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月の綺麗なこんな夜に  作者: 本の樹
第4章
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旅は道連れ(1)

セレーネが言うには、ベルナの領地は南にあるタンガ山脈を越えた場所にあり、領地に入るには山の中腹で検問所を越えなければならないらしい。


「っで、何か山を越える当てはあるのか?」

普通に行けばセレーネの顔は割れているだろうから直ぐに捕まるだろう、心配で尋ねたが。


「無い、検問所の無い山の中を通る、道に迷わなければ1日もあれば山は抜けられるだろう。」

やはりと言うか、何の考えも無かったようだ。


「はぁ‥‥、それで山を抜けたらどうするんだ?」


「ベルナの領地に入ったら南に向かう、ベルナの城は大きいからな、直ぐに城が見えてくるはずだ。」

セレーネは自信満々に言うが、無事に迷わずに山を越えられるか結城は考えずにはいられなかった。


森を抜けた時からそれなりの高さの山が見えてはいたが、歩き続けてその麓まで来てみると、検問所までの整備された道がよく見えた。


「あの道を登って途中で森に入り検問所を抜けて山の向こう側まで行ったらまた道に戻る、多少山に入らなければならないが気にする事は無い。」

森は中に入る事を拒む様に鬱蒼と広がっており、何故山に検問所を建てる事しかしなかったのかは想像に難くない。





山道を登り検問所が視認出来る所まで来た2人は森へと分け入った。

視界を遮断する森の木々を斧や剣で斬りはらい進み続けた2人であったが、予想通りというより他無く山頂に着いた頃にはどちらが山道の方向かすら分からなくなっていた。

時刻は夕方、本来なら既に山道に戻り悠々と山を降りていた時間だった。


「セレーネ‥‥、今日はもう休もう、時期に日が暮れる。」

山登りで疲れた結城がシンドそうに言う。

山頂を越えた辺りから鬱蒼と茂っていた森は姿を変え、木々は高くその姿を伸ばし視界は安定していた。

所々に少し休めそうな斜面のなだらかな所があり、結城はそこで休む事を提案した。


「夜の山は危険と言うからな、やむをえまい。」

セレーネはまるで疲れた様子を見せず、ここで止まる事を不服である様に言った。

どうやらセレーネは山登りが楽しかった様だ。


「もうすぐ陽も暮れるから焚き火をしても大丈夫だろう、少し薪を集めて来る。」

結城はそう言って、辺りに落ちている木を拾い始めた。


「むっ、そうか、では私は直ぐそこで野営の準備でもしよう。」

そう言うとセレーネは斜面のなだらかな場所に行き、火と寝る場所の準備にかかった。

セレーネがそう遠くない所で準備を始めたのをしっかり確認した結城は、集めた薪を持ってセレーネの元に向かった。



「兄貴!久々の獲物ですぜ!」


「しかも極上の女が2人もいますぜ!」


「ああ!お前ら!しっかり準備しておけよ!」


「「あいあいさー!」」



そんな2人を見ていた3人組の男達には結城もセレーネも、まだ気付いては居なかった。




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