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第七魔眼の契約者  作者: 文月 ヒロ
第二章光と叡智交錯する魔の祭典
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第43話・合格祝いの席の中(2)

「ん?」


 耳に届いた聞き覚えのある声に反応し、悟は後ろを振り向く。


「おっ、さっきぶりぃ。遅かったな瞳」


 赤眼(あかのめ)(ひとみ)、彼女がそこにいた。


「用事があったのよ、誘うなら直前はやめなさいっての」


「そうしたいのは山々だったんだけどな、色々忙しかった上に……ほら、俺今日ほとんどの授業出席してなかったろ」


「確かに。何してたの?」


「琴梨先生プレゼンツ“お仕置き補習”超増し増し……」


 定食を乗せたトレイを長机に置くと自分の隣に座った瞳。

 悟はそんな彼女に対し、遠い目をして言った。


「なるほどね、()()()()()()()()


「あぁ、まったくだー……」


 どうやら瞳には理解してもらえなかったようだ。であれば、あの魔界にでも放り込まれた――もちろん、行った事はない――ような時間を是非とも体験してほしい。

 今の悟のように、説明するのも気疲れするレベルに濃い時間を味わえるだろう。


 悟が密かにそう思ったのを、魔眼以外は誰も知らない。


「おひさー瞳」


「久しぶりね操沙。二人も」


「うっすッ」


「お久しぶりです赤眼(あかのめ)さん」


 瞳と操沙達のやり取りを見守りながら、そういえば今日は休み明けだったか、と若干の休みボケを再認識する悟。それともう一つ。


「そうか、お前等、俺が寝てる間に会ってたんだっけか」


「見舞い行ったら病室でな」


「あの、えと、そこから学校でもよくお話をするようになりまして――」


「はいはい、盛り上がってるとこ悪いけど小雪、あと徹と悟、あんまし長引かせると昼休終わるわよ」


 言いながら、操沙は食堂の時計を親指で指した。


「ですね」


「んじゃ、ちょっと遅くなったけど、悟の追試合格祝いってことで……」


 小雪に続き徹が言うと、各々用意した飲み物の容器を手に取って、顔の高さまで持ち上げる。

 そして、


「「「「「乾杯!」」」」」


 ようやく悟の落第回避の祝いが始まった。

 第一位階が一人に、第二位階が二人、第三と第五位階がそれぞれ一人ずつという珍しい組み合わせ。おまけに魔眼付きだ。


 ――魔眼、か……。


「なぁ瞳、第一魔眼の【適合者】ってどんな奴か知ってるか?」


「え?えぇっと、悪いけど私まだ会った事なくて」


「あっ、あたし遠めからなら見た。――一言で言ったら白い男子ね。あと超顔が良い」


「二言じゃねぇか……」


 加えて後半は心底どうでもいい。

 それはさておき、だ。少々気になって訊いてみたが思っていたより情報が集まらない。

 いや、夏休みはまだ少し先だとはいえ、この変な時期に【適合者】は編入して来たのだ。まだ学院に通い始めて日が浅いだろうし、悟達とはクラスも違う。得られる情報など、案外こんなものなのかもしれない。


 ――ミスったな。


 ――あとで【天眼】で探してみるかい?


 ――ぁあ、今日はパスで……琴梨先生の補習、まだ終わってねぇから。


 あまり休み過ぎた感覚はないものの、学習の遅れはやはりあった。小さな試験もいくつかあったらしい。

 今回の落第は寸前の所で回避したが、学院の成績評価は少し特殊で加点と減点の両立方式だ。決められた試験や課題に合格しなければ減点され、持ち点が一定ラインを下回れば即落第。学院生活全体を通しての言動も、評価対象となる事もある。

 悟のような最底辺の成績だとまた落第しかねないのだが、琴梨の計らいでそれら全てを補習で賄えるようにしてもらえた。


 ……あれ、この人ただ趣味に走っただけでは?と気付いたのはつい先程の事だったが。


 兎に角、今日は一日補習漬け確定だろう。


「ま、後で探すのは賛成だけどよ」


 呟くようにノウズに返事をすると、悟は椅子の背にもたれた。

 急ぎの用事でもない。今くらいはゆっくりしようと考えて――


「あれ、先輩?」


 不意に、直ぐ近くで偶然居合わせた猫耳の少女と目が合った。





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