9話
その日は放課後にも調査部に顔を出してから帰宅する事にした。とっくに把握しているかもしれないが弓塚に宮下先輩の存在と聞いた話を伝えておくべきだと思ったからだ。
今朝方、情報を黙っている事についてのお咎めを受けたのが多少は堪えているのかもしれない。
案の定知っていたようだが俺に接触しようとしていた事まではわかっていなかったようだ。
「まとめて伝えてくださいよ」
「俺はあの人が美野沢の関係者だって事知らなかったからな。お前の方こそ不確かだからって依頼人の俺に報告しなさすぎなんじゃないか。いつも中間報告とかしてないの? 請け負った側としてそれはいいの?」
「ううう、返す言葉もないです。その、昔はやってたんですけどね。自分たちがどんなに頑張ってるのかを見せつけるって意識もあって。だけど失敗を、しちゃいまして。それで人を傷つけて。それからはちょっと……」
「……そっか、なら仕方ないな」
憂いを秘めた弓塚の横顔を見て、それ以上追及する気は起きなかった。不確かであっても情報には力がある。それは誰かの感情を揺さぶるし、本人の意図しない事態を引き起こす事だってある。
だが、それは今回の一件には関係のある事ではない。わざわざ追求する必要もない。俺なんかが軽い気持ちで関わっていい事でもないだろう。自分の行動に合った責任を感じているならば、それは自分だけが背負うべきだ。
「まあ、今回だけはそれを曲げて頼むな。例え確実じゃなくても、それを求めたのは依頼人の俺だ。その責任は俺にあるだろ。どうなっても俺なら大丈夫だ」
もしも心への負荷が許容値を越えても即現実逃避して危機を回避する二十六の特技の一つ、『夢想転成』がある。たまに現実を見過ぎてなんだか涙があふれそうになる時に使ってるから効果は保証済みだ。
弓塚ははあとため息をついて諦めたように
「わかりました。新しい情報が入り次第お伝えします。可能性程度のものでも根拠になりそうな事があればそれも」
「俺としては申し分ないな」
「それと宮下先輩との話にあったQPの日記の件ですが、こちらでも検証していました。確かに大半が現二年生についてで現三年生のは少なく、それ以上の年代だと存在していません」
「このQPは、なら現二年生の誰かって考えるのが妥当か。それなら同一学年のものが多くなるのも自然だ」
「そう考えていいでしょう。もう一つ、私の方で把握している告白等の件数よりも日記に書かれている総数は少ないです。QPの情報収集能力は私たち調査部を上回っているわけではないようです」
しれっと校内の恋愛事情ほぼ把握している宣言しやがったよこいつ。指先一つで人生破壊できちゃったりするんじゃねえのこいつ。危ねえよ。
しかし、それだけさまざまな事を知ってしまえるからこそ、こいつや調査部は自分の能力を信条に従って行使する事で制限しているんだろう。その事は、悪くない在り方だと思う。
「つまり、QPというのは人より少しだけ耳ざとく、目ざとい個人、あるいは数人でつくられたアカウントだと推測できます。日記に書かれていた内容の半分はそれなり目立つ人たちについてだったり、一部のコミュニティでは有名な話だったりですから。男子はわかりませんが、女子だったら普段の会話やコネクションで勝手に入ってきたりします」
「女子のコネクション怖えよ。人の事情丸裸じゃありませんかね」
「全部知られる訳ではないですよ。だからこそ皆こっそりとやるんです。とりあえず、これが私の出せる情報とそこから考えた推論です。これでよろしいですか依頼人様?」
「うむ、余は満足だ。でも、これに囚われる気はないし、そっちも柔軟性を忘れるなよ?」
「誰に物言ってるんですか」
「これは失礼をしました」
適当なやりとりをして話を切り上げる。
ホウレンソウの徹底もお互い確認したしな。やる事はやった。とっとと帰ろう。
