63話・魔法祭の開始前
「っし、これで最後だな」
魔法祭当日の朝、和灘悟は民家の屋根に立っていた。
足元に転がっていた低級の悪魔が、呟いた直ぐ後、悟の魔力で消滅する。
「朝から大変だね、悟」
虚空より現れたノウズが、悟の隣へ羽毛のようにふわりと降り立ち言った。
「ホントによく見かけるようになっちまったからな、悪魔やら魔物やらを」
「下級程度の連中ならば、学院の警備に任せれば問題ないだろうけれど。とはいえ、不安要素を事前に排除しておくに越した事はない。ボクも、少し気にかかる事がある」
「気になるって?」
「いや、最近遠くに気配を感じる事があるんだ。心当たりはある。けれど、何か変でね。言葉では言い表しづらい。……それより悟、ここでのあまり長居は良くないんじゃないかい?」
「そういや、【魔術師】としてじゃなきゃ、ただの不法侵入だしな。はは……」
民家の塀を経由して通学路へ飛び降りると、悟は大きく息を吐く。
ノウズから供給される膨大な量の魔力のお陰で、魔力が枯渇する心配はないのだが、疲れた。精神的に。
今朝見つけた悪魔や魔物は、先程の一体だけではない。
その所為で割に時間を食ってしまう羽目になった。
しかし、これも必要な行動だった、と割り切って気持ちを切り替える。
「さてっと、そろそろ急がないと遅刻だな」
「走ればギリギリ……といったところだね。魔術を使えばその限りではないけれど」
「やるなら、もうちょっと人目気にしないで済む場所でだな」
学院へ再び歩を進めつつ、悟はノウズへ言葉を返す。
「なぁノウズ、勝てると思うか?」
「城谷白に?」
「あぁ、ちょっと自信がねぇ」
「確かにね、彼は強いだろうさ。けれど、それを覆すのが君とボクだろう?【名無し】の【迷宮】でもそうだったように」
ノウズの台詞に、悟は一瞬きょとんとした表情になった。
が、すぐに吸血鬼のような鋭い犬歯を見せて、鋭い笑みを作る。
「前言撤回、だな」
「それでこそ君だ、悟」
魔眼と少年の向かう先は第六魔法学院。
そこで幕を開ける魔の祭典に臨もうと、二人は足を急がせるのだった――。
文月です。
予告の通り、本作は一旦ここで終了とさせて頂きます。
ここまでお読みくださった読者様、本当にありがとうございました。
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新作の情報を。
新作品名・『アンデッド・ゲームズ・メモリー~時間遡行を果たし、俺だけ強くてニューゲームな世界で、死の運命から幼馴染を救う~』の投稿を近日中に開始します。
文月にしては珍しい、副題付きの作品です。
投稿開始は、4月29日(土)の予定となっておりますので、良ければご覧ください!
《完了》




