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第44話 四辻

 コンクリートの打設が終わり、型枠を解体して、木の土台を組み立てて、コンクリートから飛び出たアンカーボルトを固定して、柱を木のホゾ穴に設置した。吸血鬼の力を使えば梁ぐらいなら持つことができるけど、木製のクレーンを作った。クレーンは滑車を動かすことで重い物を引き上げるもので、以前作った石垣の上に十分な大きさで作った。重さで転ばないように木の杭を打って固定した。クレーンによって色々なものを運ぶことができるようになり、建物の骨組みは日に日に進んで見違えるようだった。基本的には釘無しの継ぎ手で組み立てていき、木と木のかみ合わせの力で持たせるようにした。窓の無い壁には×の形――筋交いを使って耐力を持たせて強固にした。三階建てなので建て方と同時進行して、屋根の上に昇れるようにした。屋根を組んで、板を張り、外壁も張っていって、窓ガラスを嵌めこんだ。こうして建物の外と内側が明確に別れた。

 こうしている間に、吸血鬼のオセロは姿を消して、ヘドウィッグは戻って来ていた。一時期、建物造りを手伝っていたダルシャンとビィはヘドウィッグが戻ってきた時に、姿を消してどうやら襲撃作戦を練り始めているようだ。ユーリの奥さんはどんどん腹が大きくなり、水と蜂蜜酒を売って小銭を稼いでいた。


 どうした? 何を考えている。

 俺が屋根の上で昼寝をしていると、祖が話しかけてきた。

 建物も良い所まで終わったので、そろそろ次に行こうかと。

 ……ミナのことか?

 ミナ・ヴォルデンブルグ。俺の義母、育ての親、唯一の人だ。川原での乱戦の時に、彼女は帰り際に呟いた言葉があった。

 助けて、だ。

 彼女を殺しにいくのか?

 ええ、まあ。

 間違っていないだろう。不死者が助けてというのは……終わらせて欲しいという意味だ。

 何となくやり方は分かっているので。

 聖遺物のことだろう?

 この建物を掘っている時に見つけた聖遺物だ。俺にはまったく効かなかったが、この世界の人間にとっては名のある聖遺物だ。この世界のみで生まれて育っているなら、あのトゲは必ず効くはずだ。

 お前が死んだ時のようにな。

 ……俺が死んだ理由を知っているのか?

 お前の中の私は、本物の私と繋がっている、それで分かった。お前は聖遺物によって、あの世界から消失させられた。異世界に転生しまったのは、あちらの世界から拒絶させられたからかも知れないな。

 ミナをこれで殺せば、少なくともこちらの世界から消し去ることができるのか。

 縁による因果応報からは開放されるかもしれないな。

 俺は開放されていないけど。

 吸血鬼はまた別だ。


「ご飯だぞ」

 ユーリが下から呼んだので、竹の足場から下まで降りた。レッドとバロンは一緒に学校へ行っているので、ほとんどの作業は俺とユーリでしている。だがクレーンも作って、ここまで完成したので、完全に完了するのも時間の問題だった。俺はいつも通りにチーズを食べていると、ユーリが横に腰掛けてきた。俺たちは二人っきりになって話し始めた。

「前から話したかったんだが、俺はバロンが喋ることを知っている」

 バロンがユニコーンであることを知っていたようだ。

「バロンは俺が知っているのを知らないと思う。教えてくれたのは、アルルがこの前来た時だ。何かあったらバロンが教えてくれると言っていたが、きちんと伝えていなかったんだろうな。あいつは何も話してくれない。君は何か知っているのか?」

 俺は黙りながら、本当のことを話そうとした。

「すまない。変なことを言ってしまって。君が知っているはず無いよな」

 俺は話せなかった。話してしまえば、全てが終わってしまう気がしたからだ。

 しばらくの沈黙の後、俺は切り出した。

「この前、ここで見つかったトゲがあるじゃないですか。あれを売ってくれませんか?」

「あれは……ダルシャンに売ってしまったよ」


 たまたまダルシャンが見つけて、買い取ったそうだ。随分と良い金だったし、売る機会も無いので簡単に手放した。ダルシャンがそれを何に使うかは明白だ。ヘドウィッグも不死者だ。この世界由来の聖遺物を心臓にくらえば、死んでしまうだろう。

 レッドを迎えに行った後に、少し伸びた髪を切ってもらった。手で払って髪を落として、湧き水で体を清めた。全財産を掘り起こして、必要な分だけ貰って、その他は全部レッドへ預けた。

「……今のうちに分けておくから」

「やだなぁ……」

 我侭を言うかと思ったら、素直だった。

「ダルシャンがヘドウィッグを再び襲撃する」

「うん」

「俺の戦いではないから、それについては静観するが、ダルシャンの持っているトゲに用がある。この前、ユーリの家で見つけたトゲだ」

「あれだね。わかるよ」

「俺はあのトゲを持って、母親を殺しに行く」

「……大丈夫なの?」

「それを彼女が望むなら、俺は平気だ」

 レッドは俺を抱きしめてくれた。

「平気じゃないよね」

「ああ、嘘ついた」

 復讐心は鎮火しつつあった。俺は故郷の村が好きだったけど、本当に好きだったのはミナだ。ミナがいればそれで良かった。ミナが魂の救済を望むなら、俺はそれを手伝おう。

 そして、これが終わったら、次へ行こう。

 破壊ではなく、創造の種をまこう。

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