そうして鞄を持った所でふと思い出した事を言ってみた。
「そうだ、QPの最新の日記だけど見たぞ。あれは、まだどこから俺たちを見ていたのかはわかってないんだよな」
「ああ、そうでしたそうでした。そもそも人通りがあの辺りはないですし、覗こうとする人が居ても秋里さんたちが気付きますもんね。とすると、別の棟から望遠レンズとかでわざわざ覗こうとでもしない限りは見つけられません」
「QPがそこまでするか? いや、可能性だけならあるし、関連させられそうな事もあるけど」
「あの脅迫文ですね。これの差出人が、もしもQPだったなら――QPは熱心な美野沢さんのファンという事であり、その行動を追いかけている。そういう風に考えられなくもありません」
「所詮想像だけどな。でも、潰せるリスクは潰しておくにこしたことはないよな」
備えあれば憂いなし。やらずに後悔するよりもやって後悔しろって言うしな。まあ俺はどっちにしろ選んだ事なら後悔はしないが。
俺と一緒の場所に居る事が不味いなら、あの部屋をそれこそ美野沢に一定期間貸し出して俺は別の所を探すか。人気のない場所に一人にするのは脅迫文の人間が危ういタイプならそれは不安だな。
もう少し安全な別の場所に連れ出すか。一人飯に適した場所はそうないが、限定しないなら昼休みは弓塚に活動を休んでもらって調査部の部室で食事をとらせるとか。それこそ、美野沢も友人らの下に戻らせるのが精神的にはともかく安全ではある。
「うーん、いくつか考えて美野沢に提案はしてみる。場合によってはお前にも頼むわ」
「その時には変な遠慮なく言ってくださいね。私も脅迫文の差出人と尾行者について調べてみます。依頼人には最大限の配慮を、それが当部のポリシーですので」
人差し指を立ててウインクと決めポーズをする弓塚を白い目で見つつ、俺はへいへいとだけ返事しておいた。
考えてみるとは宣言したが、説得の材料が思いつかないまま夜が過ぎ、朝が来て、昼休みになってしまった。弱ってる所に脅迫者の存在なんて明かすというのも躊躇われる。放置もできないから噂が落ちついてから随時対処するというのが適策ではある。
けれどそうやって隠しておいて、当人に心構えがないままで居させるのも問題だ。
「妙手が降って湧いてこないかな……」
つい弱音がこぼれる。もちろん、そんなものがやってくるのを期待するわけにはいかない。自分の手で掴みとる以外にそうそう得られるものはない。
今日は久々に母親の手製弁当なのでゆっくりと味わっていたい。一まず棚上げして腹を満たそう。その方が頭も回る。
気楽にいこうと切り替えて歩いていると資料室の前に美野沢が立っているのが見えた。いつも俺の方が早く着いているのに珍しい。俺は授業終わって自販機寄ったら直行しているんだから当たり前ではある。今日のチョイスは一〇〇円で五〇〇mlとお買い得なお茶だ。
「よう、早いな」
「秋里君……うん、ちょっとね」
ちょっと、か。最近よく聞くな。そう言われたらそれ以上聞く義理もない。
手早く鍵を開けて中に入る。意識的に換気してるためか以前よりも埃立つ感じはしなくなった。
今日は陽気が良いので窓際に椅子を持ってきて座る。少しうきうきしながら弁当の包みを広げようとして、視界の端で美野沢が資料室にも入らないいるのに気付いた。
「入らねえの?」
声をかけないとずっとそのままで居そうだったので尋ねる。あーとかうーとかもごもごとしていたが、
「その、飲み物買うの忘れたから行ってくるね!」
小走りで行ってしまった。そんなに急ぐ必要もないだろうに。
と素直に思えるほど俺も純粋ではない。ちょっと、とかいう事情が関係してるだろう。それで俺と一緒にいるのが苦になった。直近で思い至るのはQPの日記だ。
ま、そう思ってもらったなら逆に好都合。元の友人らの所に戻ってもらうにしても調査部の方に行ってもらうにしても言いくるめやすくなる。デメリットはない。
