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第七魔眼の契約者  作者: 文月 ヒロ
第一章始まりの契約
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第28話・英雄紋の使い方

 ◆◇◆◇◆◇◆

『悟君、もしかして君、奥の手があるから大丈夫、だとか考えてる?だとしたら、それは先生お勧めしないの』


『え?』


 ある日、担任の琴梨にそう指摘された。


『……はぁ、分かってないでしょ悟君。【強制老死の宣告】は呪われた者の寿命を一定期間後に奪うという性質上、体じゃなく魂に呪いがかかっている。そしてそれを少し弄って、自分の寿命を――魂を魔力へ変換する、という効果へ一時的にだけど変える事が出来る』


 彼女のいう悟にかけられた呪いの効果変更は、言い方を変えれば、タイムリミットの十五年が過ぎる前に悟の寿命が尽きてしまうような呪いへと変貌を遂げさせる危うい行為だった。


 反面、魂の一部を魔力へと変換する為、変換される魔力量は寿命一日分でも膨大だ。


『確かに、奥の手として考えるのは悪くないかもなの。でもね、悟君。軽い考えでその力を使っていると、無駄な場面でも魂を削る羽目になって――気付いた時には、君、多分死んでるよ?』


『……い、いやいや、流石にそれは言い過ぎじゃ?琴梨先生、俺だってそこら辺はもうちょっと考えてるしさ――』


『言い過ぎじゃありませ~ん。何故なら悟君は馬鹿だからなの♪という訳で、先生、悟君の奥の手を封印しようと思います!』


『え、っちょ…待ってッ、出来るだけ使用は控えるんで、それだけはホント勘弁してもらえないでしょうかッ!』


 悟は人生最大レベルの懇願をした。

 しかし、相手はあの琴梨、返って来た言葉はこれだった。


『大丈夫なの、君が潜らなきゃならない大型【迷宮】では封印は解けるし』


『何その(しか)るべき時しか使えない設定、英雄の(つるぎ)か何かですか……!?』


『そっ、【英雄の契約書】っていう英雄の武器に使われていた物があるんだけど、契約書に血判を押すとそんな面白効果が付いて来ちゃうの。というか、さっきの()()()()で悟君が気絶してる間に済ましちゃった♪』


『…………え、やったの…もうやったのッ!?』


『あぁそうそう、大型【迷宮】の中じゃなくても、体力と魔力をほとんど使い切った状態で、死が迫ってる状況を用意すると、英雄紋って特殊な紋章が手の甲に浮かび上がって来ると思うの。封印していた力が使えるって合図としてね。早速試してみる?』


『それもう、奥の手ほとんど使えねぇって意味じゃねぇかぁぁぁぁぁああッ!!』






 ◆◇◆◇◆◇◆




 ――って事で、やっと使える…ギリギリだったなマジで……。


「……ふぅ」


 深く一呼吸。

 直後に、悟の体に大量の魔力が流れる。


 魔力を血液とするならば、魔力回路とはいわば血管だ。

 一度に流す事の可能な魔力量の上限を超えれば、負荷が掛かり傷付く。

 そしてこれは、第一位階である悟が本来回路全体に流していい量を大幅に超過している。

 しかし、琴梨との訓練により、悟はその上限を第七位階級の【魔術師】並みの物としていた。


 つまりは、魔力だけなら、悟は超越者(トランセンダー)に匹敵する量を扱える。


『だが、その力ではこの状況はどうする事も……』


「?何だよノウズ、ホントに気付いてねぇのか」


 落ちていく、その感覚を全身で感じながら、悟は魔眼へそう言葉を返した。


『気付く…?一体何を言って――』


()()()()()()()()()()()()()


『まさかッ、魔術の効果を変えるつもりかい……!?』


 無理だ。ノウズはそう思った。

 そもそもそれは、打開案を考えた時、候補から真っ先に除外した考えだ。


 理由は難しくない。

 悟の【加速】の魔法陣には、術者が思い描く魔術効果を魔術に反映させるような仕組みが施されていた。

 必要なのは、想像力――本来あり得ない事象を魔術で再現出来ると思える力。しかし、想像力の源は、その者がそれまで蓄え、思考に染み付かせて来た知識。変わらない、そう易々とは変わらないのだ。


「加速……何を加速させるか。例えば、俺の落下速度を逆方向に加速させる、とかな…」


 ノウズの思いとは裏腹に、悟はその悪戯っぽい笑みを絶やさず言った。


 ――やはり、不可能だ。


 もう一度考えたが、高確率で悟の試みは失敗する。

 言わなければ。だが、言ってどうする?

 言っても、言わなくても、結局結果は変わらない。

 変らないと、知っている。けれど……。


『悟、その魔術は』




「ぶっ飛べ」




『失敗す』













「――【加速】」


 だが、次の瞬間、悟の姿が消えた。

 それは一瞬の事だった。信じられない事が起きた。

 ……どれ程の確率だろうか、魔術効果の変更をたった一度の挑戦で成功させるなど。


 和灘悟は大量の魔力を糧に、その身を落下方向とは逆方向へ超加速させ、崖の中に繋がる入り口よりも更に上まで一気に運んだのだ。


 ――馬鹿な…こんな、事が……?









「っしゃ、成功ッ…」


 三日月のような笑みを浮かべ、悟は小さく言葉を漏らしたのだった。






文月です。ブクマ、ポイント評価ありがとうございます。


さて、予告していました通り、週2回中1回の投稿です。

今週も本当は3回投稿したいのですが、少し厳しそうかと。

次回は土曜日の投稿となります。


《完了》


それと、この作品を読んで面白かった、良かった等々……思われましたら、


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