目覚め(3)
囲いは私を中心に段々と狭くなっているようだ。
(これは逃げられないな‥‥‥)
どうにか囲いを突破しようと隙を窺っていると、草花を踏む音が聞こえた。
視線をやれば刺客のうちの1人が此方に歩いて来ていた。
刺客はニヤニヤと笑い自分の優位性に浸っているようだ。
「ここまでですよ、もう貴女は袋のネズミです、大人しく捕まってはくれませんかねぇ。」
「すまんが私は人の言葉しか聞き分けられないのだ、売国奴の犬が気持ち悪い顔で話しかけるな!」
売国奴とに反応したのか刺客の顔が怒りに歪む。
「何を言う!貴女が逃げ出さなければ、我々は此のような下衆な事をしなくて済んだのだ!」
「ふんっ‥‥売国奴の犬がよく言う。」
刺客の顔はもう怒りで真っ赤だ。
(刺客のリーダーはあいつか‥‥奴を殺れば包囲網に隙ができるかも知れない‥‥無理ならば少しでも多く道連れにするまでだ!)
私は覚悟を決め剣を抜こうとした瞬間だった。
刺客のリーダーが何かに躓いて倒れた。
?サイドエンド
???サイド
暖かく気持ちの良い陽気の中眠っていた俺は人の声で意識を無理やり浮上させられた。
「〜〜!〜〜〜〜〜〜!」
「~~~!~~~~~~~!」
(煩いなー、人が気持ち良く眠っている時に!)
「〜〜‥‥‥〜〜〜〜」
(うん?静かになったな?まっ、良いやこれでゆっくり眠れる‥‥。)
ガッ
「ゴフッ!?」
「なにっ!」
突然の腹への蹴りと倒れかかってきた何かに、俺の意識は一気に現実に強制送還された。
腹を押さえながら起き上がってみると、其処は色々な花が咲き乱れる花畑だった。
しかしそれよりも気になったのは今の状況だった。
傍に倒れている騎士のような格好の男に、腰にある剣に手をやっている女、そして周りを取り囲んでいる騎士のような格好の奴ら‥‥‥そして何よりここは何処だ?
ぼんやりとしていると傍に倒れていた騎士見たいな奴が此方を怒りと羞恥の顔で睨んできた、しかし直ぐにその顔を驚愕の色に染め上げた。
「こんな場所に人?近くの村のものか?それにしては見た事のない服装だが‥‥まあいい、見られた以上はここで消すか。」
そう言って男は此方に手を伸ばして来た。
「うわっ!」
俺は伸ばして来た手に驚いて、思わず両手で男の胸の辺りを押した、すると驚くべき事が起きた。
「グワァッ!」
男の身体は勢いよく吹っ飛び花畑の端の木にぶつかって止まった、よく見ると胸の部分の鎧が陥没している。
皆が驚いてぼんやりしている中、1番早く正気に戻ったのはさっきまで腰に手をやっていた女だった。
「このままだと危ない!お前も来い!」
素早く俺のもとに来ると、座り込んでいる俺の手を引っ張って立たせるとそのまま走り出した!
「うわっと!おい待て!一体何が起きてるんだ!?」
「私も分からん!今はそれよりも逃げるぞ!」
其処まで来て漸く刺客達も正気に戻ったようだった。
「はっ!お前ら奴を追え!絶対に生かして返すな!」
刺客達は俺たちを追い出したが鎧の重さもあってか追付けるものは一人も居なかった。