた右手の指には、1枚のカードが挟まれていた。


 その絵柄を王に突きつけるようにして見せ、それから観衆に見せる。不思議な色をした女の瞳が、一人ひとりに訴えかけるように動く。


 誰もが女の声に耳を傾けている。どこから来たのか、何者であるかさえ知らないのに、彼女の言葉が神の御言葉であると言われれば信じてしまうような、信じたくなるような、妙な力があった。


「なんの真似だ、マリア」


 王は険しい目つきで女を睨む。顔の下半分が立派な髭で覆われているため分かりにくいが、顔色も悪いように見えた。


 マリアと呼ばれた女は、妖艶に微笑む。


「あなたのお好きな裁判のお時間ですよ」


 土曜の真昼間。大広場で行われる裁判は、王にとって権力誇示のためのパフォーマンスだった。マリアが来てから彼女に任せていたのは、王へのヘイトを避けるためと、そのほうが面白いからだ。


 ――それがまさか、こんな結果を招こうとは。


「愚かな王よ。あなたにはその座を降りていただきます」


 マリアの言葉に異議を唱える者は、ひとりもいない。


 誰かが王を殺せ、と言った。


 そうだ、殺せ!

 殺せ!

 王を殺せ!


 誘われるように民の不満が爆発し、怒号が飛び交う。石や砂が投げられる。


 悪戯に失政を重ねては民から税を取り立て、国を貧困へと導いた。そのくせ自分は贅沢ばかり。あげく、占いなんて不確かなもので罪を量ろうとするような王を、庇おうとする者はだれひとりいなかった。


 どこかから飛んできた剣が王を貫く。

 愚かな民衆を睨んだまま、愚かな王は絶命した。


面白いと思ったら、☆を押していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