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舞園勇輝の学園物語。  作者: 姫井 七海
1章「片思いの舞園勇輝。」
9/21

8,「デート。〜当日その1〜」

小説のネタにするため、桜川さんと舞園くんは、デートという名の作戦に出ることになった。案を探すべく、桜川さんは舞園くんに近づき、おとそうとする。

そんなことをしなくても、舞園くんは桜川さんのことが好き。舞園くんにとっては、天国な一日になるのか…?

デート当日の行きの電車の中…「スタートダッシュは早い方がいいでしょう?」

 ボクは彼女が来るのを駅で待っていた。…というのは、ボクらは同じ電車に乗って目的の駅まで行くからだ。

 現在時刻は10時57分、桜川さんは一つ前の駅から乗車し、今は綺麗な田んぼの景色に揺られているところだろう。そんな黄昏ている桜川さんを想像しているうちに、その天使を乗せた電車はやってきた。

 ボクは軽く緊張する気持ちを抑え、深呼吸をする。

 そして、開いた扉の中にいたのは。


 紺色のフレアスカートに、白い七分袖の服に身を包んだ、桜川さんの姿だった。

 見るだけでも癒される、学校では見ることができない特別な桜川さんを見ることができて、それだけでも天に登れるような気分になった。


「あ、おはよう、舞園くん。」

「お、おはようございます。」

 中に入ったボクは、手招きに誘われて、桜川さんの横に座った。

 珍しく下ろした長くて栗色の髪からはシャンプーの香りがして、ボクの鼻をくすぐる。既にボクの理性は飛ぶ寸前。


 と、ここで桜川さんの一言がボクの意識を繋ぎ止めた。

「あれ、舞園くん、新品の服?」

「そうですけど?」

 桜川さんは、ボクの着ている、というか羽織っているチェック柄のシャツを小さく摘まむ。そして、控えめに言った。

「値札…」

「はい?」

「値札、ついてる…(笑)」

 …わ、わぁぁっ⁈な、そ、そんな馬鹿なっ!!

 ボクは盛大に驚き、羞恥心に襲い掛かられた。

「えっ、あっ、嘘っ!?と、とと、取ってくださいぃっ!!」

 涙ながらに必死にお願いし始めるボクに、桜川さんは「はいはい、仕方ないなあ。」と言って、ボクの方を向いた。

 恐る恐る、というように、彼女はボクの後ろの首元へ手を伸ばした。その手つきがゆっくり過ぎて、緊張するボクは少しばかり硬直してしまった。

 ボクの襟元が一瞬軽くなる。そして冷たいものが皮膚に軽く当たる。一瞬ひやっとしたが、その感覚もすぐになくなり、パチッと音がすると軽くなった襟元が再びボクの肩に乗った。

「はい、とれたよ。」

 桜川さんはとった値札を目の前に吊るし、じーっと見つめた。

「あ、ありがとうございます。」

 ボクは建前のようで本音な感謝の言葉を口にして、俯いた。

「へえ、ふむふむ…意外と高かったんだね、そのシャツ。」

 珍しいものを見たかのような反応をしている桜川さんに、ボクは顔を向ける。

「あ、う、いや、まあ…別に、桜川さんに合わせなきゃとか、思っていませんから…っ。」

「へえ、照れ隠しのつもり?全然照れ隠しになってないけど?むしろ、ツンデレでかわいいよ?」

「…え、え⁈そ、そんな、そんなつもりないですけどっ!?」

 いいものを見た、というようににやり、としてから、天使のような微笑みを浮かべ、わざとらしくボクに近づくように移動した。その度、ボクの服に彼女の髪がかかる。そして、ボクと桜川さんの間の距離は、どんどん縮まっていく。

 その近づく毎に、彼女の体温が感じられるようになっていく。

 そ、そろそろ止めてもらわなきゃ、ボクの理性が壊れていまいますよっ!

「あ、あの、桜川さん…そ、そろそろやめなきゃ…ぼ、ボクが壊れます…。」

「ん?何?もうギブ?べ、別に、良いじゃない、だって、デート、なんでしょう?」

 桜川さんはボク側にある右手を、ボクの手をめがけて進ませた。そして、指先で、ボクの指に小さく触れる。

「あ、あの…?」


「…な、なんでもないっ。とりあえず、もう駅に着くよ?」

 本当に悪いようなタイミングで、到着のアナウンスが鳴り響く。そしてボクらは、停車した電車から、ホームへと降り立った。


 これからが本番。

 ボクは息をのみ、桜川さんを一瞥する。

 ここからは、桜川さんのつくった大雑把な予定に合わせて行動するだけ。だから、心配はいらない。そう思ったとき、桜川さんが、言い放つ。

「ねえ、舞園くん。その、申し訳ないんだけど、私、今日の予定、作ってないの。だから、舞園くんに振り回される一日になるかなぁって…。」

「…え?よ、予定がない…?ボクが振り回す…?」

「うん。ってことで、今日は一日、よろしくね?」

 桜川さんの明るい笑みによって、明るくて楽しい一日のゴングが鳴った。



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