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みー5 なんかおかしい

 みーの話ですが、若干別の視点が入ります。ご容赦ください。

 立原恵美はテレパスだ。その事実は、だから9が気にしていたのだという納得と彼女に対する少しの罪悪感を彼に残した。

「なあなあひじり!けいさつって何だよ!」

「自警団みたいなもんだよ。何でお前が聞くんだ。大体お前はこないだ乱歩読んで学習したろ。あとだ、あと」

 理解してもまだなんとなく心の底にわだかまるものがあるが、何とか隅へ押しやる。せいぜいみーを睨むくらいで済みそうだ。住人同士仲良くするのが神の教え。逆らうなどありえない尊い思し召しなのだ。

 神と民との橋渡し役である、『カンナギ』ならばなおのこと実行しなくてはならない。


「いいか、まずこの島にはお前の言う『警察』はいない。裁判所もないし弁護士もいないし法律だってない。今ここに来てるのは自警団だ」

 ひじりは簡潔にわかりやすく言った。しかし、そうかなるほど!そもそも警察なんかなかったんだね!よくわかった!なんて言えるわけがない。

「な、なぬ」

「自警団は島の有志を募って、島民の募金で成り立っている」みーに口を挟ませずひじりは続けた。

「多少設備が古いが本土の警察に似たものだ。本当は島の治安を守るのが仕事で、今回みたいに外から来たやつがやらかしたのはイレギュラー。でも最近イレギュラーが多い。わかる?」

「わかりません」

「あとこっちに来てない警察屋っていうやつらがいるけど、こっちは個人で雇える護衛専門の兵隊みたいなやつ。詰め所に駆け込んでも保護してもらえない。僕らが関わるのは遠足の時と臨海合宿の時とやくざに目ェつけられたときくらいだけだけど覚えろよ」

 わからないって言ったのに無視された。おそらく、ひじりはこうやって外からのお客様がくるごとに似たような説明をしているのだろう。

 つまり、これは会話ではない。案内放送みたいなものだ。とりあえず全部聞かないといけない。

「法律がないから刑罰は特に決まってない。軽い罪なら島中に顔と名前とやったことばら撒くだけだ。人殺しや強盗は情報公開にプラス何やるか、自警団が考える。

「関係者及びそれ以外の島民からの意見を参考にしつつ射殺かリンチか財産没収か毎回話し合って決めるけど大体いつも全部やる。犯人がわからないときはちゃんと捜査するけど、今回みたいに外のやつが外のやつに島で殺されたときはちょっとやる気が出ない」

「や、やる気?」

「そうやる気。本土の警察の仕事だからな。でも国はここにはそういうのは入れないことにしてる。しかもお楽しみの処刑タイムがなくて捜査資料と犯人を本土に送還するしかできないからつまらんらしい。

「つまらんが自警団がやるしかない。でも自警団はほんとはやりたくない。設備だって古いしな。ってわけで、手の空いてる子供を使って推理担当の探偵団を開設した」

 案内放送のテープが終わった。

「それが、少年探偵団?」

「違う違う!そんな子供っぽさあふれる名前じゃねーよ!」びよよーんとトシの顔面が飛び出てきた。「俺と9とひじりで、カルト探偵団だ!」

 ひじりが自分の眉間をつまんだ。

 カルト探偵団。カルト。カルトって言ったらなんかうまく言えないけどよろしくないイメージのような気がする。9だって地下鉄に毒ガスを撒くようなヤバいイメージを描いているし、おそらくひじりもそう思うのだろう。響きだけでつけられたと思しき微妙な組織名である。

「でも……何で警察も法律もないの?」

 トシの顔がこわばった。がしっとみーの肩を掴む。伝わるのはただ事じゃない焦燥だ。

「いいのか!?お前いいのかよ!?長いぞ!めっちゃくちゃ話長いぞ!ひじりはオタクだからそういう話させたらずっっっっとしゃべってるぞ!?」

「ああ。その話はかなり長い」

 9まで渋い顔だ。どうしよう。ひじりは笑顔だが目が笑っていない。

「どうするの?聞かなくていいなら、僕は言わないけど」

 みーはちょっと悩んで、決めた。

「一応聞いとく」

 ぎえーとトシの悲鳴が響いた。

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