頭の隅に追いやって、今は弁当だ。蓋を開けて中身が公になる。
妹が弁当を必要とする日にだけ作るからなのか、母は弁当に気合を込めている。弁当用のおかずを早起きして作ったりと凝り性なのだ。その度に色々な品に挑戦するが味に外れなし。兄妹両方から好評を得ている。
しかし、凝り性なのも考えものだ。最近キャラ弁や文字弁に手を出しているためか、俺の弁当もその影響を受けてファンシーな雰囲気を醸し出している。中学生の妹にはこれでも良いんだろうけど、高校生の男子の弁当にするにはちょっとどうかと思うよママン。友達に笑われちゃうんじゃないかな。まあ友達居ないから問題ないんだけどな。
こんなもん食えるかよとか言っちゃう反抗期とはついぞ縁がなかったので、俺としては親が手間かけて作ってくれたものには感謝を込めて食すだけである。
箸をとって「いただきます」と言いかけた所で足音が聞こえてきた。美野沢が戻ってきたのかとも考えたが、それにしては聞こえてくる数が多い。
その足音の主たちの話し声に遠耳をきかせてみたが、どうもこちらの方に向かって来ているようだった。面倒そうな予感がしてきたので資料室の鍵を閉めてしまおうか。加えてイヤホンはめてぼうとしてれば何があってもやり過ごせる。
かなり有りかと考えたが美野沢が入れなくなる。連絡入れようにも番号もメールアドレスも知らない。こんな所で最小限にコミュニケーションを絞っていたつけがまわってくるとは……。
嘆いていても何もはじまらない。できる事が他にあるわけでもないけど、そもそもこれもまた杞憂なんじゃないか。最悪の想定を常にしておくのが俺の信条だ。想定が本当に最悪だから現実は大体それよりはマシな結果が返ってくる。今回もそうなんじゃないのかな。きっとそうだよ。
そんな事を思えば思うほど、現実ってのはそれに反していくもので。
嘲りの含んだ笑い声を挙げていた集団は資料室の前で足を止めた。そして無遠慮に扉を開けると、中心格らしき女子を筆頭に入ってきた。ノックっていう人類の編み出した作法知らねえのかよ。未開の土地の人なの? むしろモンキーなの? ヤンキーとモンキーって一文字違いでよく似てるよね、キーキー騒ぐ所とか。
「あんた、四組の秋里だよね。ここで何やってんの」
そのまま脳内に逃避しようとしたがやっぱり現実さんは俺を離してくれないらしい。愛が重い。イッツ トゥー ヘビーですよとか言い出したくなる。
「ねえ、ちょっと! 私が聞いてんの」
高圧的な物言いにいらっときながらも諦めて対応する事にした。
その中心格らしい女子には見覚えがあった。確か美野沢が所属してる女子グループに居たような。ということはこいつがまゆちゃんとやらか。なるほど中心に居るだけあって整った顔立ちだ。軽く色を入れよく手入れのされた髪に、自然に仕上げたメイクがそれを引き立てている。吊り目の恐ろしさが全部帳消しにしてるけどな。
「見ればわかるだろ。飯食ってんの」
「はあ? こんな所で?」
あからさまに見下してくる視線はいっそ清々しいね。後ろに居る女子の「変だよねー」というくすくす笑いのほうがよっぽど気に障る。
「そうだよ。そっちこそこんな所に何しに来たんだ」
「別に来たくてここに来たわけじゃないし」
だから、それが何なのか教えてはくれないんですかね。別に知りたくはないけど、それなら早く帰ってくれません。他者の食事を邪魔しちゃいけないってのは動物だって知ってる道理ですよ。俺が野生の動物だったら噛みつかれてる所だ。
その道理を解してはくれないようで、そのままUターンとはいかなかった。まゆちゃん――後ろの女子たちの呼び名から本庄麻由美という名前らしい事がわかった。わかっても一生徳しない情報だとは思うがまゆちゃん呼びするよりは精神衛生上よろしい。
