決意 (1)
「結城!大変っす!起きるっす!」
「早く起きるっす!ヤバイっす!」
「ッ!?、どうした!?」
ザブとゴブの怒鳴り声に、心地良い眠りの世界から叩き起こされた俺は、寝惚け眼で辺りを確認した。
結城と同様に目が覚めたセレーネ、アワアワと慌てるザブとゴブ、睨む様に家屋の隙間から外を伺うエヴァン、「ハッハッハッ、お前らは既に袋の鼠だ!諦めて出て来い!」‥‥外から聞こえて来る聞き覚えのある声‥。
「完璧に囲んでやがる、此れは逃げるのはかなり厳しいぞ‥‥。」
エヴァンが外を伺いながら、苦虫を噛み潰した様に言った。
「人数は?」
「30人はいるな‥‥、表の入口の方に15人、残りで此処を囲ってやがる。」
「私を狙ってこんな所まで来るとは‥‥。」
前に会った砦からはかなりの距離がある、捜索範囲には森の中や山も入っていたはずだ、其処から此処を見つけ出す執念は驚くべきものだろう。
「お前らがカタストルに助けて貰おうとしているのは分かっている!、故にお前らが必ず通るであろう此処に網を張っていたが、こんなに早くかかるとはなぁ!ワッハッハッハッ。」
恐らく昨日の爺さんが俺たちの事を話したのだろう。
「どうするんだ?このままじゃ奴ら火でも放ちかねないぞ。」
入口の前に集まった騎士達の中にはたいまつを用意している者もいる、このままでは時間の問題だろう。
「裏は人が少ない筈だ、そちらから脱出しよう!」
結城はそう言って入口とは反対側の壁に移動して外を伺った。
「思った通りだ、4、5人しかいないな。」
「おいおい結城この小屋に裏口は無いぞ?」
エヴァンが呆れた様に肩をすくめて言った。
「無ければ作りゃいいんだよ!」
後ろに皆が集まっているのを確認した俺はセレーネに目で合図を出すと、壁に向かって全力で体当たりをした!
「オラァ!」
バキバキバキバキ
壁の外に向かって体当たりで壊れた木片が飛び散った!
「「「なっ!?」」」
結城の突然の行動にエヴァン、ザブとゴブ、そして外の騎士達の声が重なる。
壁を抜けた直後、正面にいた騎士を体当たりで吹き飛ばし、その勢いのまま近くにいた騎士を殴り飛ばす。
後ろでは、固まったエヴァンを避けて壁に空いた穴から外に出たセレーネが、同様に固まった騎士2人を切り捨てた。
「急げ!逃げるぞ!」
「お前ら!そう言うのは先に言え!」
突然の事に固まっていたエヴァン達は、セレーネの言葉に正気を取り戻し走り出した。
後ろから誰かの怒鳴り声が聞こえたが、もはやそんなものに構ってはいられない、5人は空き家からカタストル領へと慌しく出発した。
しばらく走り続けた5人は、追手が居ないのを確認して走るのを止め一旦休憩に入った。
「あいつら随分早く追いかけるのをやめたっすね?」
「これももしかして罠っすかね?」
ゆったりと歩いて荒らい息を整えながら、不思議そうにザブとゴブは言った。
「此処らはもうカタストル領だ、下手に侵入すると面倒な事になりかねないからな。」
「王のいない不安定な状況だから、争いを起こせば即戦争に繋がるってわけか。」
「其処まで見通すなんて凄いっす!」
「流石兄貴っす!」
「もう分かった、分かったから静かにしような‥‥。」
辺りで農作業をしていた人が、何事かと此方を見ているのを知り、エヴァンは気恥ずかしそうに2人の肩に手を乗せた。
「そろそろ見えて来たな、あれがカタストル城のある街ガリアだ。」
「あれがベルナって奴がいるカタストル城か‥‥、かなりデカイな。」
街を守る為の堅牢な城壁と、その中に建つ巨大な城が見える、白く陽の光を反射する城は遠目にも美しくそして鉄壁を示している様に輝いて見えた。
「後少しでこの旅も終わりだ、その後は運が良ければ戦争になる、悪ければ捕らえられて直ぐに死刑だ‥‥、結城‥それでも私に付いてきてくれるか?」
セレーネは遠くの街を見ながら此方を見ずに言った、僅かに手が震えている‥‥、上手くいっても戦争は避けられない大勢の人が死ぬだろう、下手をすれば自身が殺される可能性も有るのだ怖いのも無理は無い、
「セレーネ‥‥、此処まで来て逃げるわけ無いだろう、いざとなれば俺が道を開くから、お前は王女らしく堂々としていればいい、‥‥安心しろ‥側に居るから。」
俺はそう言って震えるセレーネの手を、包み込むように両手で覆った、よく見ると自分の手もセレーネと同じように震えていた。
「ありがとう‥‥。」
静かにそう言うとセレーネは此方を見て微笑んだ、気が付けばお互いの手の震えは止まり、その暖かさだけが伝わっていた。
「俺たちは何時までかやの外なんだろうな?」
「そうっすねー。」
「寂しいっすねー。」




