尾行3
本当に姉ちゃんなのか?
確かに、姉ちゃんぽいけど……
髪色も全く違うじゃないか
姉ちゃんは腰まであるアメジストの髪だが、ちょっと前を歩いている女の人は銀色の髪だ。
白髪にも見えそうだが銀だと分かるのは、歩くたびに髪が太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
神界では、銀色の髪はそんなに珍しくもないが、みんな銀より鼠色に近い。だから、こんなに綺麗な銀色の髪は俺も今まで見た事がなかった。
綺麗だな……
はっ、思わず見とれてしまった。
なぜだろう。家族にしか気を緩まないし、気を緩めた事もない。
逆に、気を緩めと言われても出来る気がしない。でも、目の前にいる人は姉ちゃんに似ているせいか気が緩んでしまった。
やはり、目の前にいる人は姉ちゃんなのだろうか。自分の勘を疑っている訳ではない。それでも、髪色が変わると判断するのは断然出来ない。
よく見れば見るほど姉ちゃんに似ている。近くに群がっていた人たちが離れたことで、視界が開けた。
その為、姉ちゃんに似ている人の隣に今まで気付かなかった女の人も見えた。その人も髪が銀色だ。その人は、髪をポニーテールに結んでいてはずすと肩までだろう。
他の人から見れば、姉妹に見えるだろう。だが、腰まである銀色の髪の女の人の方が━━姉ちゃんだとすると、髪を結んでいる方の女の人は姉ちゃんの専用メイド。つまり、ななの可能性も生まれる。
ただ一つ、解けない疑問がある。もし二人が姉ちゃんとななだとしたら、なぜ髪色が違うのか?
カツラのようには見えない。なぜなら、とっても染めれるような色でもない。カツラだったら、今頃流行っているし、話題にならない訳が無い。
━━まさか魔法…?
いや、有り得ないか……。すぐにその考えを頭の中から追い出す。
それもそうだった。何故ならば、今はもう無くなっていて、神界一番の魔法使いでも出来ないものらしい。
いわいる、伝説上の魔法だ。
姉ちゃんなら出来そうだが、習ってもないものが普通のように使うのは無理だ。
神界一番の魔法使いでも出来ないのなら、相当の魔力を使うのだろう。長時間使うのも現実的に考えてないのだろう。
しかし、勘は姉と言っているのだ。
俺はますます意味が分からなくなっていた。
それでも、「姉ちゃん?」なんて聞くことも出来ない。いろんな意味で……
俺の尾行は姉ちゃんをつけるではなく、姉ちゃんらしき人をつける事に変わった。