まゆちゃん改め本庄らはこっちを睨んでくるし、俺も俺でよくわからないまま自分の領域に土足で踏み込まれた気分なのでこっちも目をそらさずに返していた。無言のままにこう着状態突入である。
この勝負、先に目を逸らした方が負ける! 野生に帰った気分で気合を入れたら直ぐに目線を外された。肩すかしを受けた気分だったが、その原因はすぐにわかった。
扉のすぐ脇に美野沢が立っていたからだ。手には弁当が入っているらしき紙袋と紅茶のペットボトル。顔は蒼白というべき有り様だった。
「ま、まゆちゃん。どうしてここに」
「どうしてってのは私の台詞なんだけど、ゆき。昨日私がここに来た時に言ったじゃん。『もう噂とか気にしなくていいから戻ってきな』って。なのに、なんでまたここ来てるわけ?」
「それは、そのう……」
「私ももっと早くにはっきりと言ってあげるべきだったとは思って反省してるんだ。あんたがそういう所気にする子だって知ってたんだから。それに、少なくともクラスの奴なら大丈夫。きっちり話つけといたからさ」
本庄は美野沢に詰め寄ってじっと目を見つめながらたたみかけていく。昨日俺が宮下先輩と話してて居ない時にもこいつら来てたのか。
話つけたって、それは本当にお話し合いだったんでしょうか。噂してた奴らが怯えながら詫びを入れてる姿が目に浮かぶ。
しかし、この様子から考えるに本庄は美野沢を連れ戻しに来たという事で間違いなさそうだ。かつて性悪カテゴリに勝手に入れてしまった事があったが、少なくとも身内相手にはそうではないと備考に加えておこう。一緒にカテゴライズしたこの周囲の女子達もそうであるかは不明だが。本庄は本当に心配しているのが窺えるが、こちらの女子は心配半分好奇心半分のように見える。
何にせよ、このままの展開なら俺が何かするまでもなく元鞘に戻って安全を確保できるだろう。はじめは何しにきやがったと思ったものだが、とんだ僥倖だ。たまには現実も俺が何もしなくても思った通りに動いてくれるもんだ。
「ね、戻ろうよ。噂の事だって私らと一緒に居たら守ってあげられるし、そのうち消えてなくなるよ」
「……ありがとう、まゆちゃん」
「じゃあ――」
「でも、駄目だよやっぱり」
「――は?」
思わず俺が声を挙げてしまった。いや、なんでそうなる。
ここに来てた理由の友人たちに申し訳ないってのは、今しがた解消したようなもんだろ。
「な、なんでよ、ゆき」
「昨日も言ったけど、やっぱり私自身の気持ちが落ち着く時間がまだ欲しいから」
「でも、もう結構な間があいたじゃない」
「うん、それでもまだ」
「もしかして――そこの人が関係あるんじゃないの?」
ここで唐突に俺に矛先が振られた。振った奴は名前も知らぬ周囲の女子A、モブ子とでも呼称してやろう。なぜそこで俺が出てくる。というかそこの人て。
見れば、モブ子は口元を美野沢たちに見えないように手で隠してるが、微妙ににやついているのが俺の位置からは丸わかりだ。こいつ、やっぱ面白がってやがる。
「あの日記にも一緒に食事してるみたいな事書いてあったし、ここに居たって事はつまりそう言う事なんじゃないかな」
「本当なの、ゆき?」
「え、ええっと一緒にお弁当食べてるのは事実だけど。戻らないのと秋里君は――」
「ちょっとあんた」
美野沢が言い終わる前にこっちに向かって本庄はつかつかと歩み寄ってきた。おいおい、最後まで話聞いてやれよ。美野沢もそこで止めないで話続けろって。
「ゆきがあんたに告白したのは罰ゲームだったの、わかる? 何を言ったのか知らないけど、ゆきをひきずりこまないでくれる」
「ひきずりこむもなにも、俺は何もしてないって」
むしろ現在は戻る方を推奨しています。
俺が変に落ちついてしまっているもんだから、余計に腹が立つようで本庄は更にヒートアップしていった。
