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第4話「ダンジョン行ってみようかな〜」


「お、おい……本当にこっちであってるんだろうな?」


「へへっ、俺っちを信じてついてきなって」


暗い洞窟の中、ピチョンピチョンと水音の響くダンジョンの中を、俺、ユウマと、友人の冒険者フラムで進んでいた。


目的は、セフィロトダンジョンに新しく出来たという、光都で噂になっているという珍しいお宝が眠ると言われている場所。


さすがにセフィロトの根元ということもあって、湿気の量も岩場の密度も半端じゃない。


若干最近夏場だったのでひんやりとして気持ちいいのがありがたいといえばありがたいか。


「本当にセフィロトの根元にお宝なんてあるなのかよ……」


「そりゃ俺っちだって実際見た訳じゃないからわからねえよ? んだけどもセフィロトの歴史絵を辿っていくと可能性は見えてこないかい?」


言われて俺は、教会で教えてもらったセフィロトのダンジョンの成り立ちを思い出す。



セフィロトとは巨大な一本の木である。


セフィロトは光都ロンディウス……エアリス教会のある街を包むように生えていて、おおよそ亜空戦争時に、民の苦しむ姿に心を痛めた女神エアリスが、あらゆる国からロンディウスを守るために育てたという。


ロンディウスはかつて今よりも大規模な都だったのだが、セフィロトが急成長することで、ロンディウスの一部はセフィロトの下敷きになった。


故に今では古代ロンディウスの遺跡となっているはずなので宝の宝庫になっている……というのが専門家と街の人間の意見だ。



もっとも、俺がここにきた理由は別にある。


宝なんて外に滅多に出れない俺にとっては持ち腐れ以外の何者でもない。教会で勝手に世話を焼いてくれるしご飯もくれるからお金も正直興味がない。


こんな怪しいダンジョンに自分の命を賭けてまで乗り込んだ理由は「冒険がしたかった」からである。


たまたま今日の俺は用事を理由に休業した。

っと言っても俺が駄々を捏ねたらすぐに休めるように手配してくれたわけではあるが。


ニナにはとっても感謝してます。


そして俺は休みをもらってお忍びで冒険者のギルドへ向かって、そこで以来の申請をした。


まぁ迷宮調査に護衛をお願いなんて、俺の偽名で登録すると、結構な人が集まった。


その中から受付さんが選りすぐりを集めてくれたわけなのだが……俺がドジを踏んで転移の罠に捕まったせいで見事にはぐれた。


唯一、俺と一緒に同行しているのは昔からの友人である、シーフのフラムぐらいだ。


フラムはドラグ特有のツノを震わせて辺りを探る力を持つ。スキルとはまた違う扱いのものだがこれがなかなか便利だ。


「オルメティさん達見つからないなぁ」


「あの方向音痴マジでどこ行ったんだよ」


ギルドに手配された仲間の一人はあろうことかオルメティだった。


まぁ基本的に俺は戦わないんだからいいけど………あのど畜生受付嬢は俺に何か恨みでもあるのだろうか?こっちに来てから今まで善行しか積んでいないんだが。


この世界では種族特徴か、生まれ持ちのスキル以外のスキルは発現することはない。


だから戦うとなったらスキル以外は本当にそっくりそのまま白兵戦だ。


故にこういったダンジョンでは派手好きなスキルは本当に御蔵入りだ。上層のほうでも、天地を焼くような強力な滅却スキルを持つ人間が真っ先に戦力外通告された。


普通に考えて、炎や雷なんかのスキルを、酸素の欠乏しがちなダンジョン内で放った場合、酸素の欠乏で動きが鈍る。


さらにセフィロトの上部は樹海のような光景が広がっているらしく、ド派手な能力を使えば、もれなく全員火の海の中だ。


セフィロトの冒険者に、スキルが地味で死にやすい連中が多いのはそのせいである。


外の開拓者たちならチートな連中がゴロゴロいるわけだが、それはまた違う話だ。


「カロロロ!!」


なんて考え事をしていると、暗がりの方からスケルトンと呼ばれる、骨のアンデットが襲いかかってきた。


武器も何も持っていないので、殺傷性は皆無だが、のし掛かられると、肋骨やら尺骨やら、骨の痛い部分が体に刺さってくるとても嫌なやつだ。


実際こいつに襲われたままトラップに引っ掛けられて死んだ冒険者もいるほど、危険度は低いが厄介な敵だ。


「ていっ」

「カァァーーーーー!」


回復スキルとか蘇生スキルとかで昇天したり、そもそも動きがゾンビ並みに鈍いし、筋肉もなくて弱いから俺でも対応できちゃうけど。


俺たちが今いる下層ではこういった部類の敵ばかりが出てくる……といってもアンデットばかりなので俺の蘇生スキルで一撃で吹き飛ぶ。単純に相性がいい。


「いやぁ、大司祭様はお強いなぁ」


「お前が助けんかい」


俺の背中越しにフラムが控えめ声をあげた。

フラムはドラグでしかも戦闘要員のくせに、骸骨とかホラーなものが苦手らしい。


ちなみにかくいう俺も命の危険に瀕しているので内心は心臓爆裂寸前。


武器はこの手に持った頼りない司祭を象徴する陽光紋のついた杖のみ。

これを振り回すしかできません。

