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27, 皇位継承順位

通常の2倍の分量になってしまいました!

切るところも見当たらないので、1話分として掲載いたします

誰かが私のそばで、何かを書き留めている音が聞こえる。

それと同時に部屋の中をせわしなく歩く音も。


何の音だろうと疑問に思い目を開けてみようとしたが、思ったよりも瞼が重かった。


「……?」


それでも何とか目を開けると、そこは医務室のようで、私のそばには医者が一人、そして動き回っている看護師が一人いるのを確認できた。


ここはどこで、私は何をしているところだったのか?

仲間は? 部下は? 戦況は今どうなっているの?


そんな思いが一気に押し寄せて来て、私は勢いよくベッドから身を起こす。


「ちょっと! いきなり動いてはいけません、今のあなたの体は安全第一! 隣国からの貴人だろうと、医務室の中では医者の私の発言に従ってもらいますよ!!」


このようになった時は、医者言う通りにするのが得策だろう。

看護師は私が起きたのを見て、急いで医務室を出ていった。


「隣国の貴人……? 私が……?」


一国の騎士が貴人? しかも隣国とは……?

ここはどこなのだろう?


「……記憶の混濁あり、と」


隣に座る医者がカルテに書き込んでいる。

仲間の心配もあるけれど、この医者はどうねだっても外には出してくれなさそうだ。

私は仕方なくもう一度ベッドに身を預けた。


そこからしばらく医者からの質問に答えていると、医務室の外から、何やらざわざわとした声とばたばたと急ぐ人の足音が聞こえてくる。


「はぁ、どうしてこうも医務室は騒々しくなるのか……」


医者は少しイライラとした様子で、医務室の扉を開けた。


「皆さん、もう少し静かにしてください。いくら皇族や王族の方々だろうと、医務室は患者のために開かれているということを覚えておいてください!」


小声ながらも、その声からは怒りがにじみ出ている。

医者の声に、廊下にいる人々はかなり静かになったようだ。


「どうぞ……あまり患者を刺激しないように」


皇族、王族……?

私に一体なんの用があるのだろうか?


そう思っていたけれど、ドアから入って来た金色の髪をもつ男の人の姿をみて、私の脳内は一気にもやが晴れたように、記憶を取り戻した。


「リゼット……!」


「エドガー王子?」


「よかった……」


私は彼が泣いているのを初めて見た。

彼自身も驚いた表情で自分の目元をぬぐう。


自分が泣いていることに驚いているのだろう。


「……助けてくれて、ありがとう」


私は彼の顔に手を伸ばし、そっと一緒に涙をぬぐった。


体力がつきて倒れた時に駆けつけてくれたのは、エドガー王子だった。

彼がいなければ……きっと私はもうここにはいなかったはずで……


「ごほん!」


私達が見つめ合っていると、国王が咳払いする音が聞こえた。

慌てて顔をあげると、部屋の中には国王、皇帝、皇妃、それにこの二週間私を案内してくれた年下の皇子や皇女たち……皆が駆けつけてくれていた。


皇女たちは私達の様子を見て目を輝かせている。


エドガー王子はまだ涙が止まらないようで、私の方を向いたまま振り返ろうとしなかった。


「記憶混濁、回復の可能性あり、と」


医者がまたカルテに書き込んでいるのを横目に、私は皆に声をかけた。


「来てくださったのですね」


ありがとうございます、と言葉を続けると、皇子や皇女たちは皆、


「無事でよかったです!」


「王太子妃様に何かあったらと考えると、私……」


と心から心配してくれていたようで、嬉しそうに返事をしてくれた。

そんなやり取りが一通り終わったところで、使用人へ皇帝が目で合図をするのが見えた。


使用人らは皇子や皇女を連れて医務室から出ていく。

何人か私に手を振ってくれたので振り返しているうちに、医務室のなかは皇帝と皇妃、国王、それにエドガー王子だけになった。


医者も退出したようだ。


部屋の中は一気に重苦しい雰囲気になり、何が起こるのだろうと思った次の瞬間、皇帝と皇妃が私に向かって頭を下げた!


