旅は道連れ (2)
パチパチッパチッパチパチッ
身体を暖める焚き火から聞こえる音が静かに結城の眠気を誘う。
焚き火を挟んで向かい側で横になっているセレーネは、疲れが一気に来て既に眠っている。
先程までハイテンションだったセレーネは、休憩に入って暫くすると元のテンションに戻り、倒れる様に眠る直前に結城に見張りを任せた。
火の番と見張りを引き受けた結城は皮袋から水を飲み、ゆっくりと身体を蝕む眠気を和らげてから薪を火に焚べる。
パキンッ
焚き火の音だけが辺りに聞こえる中でその音は結城には大きく聞こえた。
反射的に振り向くと、しまったと言わんばかりの顔をしている男達が目に入り、即座に立ち上がりセレーネを背後に隠す。
「こんな時間に何の様だ?しかも後ろからこそこそと。」
月明かりも森に阻まれ届かず辺りを闇が包み込む中の背後からの接近‥‥‥、先程の枝を踏む音が無ければ確実に不意を撃たれていただろう。
その事実はこれまで平和な世界に生きてきた結城に、これまでに無い緊張と恐怖を与えた。
「ごめんねお嬢ちゃん、久々の獲物だから確実に仕留めるつもりだったんだが、失敗しちゃったんだよ。」
腰からナイフを抜き、手で弄びながら男が笑みを浮かべる。
こちらが結城1人に対して男が3人、自分の優位からこの後結城をどうするかでも考えているのだろう。
「兄貴の作戦は完璧だったっす!」
「そこに枝が落ちていたのが悪いっす!」
「そうっす!枝が悪いっす!」
「だから失敗じゃないっす!」
最初に話した男を庇う様に後ろにいた2人が次々に言う、先程の男と違う大きな声にセレーネが目を覚ますかと思ったが、セレーネはまだ静かに眠っていた。
「‥‥‥はぁ、嬢ちゃん命が惜しければ抵抗はしない方が身のためだぜ?」
「そうっす!抵抗はしない方が良いっすよ!」
「さっさと金目のものを出すっす!」
(‥‥‥‥騒がしい。)
結城は先程の緊張は消え失せ目前にいる3人を呆れた様に見る。
馬鹿そうな2人もナイフを持っており危険ではあるのだが、なかなか敵として認識しがたいのだ。
「悪いけど抵抗はさせてもらうよ!」
結城は左手を敵の方向に伸ばし右手をその下に支える様に構え身体を半身にする、我流で編み出した受けの構えをした。
「仕方ないっす!少し眠って貰うっす!」
「眠って貰うっす!」
馬鹿そうな2人がそう言い此方に走りながら腕を振り上げ結城に殴りかかる。
「武器使えよ!?」
結城はナイフを使わない2人に唖然としながらも動く。
先に殴りかかってきた男の拳を伸ばした左腕で逸らし、鳩尾に右手を裏拳の容量で叩き込む!
呻き声をあげて倒れようとする男を避けながらもう片方が此方に手を伸ばす。
その腕を右手で弾きガラ空きの顔を掌底で打ち上げる。
顎を打ち抜かれた男は頭を揺さぶられ声も出さずにその場に倒れる。
「‥‥お前‥何者だよ‥‥。」
大の男2人を可愛らしい女性が一瞬で打ちのめす姿に驚きを隠せず兄貴分の男が言葉を失う。
その瞬間が命取りだった。
「か弱い女の子だよ!」
即座に兄貴と言われた男に近づき、咄嗟に結城めがけて突き出されたナイフを持つ手を左手で掴み右手で服の胸元を掴んで背負い投げの要領で地面に叩き付ける!
「ぐっ‥‥。」
何が起きたかよく分からないままに地面に叩き付けられた男は気を失った。
「ふぅ‥‥、勝てて良かったぁ。」
戦闘後の緊張を解き溜息をつく、多人数との戦闘には慣れているが、ナイフを持った相手との戦闘は久しぶりであった。
「‥‥‥ひとまず縛りあげておくか。」
そう一言漏らし、結城は行動に移した。
大の男3人を縛りあげ、木に括り付ける女の子の姿は、もし誰かが見ていれば驚愕に目を疑っていただろう。
しかしそこには先程の騒動の中でもスヤスヤと眠り続けるセレーネがいるのみで他にいる者は森の中に住む鳥達だけであった。




