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第九話 決闘

広大な敷地をもち、エリフィンの誇る技術の粋をもってつくられた庭園は、見るも無残な光景に変貌していた。

その惨状を引き起こした犯人は、しでかした罪の大きさに、ただ震えていた。

そう、震えているのは僕である。


「どうしてこうなった……」


遡るほど少し前。

突如レタウ国の王子、ジュディアスに決闘を申し込まれた。

それを説明するには、まずエリフィン国第一王女のフィリアについて説明しないといけなかった。


話を聞いてみると、ある時それは王家にはつきもので、避けては通れぬみちにフィリアが直面した日。


「いやじゃ」

「しかしなフィリアよ」


縁談。それは世襲制である王権にとって大事な話。ライオット国王は娘のフィリアに友好国レタウの王子を迎えるように話したのだ。普段から仲良くしていた二人なので国王はなんの心配もなく話をしたのだが


「なぜだフィリアよ。ジュディアスとは仲良くしていたではないか」

「父上、確かに国を思えば正しい話だとは思うのじゃ。じゃが……」


フィリアが断った理由、それは強さ。

火の文字を受け継ぐエリフィンは強さを特に重んじる。

そして強さとはすなわち言霊を操る魔術師としての強さだ。

事実フィリアの血筋であるジャネス家の魔術師としての実力は高い。

フィリアは母から聞いたジャネス家の女としての約束を守るつもりなのである。


それはジャネス家の血筋を衰えさせないために、自分よりも弱い相手とは子を成さないというもの。

これがフィリアが断った最大の理由である。

だがジュディアスも弱いわけではないのだ。

フィリアが強すぎるだけで……。


こうして盛大に振られたジュディアスはいまでも鍛錬を続けてはアタックし続けているのだが、ここで問題が発生した。

フィリアが実力を認めた男が現れたのだ。


毎日一緒に学院に登下校し、一つ屋根のした(王城は広いのでジュディアスも妄想)で暮らし、遂に会食にまでついてきた。

これはもう戦争である。ジュディアスはそう思ったのだ。恋は戦争である。






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さて、決闘のルールを説明しよう。

僕が聞いたのは以下の通り。


一、お互いに自分で用意した媒体のみをしようする。

二、降参するか、相手を降参させるまで続ける。

三、かならず立会人のもと、公平な勝ち負けを決める。ようするにズルはできない。


以上だ。

細かいルールはあるのだけど、この三つを守っていれば決闘は成立する。

そこで決闘の会場に選ばれたのが、エリフィン王城の庭だった。


決闘の内容だけど、まず僕が用意した媒体はすべて火で作ったものだ。

一応あらゆる文字を行使できる事実は隠しておきたいし、二文字以上使うとどんなチートが起きるかわからないのでやめておいた。

まあ現状自動書記ってチートが発動しているんだけどね。


そんな中で僕が描いた魔法は基本のファイアーボールやファイアーウォール。ファイアーアローとかファイアーランス。

ジュディアスは対して、水魔法って感じのラインナップだった。

はじめての決闘だったし、喧嘩もしたことなかった僕にとって、もう無我夢中だった。


それはもうほんとに夢中だった。


狙いを定めるとかもなく、ジュディアスの放った最初のウォーターボールでビビった僕は、用意した媒体を片っ端から発動した。


「う、うわぁぁぁぁぁあああああ!」

「え? ちょ、まって!」


あわててジュディアスは防御のための媒体を使う。

そこからは一方的だった。

僕のでたらめな魔法をジュディアスが守り、受け流し、相殺する。が、やがてジュディアスの手札(媒体)が尽きる。

守りを失った無防備なジュディアスに火魔法が迫った瞬間……


「そこまで!」


立会人だったフィリアにより決着が下された。

火魔法は同じ火魔法でかき消されていた。それだけでもフィリアの実力が高いことがわかる。

守られたジュディアスは茫然とししていた。

我に返った僕はようやく周りを見渡せる余裕が戻ってきて


「どうしてこうなった」


ぽつりとつぶやいたのだ。


私の魔法名のボキャブラリー低すぎ……!?

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