目覚め(5)
ここが日本では無いと知った俺は落ち込んでいた。
(これからどうしよう?うちの奴らは心配して無いかなぁ?日本に帰れるのかなぁ?‥‥‥‥‥‥‥‥‥ええい、どうしようもない事を考えてどうする!まずは今からどうするか考えよう!)
「なあ、お前はこれから何処に行くんだ?」
「‥‥‥‥両親を助けに行く。」
「両親って、お前の親誰かに捕まっているのか!?」
「さっきの騎士達の領主であるゲール公に捕まっている、
お前は途中の村に置いていってやるから安心しろ。」
「お前何で追われているか知らんって言ってなかったか!?ってゆうか何で捕まってんの?」
「‥‥‥私の名前はセレーネ=ド=アステリルと言うんだが聞き覚えは無いか?」
「ただのセレーネかと思ったら、結構長い名前だったんだな。」
「‥‥‥どうやら本当にこの辺りの者では無いらしいな、
まあそんなことは良い、村の者に何か働く口でも紹介してもらえ、私は行かなければならんのだ。」
「なんか分からんが女1人でそんな場所に行かせられるか!
お前が両親を助けるまで付いて行く!幸い、何でか知らんが筋力が上がっているようだから足でまといにはならないはずだ。」
俺はそう言って予想を確信に変えるために近くの木に拳を打ち込んだ。
ガッ‥‥‥ボキボキボキズシーン
木は予想を超えて半ばから折れてしまった。
(せめて拳の型が残るくらいかと思ったんだが‥‥‥)
「‥‥まっまぁ、とにかく足でまといにはならないはずだ。」
「‥‥‥無茶苦茶な力だな‥‥‥だが戦った事の無い女など実際に役に立つかどうか分からん、だから村に残っておけ、もとより勝ち目のない戦いだ。」
「誰が女だ!誰が!」
「‥‥?お前自分が分からんのか?その顔、そしてその胸が何よりの証拠だ。」
俺は思わず胸に手をやった、‥‥‥‥待て待て待て待て待て待て何だ此の柔らかいものは!
恐る恐る自分の胸に目をやると、帰りに着ていたパーカーの胸の部分が控え目にその存在を主張していた。
「何だ、これ!」
俺が思わず叫んでしまったのも仕方ないことだったろう。
「突然どうした、そんな物は産まれた頃からあるだろう?」
「いやいやいやいや!無いからつい今しがた気づいたから!ちょっと待ってくれ!俺は男なはずだ!何で胸があるんだ!‥‥‥ハッ、まさか!」
俺は急いで股間に手をやった、‥‥‥‥無い。
「それも産まれた頃から無いだろう、何だ記憶喪失か?」
「‥‥‥‥信じて貰えないかもしれないが俺はついさっきまで男だった。
まったく‥‥‥気が付いたら変な場所にいると思ったら、変な奴らに襲われて、挙げ句の果てに俺の体まで変になっているとは‥‥‥‥何かもう驚くのにも慣れたよ。」
「そっ、そうか?‥それは‥‥‥大変だったな?」
ひとまず信じて貰えなかったようだ。
「‥‥‥うん、決めた!ひとまず元の体に戻る方法と日本に帰る方法が見つかるまでお前に付いて行くよ、俺はお前の親を助けるのを手伝う、お前は俺の帰る手伝いをする!それでどうだ?」
「まぁ男か女かは置いておくとして、確かにお前の力は役に立つだろう、そのニホンとやらに帰る手伝いは出来るだけやろう、しかしお前‥‥人と殺し合いをした事はあるのか?」
「無い、だけどやれば何とかなるはずだ!」
「殺しはそんな簡単なものじゃないぞ。」
そう言ったセレーネの顔は酷く冷め切った顔をしていた。
「少なくとも帰るまでは、いつ襲われるかわからん危険な世界にいるんだ、誰かを殺す覚悟は今決める!」
「‥‥‥そうか‥‥‥‥分かった、だが足でまといになるなら容赦なく見捨てるからな!」
そう言ってセレーネはまた歩き出した。
これからこの世界で俺はやっていけるのだろうか?
不安になりながらも俺は、置いていこうとするセレーネの後を追った。
これが俺たちの闘いの始まりだった‥‥‥。