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第七魔眼の契約者  作者: 文月 ヒロ
第二章光と叡智交錯する魔の祭典
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第51話・【魔術師】の憂鬱

 元より、学院に入った後で知った【魔術師】の闇だった。

 無論、これまでも、その闇に触れる機会は何度もあった。

 故に思う。


「……はぁ、やってらんねぇ」


 学院の屋上。悟は地べたに胡坐をかきながら、膝に肘を立て頬杖をついて呟いた。


「偶然だな、君がいると僕も落ち着いて昼食が取れない。さっさと失せろ、最弱者(ワースト)


 悟の呟きに、近くにいた東条陽流真がそう言葉を返した。


「断る。俺のが早くここに来て飯食ってんだ」


「チッ、一度僕を下したからって調子に乗っているだろ。魔眼持ちだろうと関係ない、ここでどっちが上か教えてやる」


「やらねぇっての。大体、油断してない【魔術師】相手にして、この前みたいに上手くいく訳あるかよ。ノウズも何か言ってやれ」


 悟の声に、長い銀髪を風に靡かせながら現実世界に顕現したノウズが、ふわりと地面に着地し、東条の近くで口を開く。


「確かに、悟の言葉も一理あるだろうね。とはいえ、百聞は一見に()かずとも言うらしい。実際に試してみても構わないんじゃないかな?もっとも、本当にここでやり合うつもりが君にあればという話だが……おや、ボクの見る限り、君の中の魔力の流れは至って平常のようだ。とても戦闘態勢に入っているとは思えない」


「……」


 一瞬だけ、不愉快そうな顔をした後、東条は二つ目の菓子パンに手をつけ、袋を両手で破った。


「まぁ、知っての通り、【魔術師】の勢力争いは中々に苛烈だ。鳴神家当主の判断は別に間違いじゃない。陰陽系の【魔術師】は、魔術が得意でない奴がほどんどだ」


 ふと、つまらなそうに東条がそう言った。


「けど、こういう【呪符】みたいなの作るのは得意だろ?」


 悟は懐から【呪符】を取り出して言葉を返す。それは、前回、【迷宮】に潜る前に徹からもらって、結局未使用のまま終わった代物だった。


「式札を扱うのは【陰陽師】の専売特許みたいなものだからな、当然の事さ。けれど、単に【呪符】に魔術を込める程度だと、そう強い効力の物までは式札が許容出来ない。結局、術師の補助か小手先の技術にしかならないんだよ、それは」


「魔術のが好きなくせに、詳しいのな」


「大した知識でもないけど、兄の影響さ」


「?へぇ、兄貴がいるのか。ちょー意外だわ」


「正確には“いた”だ。もう亡くなっている」


「……何か、悪い」


 踏み込んではいけない類の話をしてしまったか。

 そう思ったが、杞憂だったようだ。


「気遣いなんてやめろ、虫唾が走る」


「さいですか……」


「あぁ。それよりも、僕は魔法祭には出るなと言ったんだが?」


 東条の鋭い視線が悟を睨む。

 ははは……、なんて笑って話を逸らそうとするが、どうやら無駄らしい事を悟は悟った。

 小さく溜息を零す。


「出ないとか誰も約束してないし、目的が出来ちまったら、そうもいかねぇっての」


「何だ?まさか、陰で連中のその賭けとやらに介入するつもりか君は?」


「あぁ」


 無論それは、徹達が【決闘】に負ける確率の方が高い、と思っている事の証明になるかもしれないが。

 けれど。


「他に俺が出来る事なんて、今はそれくらいしかねぇしな」


 悟は魔眼・ノウズを一瞥し、握った自身の拳を見つめながら、東条へ静かに返事を返した。


 魔眼の力は強力だ。力を制限される【契約者】とはいえ、単独で半神を相手にして、有利に戦局を進められるようになる程に。


 その様子を横目で眺めていた東条は、両の瞼を閉じると、片手の指先でこめかみを軽く押さえた。


「第一魔眼の【適合者】はどうするつもりだ」


「だな、アイツは十中八九魔法祭で出る。けど別に、直接闘うって決まった訳じゃないだろ」


「闘う場合はどうするのか訊いたんだが、僕は」


「そりゃあ、その場合は――」


 悟が言えたのはそこまでだった。




「ん?あれは……」


 不意に聞こえたノウズの声。

 一体どうしたのだろうか。そう尋ねる前に、しかし答えは判明した。










「ふむ、やはりそうだね。悟、()()が出た」



どうしよう、ものすんっごく、この作品の短編書きたくなってきた……ッ。


文月です。

新作も裏で書いてるので、作者のスペック的に短編は書けないという……残念。


さて、小さなお知らせを。

次回は遅くても今週の金曜日には投稿しようと思います。

理想は木曜日です。頑張ります。



《完了》


最後に、この作品を読んで面白かった、良かった等々……思われましたら、


☆☆☆☆☆


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