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10, 初恋の思い出➀

夜中の0時を過ぎたころ。

私はベッドのなかで、寝られずに寝返りを打っていた。


普段ならすぐに寝てしまうのだけれど、今日は昼間のノエルとの会話が思い出されて、なかなか眠ることが出来ずにいた。


『ねぇリゼット、初恋の彼については最近どう思っているの?』


初恋の彼について思い出すことはあった。

それこそ、エドガー王子が彼に重なって見えたこともあった。


しかし昔のように、初恋の彼……「エディ」に恋焦がれるような感情を思い出すことは少なくなったように感じる。


でも……一体それはどうして?

私が目を閉じると、幼いころの思い出が脳裏によみがえってきた……


◇◇◇

「リーちゃん! そちらのお客さんにこれを持っていって!」


「わかりました!」


お皿に載った料理をテーブルへ運んだあと、次はお酒の入ったグラスを別のお客さんへと運ぶ。


「リゼット。もうすぐ九時になるから上の部屋で寝る支度をしなさい」


「お母さんは……?」


「もう少ししたら行くわ。ごめんね、先にベッドにはいって待っていて」


「……はーい」


私は酒場で働く皆に「おやすみなさい」と声をかけてから、二階へと上がった。


5年前、まだこの国と皇国の間で戦争をしていた時、私達家族と……そして酒場で働いているみんなが住んでいた村に、皇国の兵士がやってきたそうだ。


あろうことかその兵士たちは村にある食べ物や備品を狙って、ただの村人である私達に武器を振り上げたらしい。

私たちは命からがらそこから逃げ出して、この街にたどり着いたものの……一人だけ助からなかった人がいる。


……それが私のお父さんだ。


お父さんは、私とお母さんをかばったことにより死んでしまったのだ。


それでも、今この酒場で村の皆と暮らしていけているのだから、きっと幸せなのだろう。

それに、もう皇国との戦争は終わったらしい。


これでようやくお父さんのお墓をつくりに行ける、とかお母さんは言っていたっけ。

でもこの忙しさだと、何年先になるかわからないな。


そんなことを考えながら一通り支度を済ませると、ベッドに寝転んだ。

窓から見える星の数を数えながら、お母さんが来るのを待つ。


本当はさみしい。

幸せなんだとは思うけれど、時々家族三人で暮らしていたころを思い出すと、心がぎゅっと締め付けられたような気持ちになる。


お母さんもきっと今日も、私が寝てしまった後に来るのだろう。

寂しい……なんて、一生懸命働いているお母さんと村のみんなの前で、言えないけれど。


24、25、26……31、32、33……


「……寝れない」


星の数を数えれば数えるほど、段々目が覚めてきたような気もする。

私は仕方なくベッドから起き上がり、そっと外の景色を眺めた。


あの村よりもずっと人が多くてにぎやかな街。

行ったことはないけれど、ここからそう遠くない場所に、この国のお城とその城下町があるらしい。

そこはここよりもずっとにぎやかなのだろうか?


見たことのない城下町に思いを馳せたその時、ふと窓から見下ろす街に気になるものが見えた。


それは……何故か茂みの裏に隠れている男の子だった。

そのすぐ近くには、街でも有名な悪い男の人達がうろうろしている。


「……助けに行かなくちゃ」


私はそっと二階の階段を下り、お母さんや村のみんなに気づかれないようにそっと裏口から抜け出した。

そのドアからは丁度先ほどの男の子がいる茂みの裏に行くことが出来る。


「ちょっと!」


「……!?」


小声で話しかけたのだけれど、思いがけない位置から声がしたことに驚いたのか、男の子は大きく体を震わせた。


「おい、あっちで何か動いた音がしたぞ!」


「あの子どもは見るからに金持ちだ。逃がすわけにはいかねぇ!!」


……気づかれた!

その瞬間私は急いで男の子の方に駆け寄り、茂みから引っ張り出した。

ここから酒場までの距離は近い。

お店の中に入ってしまえば、多くの店員……村のみんなとお客さんがいるので悪さは出来ないだろう。


「ついて来て!」


「あっちだぞ!!」


私は男の子の腕を握ったまま全力で走る。

後ろからは何度も声が聞こえてきたけれど、振り返らずに一直線に酒場まで突っ切った。


「入って!」


私は酒場の裏口から男の子をお店の中に押し込み、男たちの目の前でピシャリとドアを閉める。

すぐそばにはお酒の準備をしている村の人がいた。


「……リーちゃんどうしたの!? それにこの子は誰だい?」


その質問を聞いて、私も彼の正体を知らないことに気づく。


「……えっと、あなたは誰?」

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