記憶3
私の前世は風芽と言う名前で、弟の風牙とお母さんの落葉。そして、お父さんの牙狼の四人家族だった。
ちなみに、私──風芽は自分の名前の由来が大好きだった。なんでも大好きなお母さんの名前からで、落ちた葉の後から発芽する芽という意味で「芽」とし、風芽の「風」は、風に吹かれても発芽する芽のようにたくましく健やかに育ってほしい、ということらしい。
お母さんとお父さんが大切に考えてくれた名前が、私の宝物となったのは言うまでもない。
風芽で生まれたときは、当然今までの色々な思い出が私の心に残っていた。友達と笑い合った日々、忙しい仕事や大変だった生活、出会ったいろんな人……。
しかし、生まれた時に感じたのは安堵だった。
ああ、またお母さんとお父さんに会えたんだ、よかった……。
この神界では、生まれて来る時は赤ちゃんではない。
亡くなった時の姿になって、神界に来る。その時に家族や先に亡くなった仲のいい友達が向かいに来るのが多い。そして、新しい名を預かるのだ。
新しい名前を受け取れば、その瞬間から“家族”として再び結ばれる。そして、来世でもまた、同じ家族として生まれ変わることが約束される。
逆に、迎えに来なかったり、新しい名前を受け取らなかった場合は──家族の絆はそこで終わり、新しい命としてまったく別の家族に生まれるのだという。
だから、『家族の繋がりは変わらない』のところは言えばちょっと間違えてる。だがまあ、家族が向かいに行かないことや新しい名前を受け取らないケースは非常に少ないらしい。
体験したことがないから詳しくはわからないけど……まあ、『家族の繋がりは変わらない』のとこは合っているとも言えないこともない…?
身内の誰かが亡くなるとゲートのようなものが現れ、行くか行かないか聞かれ、「行く」と言えば、ゲートが開き迎えに行ける。でも、「行かない」と答えれば、ゲートはなくなるらしい。
私は「行く」と答えた事しかないけど…。うん、多分そうでしょ。本に書いてあったからそのはず……!
でもやっぱりおかしい……
今世では新しい名をもらってないし、前の人生で私は新しい名を受け取ったんだから、人界で同じ家族になるはず。でも──
ていうか、まず人界じゃない!!なんで!?神界のルールが変わったのかな?
じゃあ、家族の絆の所についても、改めて調べる必要もあるのかもしれない……。
◇◇◇◇◇◇
コンコン
「お嬢様、起きっていらっしゃいますか」
「ん……」
朝、メイドのななが呼びに来た声で私は起き上がった。どうやら、私はそのまま寝落ちしたようだ。
「失礼します。お嬢様、支度をさせていただきますね」
「うん…。お願い…」
ぼうっとしながら、返事をして支度の準備に取り掛った。
「できましたよ。お嬢様」
「ありがとう」
「お嬢様、朝ごはんが出来たので移動しましょう」
「うん。今行く」
私はご飯を食べるために部屋から出た。