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26, 彼の元へ

……不思議な夢を見た。


初恋の彼……エディが私の前に立っていた。


彼は私に向かってにっこりと笑いかけ、手を差し出す。


私はその手を取ろうと手を伸ばしたけれど……そこでとあることに気が付いた。


「……」


黒髪に碧眼のエディ。

その笑顔にはどこか既視感があった。

でも……一体どこで?


風が強く吹いたせいで、私は少し目を瞑る。

そして再び目を開けた時、そこには見覚えのある姿があった。


「……エドガー王子?」


目の前の男の子は、黒髪から金髪になり、同じように私に向かって微笑みかけている。

エドガー王子の笑顔は、エディにそっくりだ。


名前だって……


もしかして……エドガー王子は……!!


◇◇◇


「はっ……!」


目を開けると、もう彼の姿は見えなくなっていた。


「夢……か」


天井の方へ伸ばしていた手を、ゆっくりと自分の胸の前まで戻す。


きっと、私が部屋へ行った時に見た、エドガー王子の笑った顔が印象に残っていたからだろう。

私の頭の中で、エディとエドガー王子が綺麗に重なった。


今考えてみれば、エドガーの愛称はエディだし、王子なら身分が高く見えたのも納得だし、碧眼だってそっくりだ。

国の皆を笑顔にしたい、平和な世界にしたい……そんな願いを持って、頑張っているところも。

髪色については、あの目立つ金髪のまま街へ出るのは危険だったから、黒髪のかつらを被っていたのだろう。


全ての点が線になって繋がったかのように。


どこからどう考えても、エドガー王子はエディだとしか思えなくなった。


「私……結局同じ人を好きになっていたのね」


はやく、彼に会って、このことを伝えたい。

私はベッドから抜け出し、鞄にしまってある指輪を取り出す。


それは……おもちゃの指輪にしてはとても高かった……エディから貰った指輪。

そっと右手の薬指に付けると、あの時の記憶が蘇るようだ。


そんな思い出に浸っていたからか


私は異変に気が付くのが遅かった!




異常なほどに静かな城内。

そしてどこからか漂う不快な匂い。


それは不快と感じると同時に、私のトラウマと結びつく匂いでもあった。


「ま、まさか!」


急いで部屋の外に出てみると、その匂いは更に濃くなり、私の部屋の前で見張りをしていたはずの衛兵はいなくなっていた。


一刻も早く下へ降りなければ!


私は部屋にあったハンカチを片手に階段を駆け下りる。

しかし、思っていたよりも火の手は回っていた。


三分の一ほど階段を下ったところで、階下はもう足場がないほどに燃え始めてしまっていたのだ。


煙も随分と充満してきていて、あと少し逃げる判断が遅ければ呼吸が出来なくなってしまっていただろう。

そして今ここで立ち止まっていても同じことが起きる。


こうなったらエドガー王子の部屋へ向かった時のように、建物の中ではなく外から逃げるしかない!


外壁はそれほど燃えていない。

火の元は分からないけれど、降りれるところまでは外から降りてしまおう。


ここで死ぬわけにはいかない。

だって、まだエドガー王子に何も話せていないから。


右手にはまっている指輪を見ると、なんだか力が湧いてきた。


足を置けそうな突起を見つけながら少しずつ下の方へ、下の方へと進んでいく。


どれほどの時間が経ったのか?

そんなことなどわからないくらいずっと体をうごかしていたけれど、どうにか下の方の人影が見えるところまで来ることができた。


ここから下は良さげな足場が見つからない。

かと言って、飛び降りることが出来るような高さでもない。


私が開いている近くの窓に飛び込み、走りだそうとしたとき、窓の外から私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「リゼット!」


いつもなら「君」と呼ぶ声。

きっと心配をかけてしまっているだろう。

彼のためにも……はやく脱出しなければ!


上の階よりも火が燃え広がっている。

一緒に酒場で働いていた村の皆は……そしてお母さんは、こんなにも熱いなか、苦しんでいたのか。


右から燃えた壁が落ちてくるのを避け、私は階段に向かって一直線に走る。

多少のやけどはしょうがない。


それよりも……私はここを抜け出さなければならない。


だって……


『もう……俺は……大切な人を失いたくないんだ』


彼はそう言っていたから。

大切な人を失う痛みは、私もよく知っている。


「リゼット!!」


またあの声が聞こえる。

その声がする方向に向かって歩き出そうとしたが、もう体が動いてくれなかった。

体力が底つきたのだ。


視界は暗くなり、体の平衡感覚が失われていく。

そんな中でもうっすらと綺麗な金髪が見えた。


「危ない!」


そう言って手を伸ばす彼に向かって、私も手を伸ばそうとしたところで、視界が完全に暗くなった。


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