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お兄さま、綾名は一億円で嫁ぎます  作者: 日々一陽
番外編 珊瑚の新しいお兄ちゃん
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番外編 珊瑚の新しいお兄ちゃん【3】

◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 着いたのはごちゃごちゃとした繁華街、翔太兄ちゃんがよく知ってる街なんだって。


「そろそろお腹空いただろ? 何か食べようか?」

「じゃあ、お寿司!」

「え?」


 何驚いてるんだろ?


「お寿司、美味しいお寿司、イクラの軍艦巻き食べ放題っ!」

「ええっ?」


 何がええっ、なのかな?


「お昼にお寿司って、へん?」

「じゃなくてさ、予算千円って言ったの、珊瑚ちゃんだろ」

「うんそうだよ。もしかして――」


 今日のデート、予算は千円って言うのは、アヤねえの話を聞いて決めた。

 だってアヤねえ「ホントに好きな人と一緒だったら、デートするのにお金なんか関係ないよ。千円もあれば1日楽しめる」って教えてくれたんだもん。反対にたくさんお金を使っても楽しくないデートもあるんだって。


「千円じゃ足りない?」

「えっと、食べ放題は無理だけど、回転寿司で10個までなら」

「回転寿司?」


 回転寿司って行ったことないからよく分からないけど、そう言えば友達が「回転寿司は庶民の食べ物だ」って言ってたっけ。


「もしかして、珊瑚ちゃん行ったことない?」

「うん。でも名前は知ってるよ、庶民の食べ物なんだよね」

「そのとお~り。珊瑚お嬢さま、お気に召しませんか?」

「ううん、お気に召すよ。面白そうだもん」

「じゃ、行ってみようか?」

「やったあ~っ!」


 ちょっとだけ歩いて、ごちゃごちゃと賑やにお店が並ぶ真ん中辺りに回転寿司屋さんはありました。

 入り口には「一皿100円」って書いてある。


「いらっしゃいませっ!」


 元気なお姉さんの声、案内された4人掛けのテーブルに座ると翔太兄ちゃんが小さな袋を手渡してくれます。


「じゃあ、最初に手を拭いてね」


 見渡すとお店の席はほとんどいっぱい。テーブルの横にはお皿に載ったお寿司がズラズラって並んで、音もなく進んでいきます。面白いな、これ。


「好きなの取ってね」

「このケーキみたいなお寿司は、何?」

「それはケーキ」

「じゃあ、このハンバーグみたいなお寿司は?」

「ハンバーグのお寿司」


 驚いたなも~!

 回転寿司って言うけれど、お寿司以外の食べ物もいっぱいある。


「食べたいのが来たら、お皿ごと取るんだよ」


 翔太兄ちゃんはハマチと鉄火巻きを取りました。あたしはマグロを取りました。


「イクラは? イクラが来ないよ」

「注文しようか…… って、来た来たほら、あっちから」


 見るとお皿に載ったイクラが行列をなして流れてきます。1皿2皿3皿…… 4皿並んでやってくる。ひとつのお皿に2個ずつ載ってる。すごい。イクラパラダイス!


「ちょっ、珊瑚ちゃん、そんなにイクラばっかり取ったらダメだよ。他の人も待ってるんだし、慌てなくてもまた流れてくるから」


 目の前にイクラのお皿をよっつ並べたら翔太兄ちゃんに怒られちゃった。戻そうとしたらそれもダメだって。


「じゃあ、ひとつは翔太兄ちゃんにあげる!」


 そして一緒に食べました。

 味は…… まあイクラでした。


「ねえ、あの赤い色のお皿は?」

「ああ、あれは一皿2百円って意味。美味しそうなトロだね」

「じゃああのウニも?」

「そうそう、一貫で200円って、高嶺の花だね」

「食べてもいいの?」

「お金がある人は、ね」


 翔太兄ちゃんはあたしを見てニコリと笑って貝柱に手を伸ばしました。


「珊瑚ね、ポシェットにお金持ってるよ」

「でもそれは使っちゃダメ」

「は~い」


 普通のマグロを食べました。

 回転寿司は色んなお寿司が次々にやってきて、ケーキもフルーツもやってきて、来ないものは注文できて、うどんも天ぷらもあって、何だかとっても面白かった。


「美味しかった?」


 翔太兄ちゃんの質問に珊瑚は「もちろん」って答えた。


「でも、いつもはもっと美味しいお寿司を食べてるんだろ?」

「だってさ今日はデートだよ、お兄ちゃんと一緒にデートだもん。一緒だから一番美味しいに決まってるじゃん」

「そりゃよかった」

「あのね、デートの楽しさはお金じゃ決まらないんだよ――」


 あたしはアヤねえに聞いたことを話してあげました。勿論誰から聞いたとは言わないけど。

 でも、翔太兄ちゃんは笑いながら。


「そっか、だから予算は千円って言ったんだね」

「正解っ」

「で、その話は綾名から聞いたんだろ?」

「あ、うん、どうして分かるの!」

「分かるさ。綾名とは長い付き合いだもん」


 綾名って、呼び捨て? 


「翔太兄ちゃん、さっきからアヤねえのこと呼び捨にしてるね」

「あ、あははは、そうだね。綾名は僕の妹だからね」

「妹? お兄ちゃん家族いないって言ってたじゃん。どういうこと?」


 翔太兄ちゃんの話を聞いてびっくりした。

 アヤねえも昔、翔太兄ちゃんの妹になるって言ったんだって。珊瑚のマネしてたんだ。やるな、アヤねえ。でもさ、だったらさ――


「じゃあさ、珊瑚が妹になったよって報告しにアヤねえのとこに行こっか?」

「あ、そうだね。また今度ね」

「そしたらさ、「あなたのお兄ちゃんはこの珊瑚がいただきました」「いやよ返してっ、わたしのお兄ちゃんを返してっ!」ってなるよ? 三角関係勃発だね」

「ならないよ。きっと」

「つまんないっ!」


 そうだよね。アヤねえ大人だもん。なんか瑠璃ねえよりずっと大人に見えるもんな。

 その後あたしたちはショッピングモールでお洋服を見て回ったり、本屋さんで好きな本を言い合ったり、高いビルに登って街の景色を見たりしました。


「どうしたの翔太兄ちゃん?」

「あ、ううん、何でもない」


 でもお兄ちゃんは時々ぼうっと何かを考えて上の空。つまらないのかな、あたしとのデート?


「そんなことはないよ、すっごく嬉しいし楽しい。ただね、想い出したりするんだ、色々」

「アヤねえのこと?」

「ま、色々」


 決めた。

 明日アヤねえに会おう。

 だって翔太兄ちゃんは絶対アヤねえが大好きだもん。



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