旅は道連れ (4)
ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ
昼なのに薄暗い森に5人分の足音が消える。
聞こえるのは足音と森の声だけ、ただひたすらに前を行く屈強そうな3人の男性に2人はついて行く。
3人の身体にはロープが結ばれており、途中で一つのロープに結ばれており、後ろを行くか弱そうな女性の手に繋がっていた。
そんな女性の後ろに更に凛々しい容貌の女性が続く。
その様は、誰かに見られたなら一体何をやっているんだ?と問いかけられる事間違い無しな異常な光景である。
静寂の中、最初に口を開いたのは結城であった。
「おいっ、後どのぐらいで着く?」
とてもか弱そうな女性が出すようには思えない言葉が口から飛び出す。
「まだまだ掛かる、この山脈はそれなりに大きいからな。」
それに答えたのは3人の中でも一際目を引く容貌の男だった。
片腕に巻かれた小手に、動きやすさを重視した服装、飄々とした態度と整った顔つきから、相手を探そうと思えば引く手あまたであろう。
「仕方ない、一旦この辺りで休憩にしよう。」
結城は少し息を切らしたセレーネを横目で確認しながら言った、実際5人は気づいていないが下りの山道を歩き出してもう3時間は経っていた、山道になれた山賊や結城ならともかく、登りの時と違いテンションが上がっていないセレーネにはキツイ道のりだったのだ。
しかし実はこの時、体力も増加しているはずの結城も疲れを感じて来ていた。
「昨日から何も食べてないからお腹も空いているだろうが、食料は見つけられなかったから水だけで我慢してくれ。」
そう、セレーネと結城は森を抜けて以降水しか飲んでおらず、そのまま夜が明けてまた水だけでここまで歩いて来ていたのだ。
「‥‥お前らよくここまで来れたな、仕方ないな‥このエヴァン様が手を貸してやるよ。」
男はそう言うと足元から拳ぐらいの大きさの石を拾い上げる、その姿に結城とセレーネは攻撃かと武器を構えた。
「戦うつもりはねえよ、お前らが飯が食えないとなると俺たちも食えなくなるから、なッ!」
そう言って持っていた石を近くの茂みに向かって勢いよく投げつけた。
「何を‥‥。」
「良いから見てなって、お嬢ちゃん。」
男が石を投げた茂みに入っていき、戻ってきた時その手には血を流した兎が掴まれていた。
「賊をやってると狩りが上手くなるもんでね、気配とか結構解るようになるもんだよ。」
エヴァンは自慢気に兎を持ち上げてニコリ(ニヤリ?)と笑った。
「エヴァン‥だったな、凄い腕を持って居るんだな、何で昨夜はナイフを今みたいに投げなかったんだ?」
エヴァンの凄技に驚いた結城は疑問を投げかけた。
「うちは殺しはしない主義なんでね、それに可愛いお嬢さんにナイフを投げる事なんか俺には出来ないな。」
エヴァンは片目を瞑りながら自慢気にそう言った。
その後ろで腰に手をやって自慢気に此方を見ている男達‥‥、さっきまで空気だったよなぁ。
「まぁその可愛いお嬢さんに昨夜はやられたんだがな‥‥。」
「油断してただけっす!」
「兄貴はまだ負けたわけじゃないっす!」
「その気になればお前らなんか兄貴が簡単にコテンパンにできるっす!」
「‥‥‥とにかく!食料は調達したから飯にしようや、ザブ‥ゴブ‥縄の範囲で蒔きを調達してこい!」
「「了解っす!」」
これ以上ほっておくとより惨めになりそうだと思い、エヴァンは強引に食事の準備に取り掛かろうとした、しかし2人の男‥‥ザブとゴブにロープを引っ張られ突然の事に耐え切れず素っ転び引きずられていった。
「おまえらとまれー!」
結城とセレーネは苦笑しながら、そんなに広くないロープの範囲で動き回る3人を見ていた。
「山賊なんてやっている割には、あまり悪い奴らでは無さそうだな。」
ふとセレーネはそう言うと、エヴァンがすっ転んだ時に落としたのであろう兎を拾い上げた。
「そうだな‥‥。」
此方に来てからまだ数日だが、俺は久しぶりに笑ったような気がした。




