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20, 出会いと引き換えに

「今日はありがとうございました!」


「ふふっ、こんな年増のところに遊びに来てくれるとは、嬉しいわね」


「年増なんて……! 僕の目から見れば、この世で一番素敵なレディですよ」


「あらあら」


ずっとこの二人がデレデレする様子を見ているのは、なんだか疲れるけれど……これもエドガー王子へのプレゼントのため。

頑張るのよ、私!


「来週また遊びに行きますね。はぁ、こんなにも可愛らしく優しいレディと知り合えたというのに……もう別れなくてはならないなんて……」


私はノエルとの相談通り、王子のプレゼント選びの助っ人として団長を選んだ。

団長はその役職の通りとても忙しい人で、騎士団としての予算申請、仕事の割り振りから、各団員の精神状態のチェックまで一人でやっている。


そんな団長に手伝ってもらうには、それ相応の対価が必要だ。


……そこで私は、団長の好みの女性を紹介することにしたのだ。


私は以前、とある令嬢が街で迷子になっているところを助けたことがあり、今回お見合いの手紙を送ったところ、了承してくれた。


男爵家の一人娘だけれど、他責の婚約破棄を二回も経験し、婚期を逃してしまっているのだと前に話していた。

そして、団長がおっとりとした年上の美人が大好きなことは知っている。


まさにピッタリな組み合わせではないかと思っていたが……まさかここまでとは。


「……あの、そろそろ」


「すみません、長引かせてしまって……リゼット様、今日は素敵な方を紹介していただきありがとうございました」


「気にしないで、私はこれから少しこの人と用事があるから……勿論、男女の仲ではないから安心してちょうだい」


「えぇ、だってリゼット様は王太子妃様ですもの! エドガー王子と仲がよろしいのでしょう?」


「……まぁ、そうね」


私が愛想笑いをしてごまかすと、彼女はまた団長の方を向いた。


「来週会えるのを楽しみにしております、ジョエル様」


「あぁ、必ず時間を空けますね」


団長は心底名残惜しそうにしていたが、私は彼を引き摺るようにして男爵家を離れた。


「まさか、リゼットがあんなに素晴らしい人を紹介してくれるとは思わなかったよ。うん、この恩は必ず返そう」


馬車の中でも口元が緩みっぱなしの彼は、全く団長の威厳がない。

彼女にも自分の本当の身分を明かさず、ただ「騎士」だとしか言っていなかったけれど……まぁいいか、いつか伝えるだろう。


「それで、何をすればいいんだったか?」


「はぁ、興奮し過ぎじゃないですか? ……エドガー王子へプレゼントを渡したいので、選ぶのを手伝って欲しいんです」


「そうだったそうだった。ついでに彼女へのプレゼントも選ぶとしよう」


団長には貢ぎ癖もありそうだ、なんて考えながら、私達は店の多い大通りへと向かった。


◇◇◇


「ひとまず、ここはどうかな?」


「なるほど、文具の店ですか。確かに彼の書類仕事の多さを考えれば、文具は役に立ちそうですね」


「そうだろう? よく使うものなら貰っても困ることは無い。それに使う度に贈り主のことを思い出すからね!」


わざとらしくウインクする団長の視線から逃れるように、私は文具店の中へ入る。

きっと……あの鋭い団長のことだ。

私がエドガー王子のことを好きになっていることだって、もう気がついているのだろう。


「いらっしゃいませ」


店主に会釈してから中を見て回る。

子供の頃はおもちゃの指輪さえ高いと思っていたのに……その数倍の値段がする文具をプレゼントととして買えるようになった。


私も出世したんだな……なんて考えていると、団長が声をかけてきた。


「この辺りはどうかな?」


そう言って案内された先は、ペーパーウェイトの区画だった。

色とりどりのペーパーウェイトは、確かに仕事をする時に役に立つし、心を癒してくれるだろう。


「いいですね! ……この青いペーパーウェイトとか、海の色みたいに澄んでいて綺麗」


私がそれを手に取って眺めていると、団長は3つ隣にある薄紫色のペーパーウェイトを指さす。


「これはどうかな? エドガー王子は絶対に喜ぶよ」


それを私に渡してくる彼は、何故かとても自信ありげだ。


「確かにこの色も素敵ですが……何故そんなに自信があるんですか?」


私の質問に対して、彼は一瞬悩むような仕草をする。

しかし数秒後には理由を伝える気はなくなったようで、


「内緒」


とだけ言って店の奥へ行ってしまった。


理由は分からないけれど……人の気持ちに敏感な団長がそこまで言うのなら信じて良いだろう。


私は印象的だった青いペーパーウェイトを自分用に、そして薄紫色のペーパーウェイトをエドガー王子用に包んでもらいに、お会計へと向かった。


◇◇◇


「……」


私は今、机に置かれている綺麗にラッピングされたプレゼントとにらめっこしている。


エドガー王子の誕生日は1週間後。


今日の夜渡しても良いけれど……それだと何でもない日にプレゼントを渡す人になってしまう。


普通の夫婦ならそれでも良いのかもしれない。

恐らく団長は、今日大量に買ったプレゼントを、特別な勇気など無しに彼女へ渡すことが出来るだろう。

しかし私とエドガー王子の間に愛は無いし、更にエドガー王子は女性を苦手としている。


プレゼントを選んでいる時はあんなにワクワクとした気分だったのに、今は不安でドキドキしてしていた。


やっぱり誕生日当日に渡そう。


そう思って引き出しにプレゼントをしまおうとした時、夫婦の寝室に通ずるドアがノックされた。

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