5,「ライバルの告白。」
今回は、告白された桜川さんのお話です。
部活の前に、彼女がころころ変わるけどイケメンな同学年の子に告白されたと本人から聞いた舞園くんは、少ししょげてしまう。
そんないつもの放課後です。
今日の桜川さんは、なにか満足げに部室に入ってきた。正直に言って、珍しすぎる。(その先の正直は言えない。)そんな桜川さんに、ボクは今日も何気ない質問から部活を始めるのだ。
「あ、桜川さん、何かいいことでもあったんですか?」
ある意味禁断の質問。それにルンルンになりながらも、桜川さんは素直に答えたのだ。
「うん、さっき、そこの廊下で隣の隣のクラスの子から告白されちゃってねー。ちょっとすっきりしたのっ」
「はぁ。…告白⁈そ、それって…?」
「ん、ああ、いつもの定番の。『好きです、俺と付き合ってください』的なノリのやつだけど?」
アニメやドラマだったなら、このあたりに大きく大カットを入れるのだろう。こんな感じに。
ライバル現る!
…そんな現実嫌だああぁぁ。
一人で悲しみに明け暮れているところを、桜川さんは楽しそうにくすくすと笑った。こんな一面も珍しいくらい見たことがない。
何かおかしい、とボクは思った。まさか、その告白してきた子が桜川さんの本命の子で、桜川さんはあっさりOKを出してしまったのだろうか。でも、桜川さんはそんなに軽々しく答えを出したりしない。だからといって、他にいいことなんて考えられない。ボクをそっちのけでそんな子とラブラブしてるなんて、悔しすぎる。
はあ、ボクを置いて行ったんですか、桜川さん…。
「とりあえず…おめでとうございます…。心の底からお祝いします…」
ボクはとりあえずの言葉を並べて、とりあえず桜川さんを祝福しようとした。その言葉を聞いて、彼女は阿呆面をした後に、大声で笑い始めた。
「…は?…くくっ、あはははっ、な、何言ってるのよっぷくっ、ば、バカじゃないのっ…あっはははっ」
「そ、そんなに笑うことじゃないですよっ⁈ぼ、ボクはただ単にお祝いの言葉を言っただけで!」
「そ、そうじゃなくて、その勘違いが面白かっただけ…(笑)」
桜川さんの反応にポカンとしているボクは、高らかに笑い声を上げる彼女に馬鹿にされている気分になった。
少しばかり、ボクは声を荒げた。
「だ、だったらなんなんですかっ!なにがあったんですかっ!」
「そ、それはね?」
ボクの言い方がきつかったらしく、桜川さんはやけに慎重になり始めた。
「あの、ちゃんと聞いてね?」
「はい。」
「私に告白してきた子、正直タイプでもなければ興味すらないの。だってしょっちゅう彼女変えてるような子だよ?そんな子に踊らされるほど私は馬鹿じゃないし」
真面目な顔をしながら、机に頬杖をつく桜川さんは、涼しげに言う。
「まず私、そんなにその子に絡んでないから。どうせ手を出しては捨てての繰り返しなんでしょ?だからふった。きっぱりと『あなたみたいな人で遊ぶような人が何言ってるの?』って言ってきたよ」
一理ある。そして、理解できる。彼女の説明と結果を聞いて、ほっとした。まだボクは捨てられたわけじゃない。
「それに…」
まだ付け加えるように、言葉を続けた。
「それに私は、こんなにかわいいモデルの子を放置しておくなんて、心配で到底無理だから」
それが、桜川さんが告白を断った最大の理由だったということなど、察するほど余裕はなかった。
「あ、あの…それは…」
「へ?あ、なんでもないよ?私の独り言だしっ」
強がるような彼女の言葉に、ボクは心を射抜かれたような感覚に見舞われた。
これから先、もっと彼女にのめりこんでしまうことになるなんて、思わなかったから。
ボクにはまだ、彼女に告白する勇気がない。