記憶1
「え?お母さん、お父さんどうしてここにいるの?」
私━━愛莉の口からこぼれた声は周りに響いただけで、二人はそのまま歩いて行った。
…あれ?今、私なんで知らない人をお母さん、お父さんと呼んだんだろう?
「・・・」
ううん、完全に知らない人じゃなくて…大切で知っている気がする…。
「……っ」
「なに…これ…」
突然、意識だけが見ているように、目の前には、知らない女の子とその弟みたいな男の子がこの二人と一緒に、楽しく食卓を囲んでご飯を食べているのが頭の中に流れてきた。この二人はこの子たちの親かもしれない!
なぜか、自然と思うことが出来た。
あ!あの二人が行ってしまう。早く追いかけなきゃいけない、とそんな気がして、慌てて追いかけようとした。気付けば見慣れている天井があった。
さっきの夢はなんだたんだろう?
改めて自分の部屋の中を見てみた。そこには、いつも通り、広い部屋にソファや鏡、クローゼットが置いてあって、いかにもこの神界の王様…いや、簡単に言えば天国の神様を守る家系らしい豪華な部屋だった。
ズキッ
「……っ」
思わずの頭痛に、頭を手で抑えた。
頭の中は色々な知らない思い出や情報であふれていて、ぽっかりと空いていた記憶の隙間を順番に埋めていくようだった。
「これは…、今までの記憶?」
ボソっと呟いたときだった
バダン
「愛莉(姉ちゃん)」
と大きな音を立ってて開かれるドアと一緒に私を呼ぶ声が聞こえ、共に弟のユウタ、お母さんの莉乃、お父さんのユウトが青ざめたように私の部屋に入って来た。
「ユウタ?お母さん、お父さん、どうしたの?」
私はどうしてそんなに三人が慌てて入って来たのがわからず、いつも通りに聞いてみた。
それを見た三人は、私を見てほっとしていて、私はもっとわからなくなった。
「い、いや、別に用事があるわけではないのだが、夢をみて…」
「夢を?」
「ああ、夢の中で愛莉が魔物のようなものに襲われていて、起きたんだ。そしたら、お母さんも同じ時に起きて話したんだ、夢の中で起こったことを」
一体どうしたと言うのだろう?
「うん。それでどうしたの?」
「それで、お母さんも全く同じ夢をみたって言うから…。嫌な予感がして、二人で愛莉の部屋に行こう!ってなったんだ」
「たまたまじゃないの?お父さん━━」
「愛莉!なんでそんな呑気なの!?実は僕も見たんだよ!だから、愛莉ねぇの部屋に行こうとして、お父さん、お母さんに会ったんだよ!」
「そうよ!愛莉、もうちょっと緊張感を持ちなさいね」
「はーい、分かったよ。お母さん」
つまり、三人とも同じ夢を見て、それが悪夢だったから来たと言うことかな?でも……
「━━でも、この通り大丈夫だよ!心配してくれてありがとう!」
三人とも私の言葉で安心したのか、
「そうね、大丈夫そうだし、おやすみなさい」
「そうだな。ゆっくり休んでな、愛莉」
「愛莉、おやすみ。」
「おやすみなさい」
━━この夢の内容が何を表しているか、私は考えもしなかった