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カヌマの治安維持員

 翌日、カヌマに到着した俺たちの前に現れたのは、とこに伏せった治安維持員だった。

 城への定期連絡を任されているのは、各支部に一人づついる治安維持員と呼ばれる者達だ。

 カヌマの治安維持員の顔は死んでもおかしくないような歳を感じさせ、今にも事切れそうな雰囲気が出ている。


「おい! どうしたんだ、大丈夫か!」

「ソラ団長じゃありませんか、お元気そうですね」


 俺の声かけに対し、治安維持員は横になったまま元気な返事をした。


「私は腰をやられましてね。いや、団長にご足労頂いてしまい大変申し訳ない」


 毎年定期連絡に来るカヌマの治安維持員は老人だった。

 その顔はしわくちゃで来年には死んでいるのではないかと毎年思うほどだった。年齢は知らない。

 そんな老人がとこに静かに伏せっている姿に今にも事切れそうな雰囲気を感じたが、腰をやられてただけでわりと元気だった……。




「カヌマ周辺はいつも通り平穏無事、治安に関する報告は特に無しということでしたね」


 手を頭の後ろに組み、なんだか気の抜けた眼で空を見上げてラスリが言った。


「王様も言ってただろ、この国内巡りは旅行みたいなもんなんだよ。特に何も無いって報告を各支部からもらってくるのが仕事なんだ」

「いつもと違って二つの支部から連絡がなかったんでしょ? 何かあったのかと気合を入れてたんですよ、それが腰が痛いからって……それに治安維持員ってあんなご高齢の方に務まるものなんですか?」


 治安維持員は城周辺における騎士団と同じ役割を各地で任されている存在だ。

 つまり辺りの平和を守るための巡回が主な業務となる。


「支部は全ての村にある訳じゃない。それなのに各地に治安維持員は一人づつしかいない、これがどういうことだかわかるか、ラスリ?」

「一人でも充分な仕事しか無いって事ですよね」


 カランコエがラスリにお勉強を始めた。


「そうだね。一人じゃ周辺で何か複数のトラブルがあっては対処し切れるものではない、なのに一人で治安維持員は事足りる。それこそがこの国の治安の良さを象徴しているんだよ」

「そう、ですよねー」


 ラスリは大冒険を期待していたのか盛大にため息をつく。

 俺は昔の自分を見ているようでその姿に思わず笑ってしまった。


「団長、今馬鹿にしました!?」

「いや、すまん。なんだか懐かしくてよ」


 取り敢えず笑ったことを謝ったのだが、まだ顔がニヤついていたらしい。

 俺と同じ気持ちなのかカランコエもラスリに暖かい目を向けていた。


「なんなんですか二人してー!」


 そのやる気はいずれこの国を守る者になって行くのに必要な物だ。

 ラスリはふてくされているが俺とカランコエはその姿を頼もしく思った。

 こうして俺たち三人は次の目的地へと向かっていく。

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