お菓子のような声
君の声は、甘いね。
サクサクしてて、ふわふわしてて。時にパリパリと割れるような音も立てる。
お菓子みたい。
その声をあたしに、ずっと、ずっと、聞かせてね。
録音はしないわ。生が好きなの。
耳元で囁いてほしい。
「愛してるよ」って。
「君だけに聞かせる声だよ」って。
あたしの心も、お菓子のように甘くしてほしいの。
さあ、聞かせて。
「昨日、あそこの町歩いてたらさぁ、たらこハンバーガーっての売ってるお店、見つけちゃってさぁ、思わず買って食べてみたら、これがくっさいのなんの。美味しかったらお前と一緒にまた食べに行こうって思ったんだけど、なんだかね。アレはないね。臭いから。生の魚の卵に賞味期限切れのケチャップ混ぜて縁側に半日ぐらい置いてあったみたいな匂いしたよ。それにね、バンズの間に一本、毛が入ってたんだよ。これがどう見ても髪の毛じゃなかったんだよね。どう見ても、その、汚いところのね、毛だった。あ、それからね。今朝、ちょっと凄いことがあってね。トイレで用を足したらさ、水の中に茶柱みたいなの立ったんだよ。お前にも見せたかったなぁ」
お菓子みたいな声でそんな話しないで!