◆ 4話 ◆
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ノートパソコンに映る当選番号を宝くじと見比べる。
「……」
「……」
5秒も掛からなかった。
「…………」
「…………」
組番号すら全然違う。
惜しい、とか、僅かに外れたとか、そんなことすらないビーンボール。
あっという間、と言う言葉があるが、あっ、と声が出る間もない。
あっけない、とはまさにこのこと。
綾名にかける言葉を探しながら2等も3等も4等も5等も確かめた。
「………………」
「………………」
2等3等という高額当選番号は勿論、5等の300円からも見捨てられた。
さっきまで絶対当たると信じていたのに、天国から地獄へ一直線。
でも、心のどこかで当たるわけない、と考えていたのもまた事実で。
……
今、どんな顔をしているのだろう?
綾名を見るのが怖い。
目の前の宝くじの番号がいつしか無意味な記号の羅列に見える。
どうしよう、なんて言おう、なんて言ったらいいんだろう……
しかし、その沈黙はすぐに破られた。
「残念でしたねっ」
明瞭で明るい声がした。
翔太は無意味になった記号の羅列から視線を上げる。
綾名はこっちを見ていた。笑顔で、しかし、そのくりっと大きな瞳は滲み、細く可愛い鼻は僅かに震えている。
「ごめんなさい、お兄さま」
「えっ?」
「わたし当たるって豪語したのに、嘘つきになっちゃいました!」
「いや、それはウソって言わないだろ。信念とか言い聞かせとか、自己催眠とか」
「かもです。でも、口に出して言ってしまったので、やっぱりウソです」
「そんなことないさ……」
「ごめんなさい。はははっ、ウソついちゃった。わたし、わたし……」
「綾名?」
「わたし、わたしっ!」
一瞬にして綾名の瞼が決壊した。
突然の豪雨が頬を伝う。
笑顔を無理に繋ぎ止めても、流れる滴はぽたぽたとテーブルを濡らしていく。
翔太は立ち上がると、震える肩を抱き寄せた。




