尾行2
いつも図書館へは、馬車で行っていた。
だから、姉ちゃんが「歩いて行きます」と聞いた時は、は?と思った。
え?ま、待って、ちょっと待って…。え!?なんて?い、今なんて言った?歩いて行く?う、嘘だ〜。絶対に聞こえ間違えたんだ。うん。絶対そうだ。
しかし、現実ではそうはいかないのであった。
愛莉は、母さんに見送られたまま家を出た。
それを見た俺はフリーズしていた。
俺がおかしいのか?──「……タ」「…ウタ?」
「ユウタ!!」
呼ばれた声に意識が現実に戻る。
「大丈夫?ユウタ…」
目の前には母さんがいた。
姉ちゃんを見送った母さんは俺に気付いたようで、声を掛けたという。
「でも、最初声掛けた時はぼーっとしていたから、びっくりしたわ。」
母さんはまた何か言っていたが、俺は聞いてなかった。
そんなことよりも姉ちゃんのことが気になってしょうがなかった。
まさか、愛莉は好きなやつでもできたのか?う、嘘だ!信じられない!!信じないぞ!
姉ちゃんに近づいてくる虫は俺が払っていたし、以外と姉ちゃんは鈍感だから!うんうん、そんなことないない!……はあ、自分に言い訳することしかできない…。
…よし!こうなったら、確かめに行かなくては!!
そして、今に至る。今に至るわけだが…
もうだめだ……。姉ちゃんに彼氏でもできたら………できたら、俺は、俺はもう生きていけない。うう。
もう祈りだ!!俺は祈りに頼る!!!祈りに頼るぞー!もし、祈りが効かなかったら……恨む!神様を恨むぞ!!!!
だから、聞いてくれぇ!!!!!!
キャップを深く被りながら、俺は家を出た。
あれ?姉ちゃんは??どこにいるんだ?
街に出ても、アメジストの髪色の人は一人もいなかった。
もう勘に頼ろう!
俺!!落ち着くんだ!!!大丈夫大丈夫……
俺は目を閉じて深呼吸をした。
全身で姉ちゃんを感じる。
いった!!!!!
目を開ける。あれ!?
本当に姉ちゃんなのか?