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ボラ周辺の異変

 ラスリは納得し切れていなさそうだが、カランコエはうんうんと頷いて「流石団長です」と、呟いている。


「なんだよ、お前だってこれくらいやってるくせに」


 感心している風なカランコエを見て、つい俺も独り言のように、そう返していた。

 他の騎士団員ならいざ知らず、カランコエなら間違いなく俺と同じ勉強をしてきたはずだ。

 自分が人一倍頑張っているつもりはある。だが、その努力はこの信頼できるお目付役様の前では誇れない。俺たちは同等なんだ。

 ふとラスリに目を向けると、ラスリは尊敬の眼差しでカランコエを見ている。

 俺の独り言を聞いていたのだろう。

 カランコエが真面目なのは騎士団でも有名だ。無骨な容姿に似合わない柔らかな性格と、覇気の感じない、転じて言えば威圧感の無い、その穏やかな物言いは騎士団の顔となっている。


「カランコエさんは漢は心だってのを体現した人だ!カッコいいよな」なんて、城下町ではよく聞く話だ。

 それは褒め言葉なのか、なんてのは無粋な考えだ。容姿云々は関係無い。城下町の見廻りをしていれば男女問わず熱い視線を集めているのだから。


 だから今回のラスリも、俺よりカランコエが凄いと聞く方がすんなりと受け止められたのだろう。

 東北の支部ボラへの道を進みながら、ぼんやりとしながら入り組んだ森の中を抜けて行くと、カランコエが俺の隣まで来てラスリに聴こえないように小さな声でささやいた。


「様子がおかしく無いですか」

「ん?」

「ほら、あそこにいる獣。本来なら東の山に住んでいる獣じゃ」

「お? 山猿か、森まで降りて来たんだな」


 カランコエとは同期で、騎士団長に俺が選ばれた年には一緒にこうやって国内の支部を回った事がある。

 初めての定期連絡国内巡りで東の山に寄った時に、この山猿を二人で見たのだ。あの時は山猿を見たカランコエが珍しく驚いた表情を見せ、

「なんですかあの生き物は? 初めて見ましたよ!」

 なんて、驚いていたものだ。

 俺もその時初めて山猿を見たのだが、予習がバッチリだった俺は僅かにカランコエより年下ながら、山猿の生態系や名前を教えてやったものだ。

 しかし今回のカランコエは、山猿を見て新鮮な驚きを見せるわけじゃなかった。その生態を知っているが故の進言をして来たのだ。


「あの獣は、群れで生活するんでしたよね。それに自分達の領域を決め、餌に困らなければその領域から出る事はあまり無いとも団長から教わりました。それが一匹で山の麓にあるボラを越えてこの森にいる。これは何かあると考えた方がいいんじゃないですか」

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