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第69話 離脱

 パイプを使う習慣は北国で生まれたといわれている。冬の間に適当な葉っぱがないため、開発されたと言われている。俺は鞄に入れてきた本を千切って、煙草を吸った。青空に煙が消えていき、大空に願をかけているように見えただろう。

 さて、どうするか。

 大自然の森を越えて、魔物たちが集まっている半島へ行くのは決まっている。そこで俺は知り合いになったゴブリンのジノを頼ろうとしている。

 まずは、手紙を書くか……。

 俺はジノ宛ての文面を考えた。この世界の知識があるナユキに聞いてみると、半島にいる魔物の数は異常なほど増殖しているそうだ。魔物たちは同じ種族で徒党を組むはずなので、このまま進めば衝突の可能性は十分にある。その中にはゴブリンたちと対立している種族や、手を組んで助け合っている種族もいるはずだ。行軍を早めてしまえばゴブリンと手を組んでいる種族と衝突する恐れがある。

 道案内を頼もうかな。

「ですが、ゴブリンは得することあるんですか?」

 俺たちを助けるなら、当然見返りを欲しがるはずだ。

「半島の国王にさせてやる」

「期間限定ですか?」

「その通りだ」

 俺はハロハルハラにだけ内密に話をしていた。秘密は共有する人が少ないほど漏れづらくなる。俺が心底信用しているのは、ハロハルハラだけだった。

「手紙で案内役を呼ぶから、ハロが引き連れてくれ」

「あれ? プレスター様は何処へ?」

「ああ、俺は婚約者を連れてくる」

 けっ……と、ハロハルハラが呆れた顔をした。俺たちがいる場所から南へ行けば、大河を渡る橋のところまで行くことができる。半島へ行ってからでは、俺は自由に行動がしづらくなるので、この機会に連れて来たかった。

「危険では?」

「これから一生俺の側にいることになるんだ。そんなことを言ったら何もできないさ」

「まあ、私が率いるのは良いですが、当面の方針ぐらいは決めてくださいね」

「そうだな……。まずは、武装解除、そしてゴブリンたちの言うことを聞いて工事とかに従事していてくれ。念のために図面は保管しておいてくれ」

 力仕事をしていれば、肉体の弱体化が防ぐことが出来る。図面などは念のためだが、あれば使えることは使える。

「あとは?」

「半島の歴史を詳しく調べてくれ」

「歴史ですか?」

「ああ、それと宗教があるならそれも知りたい。種族ごとに別々の歴史や宗教があるなら、それも調べておいてくれ」

「うーん、分かりました」

 あまり納得していないようだが、調べておいてくれるだろう。

「あとは、時間を見てだが監獄に置いていった水蛇と金銀の確保に向いたいな」

「それもありましたね。金は力ですね」

 俺は事細かに指示を出して、囚人たちから離脱した。


 俺が一人になりたかったのは、レッドを迎えに行くためもあるけど、祖のためでもあった。彼女は俺から離れようとしている、そしてそれを唆している吸血鬼もいた。

 吸血鬼オセロは、俺の後をいつの間にかついて来ていた。いつからついて来たか知らなかったが、服装はあらたまり綺麗な格好をしていた。

 まるで、どこかの大使のような正装だった。

「お前は何者なんだ?」

「元々男だったのを、改造されて女になった。それをしたのは、吸血鬼の科学者だったんだよ。まあ、簡単に言うと親父だ。私はその後継者だ。つまり、私は吸血鬼の国の科学者……ということだよ」

 オセロは俺の肩を指先で撫でた。

「プレスター。君からは最初に会った時からアルカード様の匂いがしていたのには気付いていた。事実、君の体は成り上がりとアルカード様の混血だった。本来なら君を連れて行くべきなんだが、君の中には何故かもう一人いる。成り上がりに見られる現象だ。だが、君は紛い物の血が混ざっていたとしても吸血鬼の一員だ。転生をしたからかもしれないが、そういう例はあまり聞いた事が無いんだよ」

 オセロは静かな笑みを浮かべていた。

「君の中の女の人が君に執着があったからかも知れないけどね。それも気になるが、とにかく君の中にはアルカード様の血が濃く受け継がれている女の人がいる。私は彼女を次期国王として迎えたいのだよ」

「国王だと?」

「そうだ。アルカード様は寿命を迎えようとしている」

 ……何?

 不死者が寿命?

「私たちも最初は驚いたが、徐々に老衰が進んでいる。私たちが知らなかったのも無理が無いかも知れない、なにせ一番長生きしているのがアルカード様だ。私たち不死者は死んでしまえば、また別の体へ転生する。だが、寿命だとどうなるんだろうねぇ」

 もしかしたら天寿を全うするのかも知れなかった。

 そうすれば、二度と転生することも無いのだろう。

 分からないが、そんな気はした。

「できるなら安息のうちに逝ってもらいたい。そこで大事なのがプレスターの中にいる女の方だ。いつの時代か分かりませんが、親子の関係だったのでしょう。その娘と会えるとなれば、アルカード様も満足なさるでしょう」

 オセロの後ろから馬車が近づいてきた。黒い幕が開いて、暗闇の中に美しい女性の人形がいた。

「これが貴方様の新しい体です」

 俺の体はいつの間にか動かなくなっていた。

 すでに祖に体を操られていた。

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