3,「気持ち。」
桜川さんが、部活に遅れるある春の日の部活中の、舞園勇輝くん。
いつも通りのはずなのに、かまってくれる桜川さんがいない。
そんな、さみしい舞園くんが、やっと自分の気持ちに気が付いた。
彼女がいないから、少し離れたその分、自分は何がほしいのか、何を自分が思ってるのか。それに、気付いてしまった。
さて、舞園くんは、何に気が付いた…?
次の日。
ボクはいつも通り、桜川さんの小説に付き合うために、文芸部の部室に訪れた。
空き教室を使っているボクらの部活は、部員数十人という、少し規模の小さい部活だが、実質五人だ。残りの五人は、幽霊部員である。たまにふらっとやってきて、ふらっと帰っていく。なんて気ままな部員なのだろう。出席率五十%の寂しい部の部長のボクの気持ちを考えてほしい。
今日も、いつものメンバーしかいなかった。ボクを含めて四人。
…ん?あれ?一人足りない?
教室を見渡して、いない人を確かめた。一年生一人、二年生二人、三年生一人…。
…あ、まさか、桜川さん?
どう見渡しても、あの特徴的なポニーテールのはね具合を頭の後頭部につけている子は、いなかった。少し理由が気になったボクは、読書中に失礼して二年生のショートカットの部員に、聞く。「あの、桜川さんを知ってる?」
ショートカット部員ちゃんは、おそらく桜川さんに渡されたのだろうメモ用紙を、読んでいた本の先頭ページから取り出した。
「桜川さんから、です…」
メモには、彼女らしい媚び字で、こう、書いてあった。
『部長、舞園勇輝君へ。
ごめんなさい、今日は学年委員の集まりがあって、部活には遅れます。
私が来るまでは、読書しててもいいけどね?
ちょっと急ぎで延長しちゃうかもしれないけど、モデルなんだからうずうずしながら待っててください。
まあ、来なかったらフラれたって思っても構わないけど。
そういうことです。
肩書きだけの副部長、桜川春子』
…納得。
そういえば桜川さんって、学級委員だったっけ。
成績優秀、超個性的、迂闊に手を出せば呑まれて元には戻れない。それでも、上に立つ派の人間。リーダーシップがあるのだ。
ボクですら、カッコいいと思う。(個性的なところさえ目を瞑ればだが。)
個性的、というのは、マイナス部分でさえ自分から言い張るところだろう。メモにもあるが、『肩書きだけの』とか、自分で「私って考え方が変なのよねー」とか、発言自体が珍しすぎる。わかっているなら自重すればいいのに。
そうすれば、少なくともクラスも半分の男子のハートは鷲掴み…。い、いや、待てよボク。そんなことになって困る、悲しむのは誰だ?
…ボクだろう?そうなってみろ、桜川さんの周りにはいろんな男子どもが野次馬のように集るに違いない。
そうすれば、優しい(?)桜川さんの元にはっきっとたくさんのデートの誘いが来る…。=ボクは構ってもらえなくなる。=ボクはどうでもいい。=ボクは邪魔で鬱陶しい…?
そんなの、絶対に嫌だ!ボクが今、桜川さんに一番近くて、一番親しい筈だから…ッ。
…放されたく、無い…。
あ、あれ?おかしいな、ボク、なんでこんなこと…。
桜川さんがいない日なんて、良くあることじゃないか。
だって彼女も元幽霊部員じゃないか。
しかも、今日はちょっと遅れるくらいだし。
だから、いつも通り
の、筈なのに…、
なんか、さみしい…。
無償に、彼女に会いたい。
あの意地悪な顔で笑ってほしい。
あのにやり、とした顔で、ボクを振り回してほしい。
なのに…
なんで、いないの…?
ずっと、ボクの脳裏に焼き付きそうなくらい、短時間でに見せられたあの微笑は、悲しそうにも見える。
なんで、今更…。なんで今更悲しそうに見えるの…?
桜川さんは、悲しくないでしょう?
…そっか。
ボクが、悲しいからか…。
で、でも、そう考えると、これはボクの自滅だよね…?
あ、あはは、やっぱり、ボクは馬鹿なんだ。
一人で大人しく、桜川さんがいつも座るはずの特等席に、ボクは座った。そうすると、ボクが落ち着くから。
そして、座ったことで、落ち着いたことで、
やっと、自分の気持ちが分かった、改めて、気づいたんだ。ボクの本心に。
ボクは、桜川さんが、好きなんだ。
ボクは、桜川さんに、かまってもらいたいんだ。
ボクは……ッ
その時、急に部室の扉がガラッと音を立てて、開いた。
そして、そこから入ってきたのは。
短時間だけど、ボクがずっと待っていた……
「桜川さん…ッ⁈」
…舞園くんが、リアルのモデルの子にそっくりになってきました。ありがとうございます、モデルの子。
これは、3と4にサブタイトルが分かれていますが、前半と後半という構成です。
長々と申し訳ありませんでした…っ。