図書館2
私はその後ろ姿に向かって、手を伸ばす。
手が肩に触れるタイミングで「わっあ!」と声を掛けた。
驚かされた相手は、悲鳴を上げて、びくっと飛び上がった。
そこまで読んでいた私は、もう声が他の人に聞こえないように沈黙魔法をかけた。
これで、他の人には聞こえないが、対象の人は聞こえるため、この魔法は秘密話をするときによく使う。
読んでいたと言ってもまさか飛び上がるとは思わず、想像を越えた。それに、子犬のように見えて「あはは」と笑ってしまった。
「姉ちゃ…」
━━そう、ある人と言うのは弟のユウタのことだったのだ。
姉ちゃ…と言い掛けたユウタは慌てて口を手で押さえ、言い換えた。
「お嬢さん、どうしました?」
「どうしました?じゃないわよ!」
「…」
「あなた、私たちをつけて来たのでしょ?あと、ユウタって事もバレてるから」
ユウタは、バレていると思わなかったのか目を見開いていた。
「…な、なんで……」
ユウタは落ち着きをなくしていて、完全に冷静さを失われてた。
落ち着け!心の中で突っ込む。
やがて、諦めたように言った。
「いつ気付いたの?」
「最初から」
「……」
「……」
「……は?」
心の声…漏れてるわよ
「あなたが最初に私たちを探してた時から、もうバレバレだったよ」
「まじで!?」
「まじで」
「いやいやいや。俺、尾行、結構自信、有った!有ったのに…」
あ…これは珍しく凹んでるな……
「アドバイスあげるよ。尾行する時は魔法を使うんだよ。一番簡単なのは、透明のなる魔法。名前は…な、名前は……。ま、透明魔法!」
「姉ちゃん…?」
あ……やばい…とても圧を感じる…
「姉ちゃん!取りあえず言えばいいもんじゃないの!ディアファニーズ魔法ね」
「だって、ディアファニーズって呪文なんだもん。まあまあ、分かればいいの!伝われば!」
「伝わるけども、伝わるけどさ。考えて見てよ。名前があるのに呼ばないのは可哀想でしょ?」
「そうだけれども…忘れちゃうんだよ」
「魔法を使う時に言う呪文といっしょじゃん」
「え?!呪文使わなくても魔法は使えるでしょ?」
「何言ってんの?」
……この流れ、絶対勝てない。ほらほら、「魔法を使う時は……」なんて説明してる。
話題変えないと…えっと……そうだ!!
「そうそう、ユウタ?『お嬢さん、どうしました?』って、キャラ合ってないから」
「そ、そりゃあ、言う方も恥ずいよ。でも、今考えたら、キャラ変えたほうが尾行とかで良いと思うんだけど」
「た、たしかに……」
話題変えても納得させられたし、なんなら話題が戻ったんだけど…!




