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第七魔眼の契約者  作者: 文月 ヒロ
第二章光と叡智交錯する魔の祭典
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閑話・猫真緋嶺の白昼夢(6)

「んで、結局これは何なんだ?ガラスの塊、にしちゃあ宝石然としてやがるし……」


 場所は変わって、とあるファミリーレストラン。

 頬杖を突きながら、和灘悟は頭上に(かざ)した結晶体に目を凝らした。

 先程、潜りの【魔術師】から奪ったあの半透明の結晶体だ。


 あの後、彼等から話を聞いては見たのだが、有益な情報は結局得られなかった。


「知りませんよ。あの二人の内、【魔術師】の方は雇われていたらしいですが、その肝心の雇い主の情報を持ってませんでしたからね。本当、今回の事件の黒幕は相当手馴れていますよ、尻尾すら掴ませてくれません」


 眼前に座る少年に、緋嶺は溜息交じりの言葉で返した。


 ――まぁ、この手際の良さからして、やはり犬神家が後ろにいるのでしょうが……。


 確証もない上、部外者が下手に関わって良い問題ではないため、悟には伝えないが。

 ともあれ、手に入れたこの手掛かりをどうにかしなければならない。


「せめて裁定官に任せられれば楽だったんですが……ねぇ、先輩」


「いやー、流石にそれを拾った場所が不味かったな。もし裁定官にあの転移魔法陣の場所知られたら、ぜってぇ琴梨先生に殺されるし、秘密にするしかなかったろ?」


「それは先輩だけですよ。まったく、さっきの二人まで逃がす事になるなんて、厄介な人ですよ貴方は」


 そう言って、緋嶺は悟から例の結晶体を奪った。


「あ、ちょっ」


「先輩が持っていても仕方がないでしょう?これは私の方で預かっておきます。もちろん、こっちの魔法陣の描かれた紙切れも」


 テーブルの上に置いていた正方形の紙を手に取り、悟に見せる。


「ぁあ、さっきの連中から奪い取った奴な」


「人聞きが悪いですよ先輩、回収したと言ってください。魔法陣の見た目からして、コレは悪魔を呼び出すための物。しかも、一般人と取引していたのを見るに、今回の悪魔召喚事件と高確率で関係ありますから。……まぁ、魔法陣自体は古くからあるタイプのものですし、アレンジした形跡もないので手掛かりになるかは怪しい所ですが」


 ともあれ、どちらも一度こちらの方で預かって、ネネに調べてもらうしかないだろう。

 緋嶺の調査能力ではここまでが限界である。


「まぁ、それでも、誰も掴んでない情報ではありますから。来て良かったです」


「さいですか、そりゃ何よりで……。んで、この後はどうする?」


「え?ぁあ……そうですね、()()()ですか」


 緋嶺は言葉に詰まった。


 実を言うと、ここまで早く調査が終わってしまうとは考えていなかった。

 予定ではもう数時間は外で動き回っていたはずで、寧ろ、あの転移魔法陣のあった路地の後はどこを見て回るかを考えていたくらいだ。


 少なくとも、悟に指摘されるまでは、まだこの時間が続くのだと勝手に想像していた。


 ――出歩く理由が出来たと思っていたんですが、そうですか。もう、終わったんですね……。


 黙ったままいると、悟が首を傾げた。


「ん、どした?急に黙って」


「いえ、何でも。帰りますよ、特に用事もありませんし」


「帰るって……別にいいけど、早いな」


「真面目なんです私。もちろん、頼んだスペシャルガトーショコラを堪能してからですが」


 そう言って、緋嶺は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 本来であればこの時点で大人しく帰るべきなのだろうが、少しくらいは長居したって構わないだろう。


 ただ、帰ったら直ぐ、今日得た事件の手掛かりをネネに渡す必要はありそうだ。

 一般人に悪魔召喚の魔法陣を配って行う事など、どうあってもロクな事ではない。

 ましてや、今回の事件にはあの黒い噂の絶えない犬神家の影が見える。


 早く解決しなければ。






文月です。

投稿が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。


さて、閑話を含めてとなりますが、本作も70話目に突入しました。

これで70話超えの自作が3作です。実はこの前、自分のこれまで書いて来た文字数を確認したら、70万文字を超えていました。もうすぐ80万文字です。


知らない内に、ここまで書いていたとは……。

とりあえず、100万字目指して頑張りますかー。


それでは、次回をお楽しみに!




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