「ど、どうされたのですか!? 頭を上げてください!」


「いや、皇国は交渉の場において、取り返しがつかない失態をしてしまった」


「その内容は教えていただきたいですが、頭は上げてもらって大丈夫です!」


私が本気で焦っている姿を見た国王が、皇帝と皇妃に頭をあげるように言ったことで、私は心をなでおろした。


「まず、今回の火事についてだが……皇太子の故意の放火によるものだということが発覚した」


「……皇太子様が?」


確かに皇太子は、皇国に到着した日の夜の晩餐会の時や、城内ですれ違った時など、ずっと敵意を感じるとは思っていた。

しかし……思い当たる動機もなかったので、そこまで警戒はしていなかった。


「私達も、彼の様子が最近おかしいことと、その理由については把握していたのにも関わらず、対応を怠った責任があります……」


皇妃は、それは申し訳なさそうに話している。


「でも、どうして皇太子様が私に危害を加える理由があるのでしょうか……? 戦場でお会いしたことが……?」


それなら理由もわかるが、ことはそう簡単ではないようだった。

皇帝が私の目の前まで近づいてきて手を差し出した。


「君は……現時点において、皇位継承順位第一位であるからだ……そして、私の姪でもある」


「……え!」


驚いて、皇帝と皇妃、その後に王、そして最後に涙も止まったエドガー王子を見るが、皆このことは知っているようで、驚いている様子はなかった。


「えっと、詳しく説明していただけるでしょうか?」


「あぁ……私には妹がいてな……


そこから皇帝は私に事の顛末を説明してくれた。

皇帝の妹はとある男の人と恋に落ち、そのまま駆け落ちをしたこと。

皇族は皆、紫色の目を持つこと。

そして……その紫が薄ければ薄いほど、王としての素質があるということ。


確かに皇帝や皇太子の瞳は、他の皇族に比べれば薄い色をしている。

しかし、私の瞳はそれよりももっと薄紫だった。


皇太子の母親は亡くなっており、皇太子と言えど、瞳の色だけでその地位を保っている状態のところに、私という薄紫の瞳を持つ人物がやってきた。

皇国側の人間がそろって私を引き留めているのを見て。自分の地位が脅かされることを恐れての犯行だという。


「しかし……そんなこと、にわかには信じられません……」


皇太子の動機については理解できた。

だが、その前提条件である「皇位継承順位第一位」「皇帝の姪」についてはまだ理解が追い付かずにいる。


「君がここにいる間、王国側の許可も得て、詳しく調べさせてもらった。あまり証言のできる人は見つからなかったが……妹の墓と思わしき場所から、こんな写真が出てきたのだ」


皇帝は懐から一枚の写真を取り出す。


それは村の皆と、お母さんと、そして私が一緒に酒場の前で並んでいる写真だった。

おそらく開店初日に撮ったものだろう。


「ここに映っているのは確かに私の妹だ」


「そう、ですか……」


写真の中のお母さんと、目の前の皇帝の顔をそっと見比べる。

確かに目元がよく似ていた。


「それで……皇国は今後の皇位継承順位についてはどうするおつもりなのですか?」


「こんなことを起こしてしまった後に言うのは申し訳ないが……できることなら、君に残ってもらいたい」


「……」


皇帝と皇妃の目を見る。

王の目を見る。

そして……最後に隣にいるエドガー王子の目を見た。


「リゼットの判断に任せる」


「エドガー王子……」


あまり考える時間は取っていないけれど、でも結論はもうわかりきっている。

私は大きく息を吸った。


「魅力的な提案をありがとうございます。ですが、お断りさせていただきます」


一呼吸おいてから、再び話し出そうとすると、私が緊張しているのを見抜いたのか、エドガー王子が手を握ってくれた。

私はその手を握り返し、皇帝に向かって話を続ける。


「まず、私は戦場で皇国と戦っていた身。そんな私が皇帝になることを快く思わない皇民も多くいるでしょう。そして、今の私は王太子妃で、王国の騎士でもあります。その責務を放棄するわけにもいきません。更に何より……」


私はそこで一旦言葉を切り、エドガー王子の方を見た。

そして見つめ返してくる彼に向かって笑いかける。


「私には大切な人がいるんです」


数秒の間、部屋の中に静寂が訪れる。

そして……皇帝がやっぱりな、とでもいうように苦く笑った。


「こちらから提案したものの、私も実のところ前の二点に対しては同じことを思っていた。そして……最後に関しては……私の妹にそっくりだ」


「そっくり……ですか」


最期に会ってから長いこと経っているが、お母さんに似ていると言われることは、案外嬉しかった。


「さて、これで目立った問題はすべて解決しましたかな? 私達はそろそろ帰国しなければならない」


「あぁ、長いこと引き留めてしまって、それに加え貴国の王太子妃を傷つけてしまい申し訳ない」


「それについては、交渉に十分反映させてもらったから気にしなくて大丈夫ですぞ。皇太子も相応の償いをする予定と聞きましたからの」


私が意識を失っている間に、もう交渉の件については解決したらしい。


「酷い思い出を植え付けてしまったかもしれぬが、また皇国にも遊びに来てくれ。皇子や皇女たちが君のことを大変気に入っているのだ」


皇帝の言葉に、私も頷く。


「えぇ、また遊びにきますね。私や皇太子様がいなくとも、貴国の皇子や皇女なら立派に責務を全うするでしょう」


「あぁ」


皇帝の返事を聞いた私は、ベッドから抜け出し、エドガー王子の手を取る。


「王国へ……帰りましょうか」


「あぁ、それに俺たちには話さなければいけないことがたくさんありそうだ」


そんな私達を国王もにこやかに見つめている。


しかし五人で医務室を出たところで、医者の悲鳴が響き渡った……


「い、今から帰国ですってー――!?」


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本編は次で最終回となります

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