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舞園勇輝の学園物語。  作者: 姫井 七海
1章「片思いの舞園勇輝。」
3/21

2,「振り回される舞園勇輝。」

舞園くんの短い放課後その1です。

  ------------------------------


 散々お願いを拒否した僕は結局、ギリギリのところで折れた。いや、僕が弱いわけじゃない、決して。

「…っていうか桜川さん、以前僕のことをネタにしたもの、書いてたじゃないですか。」

「それは人間観察。今回は改めてモデルになってって、頼んでるんじゃない。」

「誰が良いって言うと思う⁉」

「舞園くん。」

「…。」

 実際、桜川さんには、口では負ける、勝てるなど、一ミリたりとも思ってはいけない。

 頬を膨らませながら、何度も「おねがい」とねだる彼女に惹かれてしまうボクなのだが。


  -------------------------------

 

「なんて思うとでも思ったんですか⁉」

 試しに書いた彼女の媚び字が敷き詰められた原稿用紙を見て、悲しくなってきた。そもそものことを言えば、中学三年生にもなって「僕」なんて使う人いるんですか桜川さん。

「まず、『僕』って一人称なんて、需要少ないですよ。」

「確かにそうね。需要は低い。でも、使っている人はいる。それも、私の目の前に、ね?」

 桜川さんはお決まりのように、にやり、と笑う。そして、ボクに向けて指差した。

 人を指差すなんて酷いじゃないですか。

「私の調査によれば、『僕』を一人称に使っている子は、大半がヘタレよ?」

「それって桜川さんの調査データだけですよね?」

「まあ、そうね。」

「でも、それは一般的に見て、偏りのあるデータでは?」

 彼女は数秒間だけ、考えるように思考を巡らせてから、言う。

「だって、私の調査対象は一人だけだもん。」

 …それって…。

「誰か、とは言わないけどね。だって言ったら悲しむでしょう?」

「それ、ボクっていうことですか?」

 桜川さんは何も言わず、ただ満面の笑みを浮かべただけだった。それがどういう意味なのかは、ボクには察することができなかった。


「何しょげたような顔してるのよ。」


 耳のすぐそばで声がした。

 びくっとしたボクが顔を上げると、そこにはむすっとした桜川さんの顔があった。


「え、ああ、ええと…?」

「ああ、ごめんなさい。別に舞園くんのことを傷つけるつもりなんてなかったの。大丈夫、私は舞園くんをヘタレだなんて思ってなんかいないよ?」

「そ、そうですか…。」

「ただ単に、可愛いなって思っただけよ。」


…っえ、え、え…っ!?


 ボクを混乱させた彼女の言葉に、振り回されるボクだった。


 

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