「いいや嘘だね。だったらなんであの子があんたと一緒にお昼食べたりすんの。人見知りしがちなのに大して関係の無いあんたとってのがまず不自然」
「それは、偶然の采配というか、利害の一致というか」
「はあ? わけわかんないこと言ってごまかすなよ」
あのまま部屋を使わせるのを断って嫌な思いをさせたくなかったってのが俺の側の理由ではある。しかし、それがはっきりとわかりやすい、納得させられる理由かというとそうでもない。正直なところ、それだけでしかないのに嘘だと言われそうだし、モブ子どもが囃したてて余計な事を言い出しそうで使えない。真実に力が無い立場というのはこういう時にデメリットが際立つ。
ちらっと美野沢の方に目をやってみるが、あわあわとしているだけでこちらに口を出せそうにもない。助けを期待したわけではないが、突破口が見つからないので困ってしまった。
「まあまあ麻由美も落ちついてよ。話し合いになってないよ」
驚いた事に仲裁したのはモブ子だった。てっきりもっと煽るものだとばかり思ったが、違うのか。
だが、単に方向性がつまらなそうだったからおさめたのだとすぐにわかった。
「お腹空いてるからかっかしちゃうんだよ。あたしらもお昼まだだったもんね。えっと、秋、秋里君もそうだよね」
そう言ってモブ子たちは俺の弁当箱に視線を向ける。
俺がファンシーな雰囲気の弁当を持っているのが余程おかしかったのだろう。笑いをこらえるように必死なようだった。そのうちの一人がつぼにハマったのか「ぷははっ」と噴き出していた。
「へ、へーかわいいお弁当だね。おいしそうだし私も一つもらっていいかな――」
「――さわんな」
体でその手を遮ろうとした時に、自分で思っていたよりも力をこめていたのか、机を思いっきり叩く形になってしまった。悪いとは少しも思わないが。
それに気押されたのかモブ子は伸ばしかけていた手を引っ込めて身体を抱くようにして後ずさった。
一瞬の静寂。茫然としていた中でいち早く立ち直ったのは本庄だった。
「ちょ、ちょっと、何もそんな言い方しなくても――」
「あー、すまんが秋里と、その、美野沢はいるか」
廊下から頭だけ出して本庄の言葉を遮ったのは宮下先輩だった。
そう言えば昨日来るように言っておいたんだった。まるで計ったかのような絶好のタイミングである。出待ちでもしてたのか先輩。できればもっと早くに来てほしかった。
「お、居たな。美野沢も、久しぶり」
「宮下、センパイ? どうしてここに」
「俺が呼んでたんだ。本庄、悪いが先約があるんでな。詳しい事は後でゆっくり美野沢と話してくれ」
「っちょ、まだ話は終わってな」
「――すまない。俺も二人に聞きたい事があるんだ。この場は俺に免じて譲ってくれないか」
「っ……はあ、いいわ。ゆき、後で話聞かせてね」
そう言うと本庄は女子を連れてあっさりと出ていった。
流石に上級生にまであんな態度はとらないと考えてはいたが、思いの外すんなりと引きさがってくれた。宮下先輩、背高めだし威圧感あるんだよな。女子の体格ならなおさらだろう。権威万歳である。行使する側に限るけどな。
「事情がよくわからないんだが、あれでよかったのか」
「ええ最高です」
働きを評価してサムズアップを送ってやる。それでとりあえずは納得してくれたようだ。
対してさっきよりもおろおろしているのが美野沢だ。おどおどというよりは浮足立ったように落ちつかない。
「秋里君、その、宮下センパイを呼んだのって?」
「あー、その辺もまとめて説明しよう。その前に飯を――」
さっきの立ち回りで埃が部屋中を舞っていた。既に弁当にかかってしまった分は仕
方ないがここで食べたくは無いな。
「――せっかくの天気だし、屋上に行こうか。先輩、お願いしていいですか」
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