ぷんすかばあちゃんとげらげらばあちゃん
むかしむかし、あるところに、いつもおこっているおばあちゃんがいました。
夏、あついといっては、
「どうしてこんなにあついんだ! はらがたつ!」
と、ぷりぷりしています。
おこって、かっかっしているのでよけいに暑くなって、顔はまっかっかです。
近所の人たちは、そんなおばあちゃんを、『ぷんすかばあちゃん』と、よぶようになりました。
ぷんすかばあちゃんのとなりの家にも、おばあちゃんがすんでいました。
このおばあちゃんは、なんでもわらう、わらいすぎるおばあちゃんでした。
「あらあら、おならが出ちゃったわ。ぷー だって! げらげら」
おばあちゃんの笑い声は、近所中にひびきます。
近所の人たちは、そんなおばあちゃんを、『げらげらばあちゃん』とよぶようになりました。
ある日、ぷんすかばあちゃんが、庭で草取りをしていました。
「ほんとに草はどうして勝手に生えてくるんだろう。はらがたつ!」
ぷんすかばあちゃんは、イライラしながら草をとっていました。
となりのげらげらばあちゃんも、庭で草取りをしています。
「あらあら、草がいっぱい。草を食べられたらいいのにねぇ。食べてみようかしら? ぱくっ。まっずーい。あはははは。草を食べられるわけないわよねぇ。おっかしーい。げらげら」
ぷんすかばあちゃんのところまで、笑い声が聞こえてきました。
「げらげらよくわらう人だねぇ。あの笑い声を聞くとはらがたつのよ」
ぷんすかばあちゃんは、げらげらばあちゃんのところに行きました。
「げらげらわらってるんじゃないわよ。うるさいったらありゃあしない」
「あら、うるさかったかしら? 今から、お昼ごはんを作ろうと思うんだけど、いっしょにどう?」
「お昼ごはんだって? わたしゃ、いそがしいんだよ。とっとと作ってくれるんなら食べてあげてもいいけど」
「じゃあ、ちょっと待ってて」
げらげらばあちゃんは、冷蔵庫からたまごをとりだしました。
テーブルの上においたら、たまごがころころころ。
ころがって、落っこちそうになりました。
「おっと、あぶない」
げらげらばあちゃんは、すばやくたまごを手にとると、わらいだしました。
「たまごが、ころんだわ! おっかしーい。げらげら」
「それをいうなら、たまごがころがった じゃろう。変な言葉を使うんじゃないよ。まったく、いつになったら食べさせてもらえるんだい」
ぷんすかばあちゃんは、おこりだしました。
「まぁまぁ、そう怒りなさんな」
げらげらばあちゃんは、たまごをわると、玉子焼きを焼き始めました。
ふんわりとおいしそうな玉子焼きができあがりました。
「それから、お魚も焼こうかしら?」
冷蔵庫から、塩鮭をとりだします。
またまた手がすべって、塩鮭がすっとーんと落っこちました。
「あらあら、生きてたわ! おっかしーい。げらげら」
「生きてるわけないじゃろ!」
ぷんすかばあちゃんは、「はぁー」とため息をつきました。
「なんだか、あんたといると怒るのもあほらしくなってくるよ」
ぷんすかばあちゃんが、すこーしやさしい顔になりました。
「きゅうりの塩もみを作って。料理はたのしいわぁ。うふふ」
げらげらばあちゃんのごはんができあがりました。
「さぁ、いっしょに食べましょ」
ぷんすかばあちゃんは、げらげらばあちゃんの玉子焼きをひと口食べました。
「ほんのりあまくて、おいしい!」
思わず、声にだして言いました。
「おや、怒ってないわね」
ぷんすかばあちゃんは、「ふむ」と首をかしげました。
「はらがたたんわ。不思議じゃわぁ」
げらげらばあちゃんも、塩鮭を食べました。
「おいしい!」
「おや、げらげら笑ってないわね」
ぷんすかばあちゃんに言われて、げらげらばあちゃんも、「ふむ」と首をかしげました。
「大笑いするほど、おかしくないわ。不思議じゃわぁ」
二人は、顔を見合せてにっこりしました。
それからというもの、二人は、ほどほどに怒って、ほどほどに笑うようになりました。
二人は、なかよしになりました。