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狂ってしまった歯車  作者: elly9521
二章 掟
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図書館2

 私はその後ろ姿に向かって、手を伸ばす。

 手が肩に触れるタイミングで「わっあ!」と声を掛けた。


 驚かされた相手は、悲鳴を上げて、びくっと飛び上がった。


 そこまで読んでいた私は、もう声が他の人に聞こえないように沈黙魔法をかけた。

 これで、他の人には聞こえないが、対象の人は聞こえるため、この魔法は秘密話をするときによく使う。


 読んでいたと言ってもまさか飛び上がるとは思わず、想像を越えた。それに、子犬のように見えて「あはは」と笑ってしまった。


「姉ちゃ…」


 ━━そう、ある人と言うのは弟のユウタのことだったのだ。

 姉ちゃ…と言い掛けたユウタは慌てて口を手で押さえ、言い換えた。


「お嬢さん、どうしました?」

「どうしました?じゃないわよ!」

「…」

「あなた、私たちをつけて来たのでしょ?あと、ユウタって事もバレてるから」


 ユウタは、バレていると思わなかったのか目を見開いていた。


「…な、なんで……」


 ユウタは落ち着きをなくしていて、完全に冷静さを失われてた。

 落ち着け!心の中で突っ込む。


 やがて、諦めたように言った。


「いつ気付いたの?」

「最初から」

「……」

「……」

「……は?」


 心の声…漏れてるわよ


「あなたが最初に私たちを探してた時から、もうバレバレだったよ」

「まじで!?」

「まじで」

「いやいやいや。俺、尾行、結構自信、有った!有ったのに…」


 あ…これは珍しく凹んでるな……


「アドバイスあげるよ。尾行する時は魔法を使うんだよ。一番簡単なのは、透明のなる魔法。名前は…な、名前は……。ま、透明魔法!」

「姉ちゃん…?」


 あ……やばい…とても圧を感じる…


「姉ちゃん!取りあえず言えばいいもんじゃないの!ディアファニーズ魔法ね」

「だって、ディアファニーズって呪文なんだもん。まあまあ、分かればいいの!伝われば!」

「伝わるけども、伝わるけどさ。考えて見てよ。名前があるのに呼ばないのは可哀想でしょ?」

「そうだけれども…忘れちゃうんだよ」

「魔法を使う時に言う呪文といっしょじゃん」

「え?!呪文使わなくても魔法は使えるでしょ?」

「何言ってんの?」


 ……この流れ、絶対勝てない。ほらほら、「魔法を使う時は……」なんて説明してる。

 話題変えないと…えっと……そうだ!!


「そうそう、ユウタ?『お嬢さん、どうしました?』って、キャラ合ってないから」

「そ、そりゃあ、言う方も恥ずいよ。でも、今考えたら、キャラ変えたほうが尾行とかで良いと思うんだけど」

「た、たしかに……」


 話題変えても納得させられたし、なんなら話題が戻ったんだけど…!



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