チンパンジーのほうがまだ強いんだけど。


「ハァー!ファイターさん欲しいなぁー!」


そんなチンケなことを叫びながら洞窟を進む、できればオルメティに届くように。

態とらしくそんなことを叫ぶ。


「優秀で強いウィッチのファイターさんが一人ぐらい欲しいなぁー!助けてくれないかなー!」


「呼んだ?」


「キタ!オルメティさんキタ!これで勝つる!」


「あれ?俺っちの探知にも引っかかってないのにいつの間に…?」


大声で叫んでたら予想通り現れた。

いや、絶対俺たちのことを遠目から見てただろうこの性悪白髪ウィッチ。


「そういえばさりげなく私を方向音痴呼ばわりしていたわね」


「さぁ?ドイツのことなんざんしょ」


皆目見当もつきませんなぁ。


「それよりどこ行ってたんだよ。嘘偽りなく言え」


「あんたが勝手にどっか行ったんじゃない。ちょっと脅かそうかなーって思って後ろからついて来てたわけじゃないし」


あっぶねえ。

こっそり後ろからついて来ていたのか。

ガッツリついて来ていて、こいつの能力範囲内に居たらさっきの戦闘でうっかり死ぬところだった。


ダンジョンはこういう即死トラップもあるから油断ができない。


「まぁいいや。とりあえず他の奴ら探しに行かねえと」


「一人はすぐそばにいるわよ?」


「お前はもう含まれて……」


「いや、あんたの背後に」


「はっはっは。こいつはスケルトンだから仲間ではないぞ………っておわー!!!!!!!」


ビックリした!

というか襲って来てなくてよかった!

襲われた瞬間オルメティのスキルで死ぬところだったぞ!


「いや、そいつでもなくてね」


なんか悠長な口調でオルメティはしゃべっているが俺にそんな余裕はない!

い、今すぐに離れないと!


「とりゃー!!」


っと、離れようとしてバックステップしたところで、スケルトンの姿が見えなくなり、代わりに鉄柱のようなものが視界を埋め尽くした。


どうやら俺の鼻先に当たったようで、鼻の頭が熱を帯びて煙を上げている。


「ご主人様!やっとお会いできましたわ!分かたれた二人!引き裂かれた愛が今ここで一つになるべく、導かれ………ウッ!」


「に、ニナがオルメティに殺されたー!」


「ちょ!人聞きの悪いこと言わないでよ!」


鉄柱に見えるほどデカイハンマーを回り込んで、青ざめて、とてもいい顔で息を引き取っているニナにスキルを施す。


「ご主人様。御身にケガなどございませんこと? もしもの時はーーー」


「わーかった!わーかったからいろんなとこを弄ったりするのはやめてくれ!!アッハン!そこはダメェ!」


「何やってんのよアンタ等は」


オルメティの妙に冷たい視線を受けながら、ニナが脇やら股間やら、首やらをしつこく触ってくるのを引き剥がす俺。


今のは主にニナが普段見ている場所らしい、つまりは彼女なりのフェチポイントなんだと、前にニナが声高に教えてくれた。


ちなみにニナがここに来た理由は、俺が依頼しにギルドへ行く時に「私同伴なら許可」ということで、ついて来た次第だ。


「とりあえずあと二人を探しに行くわよ」


「そうだな。俺たちだけで戦ったら今度は誰がオルメティに殺されるかわからん」


「あんたは本当に一言多いのよ!まったくアタシをなんだと思って………あら?」


「………どうした?」


「……なんかスイッチ踏んだわ」


「バッカだなぁ〜。スイッチって言ったらそれはトラップに決まってーー」


ーーーゴウウウウウウン!!!!


その瞬間、オルメティの左右の壁が狭まり、万力のような形でオルメティを挟んだ。


「うわわわ!!なんなのよこれはぁぁ!」


「はっはっは!今の潰され顔最高!!」


「アンタ後で覚えてなさいよ!ぶっころふ!!!」


いやーもう誰がどう見てもトラップだ。

ただ古いのか、オルメティが頑丈すぎるのかはわからないがオルメティを圧死させるまではいたっていない。


「イーッヒッヒッヒ!いやー最高マジ最高だよ!アッハッハッハッ…………んん?」


俺はゲラゲラ笑いながら様子を眺めていると、俺の足元からもカチッという音が鳴った。


「へっ?」

「ーーーご主人様!」

「ワッツッ!?」


咄嗟にニナが俺を突き飛ばす。

俺はこのままではニナが押しつぶされると思い、助けようと手を……あれ?


「あれ?なんともない……?」


てっきりニナも壁万力で固定されるのかと思ったが、当の本人には何も実害が来ていない。



ーーーゴゴゴンンン!!!


っと思ったのも束の間、どこか遠くから轟音が響いて来た。


あっ、この一本道はもしかして……。


俺の予想は当たっていたようだ。

オルメティの挟まっている壁の向こうの、遠くの方からゴロゴロと何かが転がってくる音が聞こえてきた。


インディ系トラップだこれ。


「大岩がくるぞ逃げろぉぉぉぉおお!」


「ちょ!私を置いていくなぁー!!!」


俺たちは大岩から逃げるために全力で走り出した。


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