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月の綺麗なこんな夜に  作者: 本の樹
第3章
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変化そして慣れ (3)


「おや、お前さん達こんなところにそんな格好でどうしたんじゃ?」

あてもなく森の中を歩き続けている俺たちの前にひょっこり現れたのは、くたびれた褐色の服を着たお爺さんだった。

俺たちの格好はセレーネは乾いた血の付いた寝巻きで、俺もところどころに乾いた血の付いたパーカーを着ていた。


「えっと‥‥いろいろあってな道に迷ってたんだよ、お爺さんこの森に住んでるのかい?」

背中にずだ袋のような物を背負う以外何も持たない姿から不審に思い問いかけてみた。


「いやいや、森の外れに住んでいるんじゃが、道に迷っているのか?うちまで案内しようかの?」

お爺さんは此方を見ながら心配そうに問いかけて来た。


「それはありがたい!是非とも頼む!」

ここまで休み休みひたすら歩き続けて参っていたのか、セレーネが凄く嬉しそうにお爺さんに詰め寄った。


「分かった、それではうちでまずはその汚れを落とさんとの。」

そう言ってお爺さんは振り返ると、来た道を真っ直ぐに戻り出した。

(この爺さん、この森に何しに来たんだろう?まぁ、森の外まで案内してくれるんだから気にしないでいいか‥‥。)

俺は胸の中にある嫌な感覚を無視してお爺さんの後を追った、この時にこの感覚に従っておけば良かったと思うのはこの少し後である。







「お嬢さん方、ようこそ我がアジトへ。」

お爺さんに連れて行かれた先は、斧や短剣など様々な武器を持った男達が、十数人は囲んでいる少し開けた広場だった。

(ここは盗賊のアジトか‥‥、どうやら騙されたみたいだな。)


「お爺さんこれはどういうことだ!」

状況を理解出来ていないのか、セレーネが怒鳴る。

しかし、お爺さんは盗賊の方に行ってしまっており、すでに手が届かない状況である。


「爺さん、今回は女か!お手柄じゃないか、奥で金は貰ってきてくれ。」

そう言って頭領と思われる屈強な体付きの男は近くの家を指差した。

それなりに大きく頑強に作られており、この盗賊達がそれなりに稼いでいるのが見て取れる。


「ヒャッヒャッヒャッ、わしにかかればこんなもんよ。」

そう言ってお爺さんは嬉しそうに笑いながら家の中に消えていった。



「さてお嬢さん方、暴れなければ命の保証はしてやるから大人しく武器を下に置きな!」

そう言うと盗賊達は一斉に武器を構える、しかし余裕からか、この後のことを想像してかニヤニヤと気持ちの悪い表情を浮かべている。


「断る!何が悲しくて男に抱かれなきゃいかん!」

あまりの気持ち悪さに寒気を覚えながら俺は叫んだ。

「私も断らせていただこうか、殺せるものなら殺してみろ。」

そう啖呵を切ってセレーネは剣を構えた。


「チッ、お前ら殺さないように捕まえろ!最初に捕まえた奴にやらせてやる!」

それを聞いて更に眼を血走らせた盗賊が棍棒を構えてこちらに走ってきた。


「今だ、くらえ!」

ある程度距離が近づいたのを確認した俺は、ポケットにねじ込んでいたレーヌの実を取り出して盗賊の顔面に全力投球した!


狙い通りに命中した果実は、砕け散りながらあっさりと男の意思を奪った。

果実が砕けるような勢いで投げた俺に盗賊達がびっくりしているうちに、急いで倒れた男から棍棒を奪った。


「貴様!よくも仲間を!お前らやっちまえ!」

頭領の言葉で正気に戻った盗賊達は一斉に襲いかかってきた。


「やるじゃないか結城!私も負けられないな!」

そう言うとセレーネは先頭を走ってきた盗賊を、左に避けながら腹を切り裂く、更に返す刃で横から迫る斧をいなしてその腕を切り落とした!

「お前ら!この悪寒の落とし前つけてもらうからな!」

そう言って俺は盗賊達に走りより棍棒を叩きつけた。

折れた肋骨が肺に刺さったのか口から血を吐きながら倒れた男を脇に見ながら、俺は次のターゲットに狙いを定め棍棒を振るった。

折れた剣や斧が宙を舞い1人また1人と盗賊達は倒れていった。




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