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第42話 基礎

「では、コンクリートの説明をするぞ」

 いつも通りに、生徒のレッドがパチパチと拍手した。

 先生は生徒の反応を欲しがっているものである。

 俺は最初から勢いついて話すことができた。

「まず基本的な事から、コンクリートはセメント、水、砂、砂利で構成されています。砂と砂利を骨材とも言い、セメントと水はペーストといいます。骨材同士を接着するのをペーストと言います。ちなみに、セメントの成分はカルシウムを除くと、地殻の構成比率と似ていて、世界各地で採集できるため、あらゆる場所で作ることのできる便利な材料と言われています。なので重量の単位が合致していて、配合比率さえ分かっていれば、世界各地でほぼ同じ性能のコンクリートが作ることができます」

「ちょいちょい知らない単語が出てきて良くわかりません!」

 レッドが細かい色々聞いてきたので、俺は分かりやすいように答えてあげて、次に進んだ。

「コンクリートの品質を確認するために、スランプ値というのを計るんだけど、これは詳しく話しても意味が分からないと思う。少しだけ説明すると、今回は普通の建物と比べてスランプ値が小さいものを使うことにします。スランプ値が小さいほど固くて、強度が高いとでも思ってください」

「へー」

「ちなみに軟らかい固まる前のコンクリートのことを生コンというけど、この時に水を加えることは厳禁だよ」

「なんで?」

「コンクリートが固まる時に、水が浮き出てくるから、乾燥して固まると勘違いしている人がたまにいるけど、コンクリートは化学変化で固まるから、加水することは配合を変えることになるから脆弱性が出てくるようになる」

「加水する意味が無いような……」

「この基礎は無筋コンクリートだから、簡単にコンクリートが入るけど、鉄筋を組むと打設時に施工しづらい、もしくは施工ができなくなる時があります。そういう時に加水して軟らかくするのですが、これは法律違反なので気をつけてください」

「ほえー」

「ただ、打設前に打つ場所に水を撒きます。打つ場所と言うのは型枠内ですね。この場合は水を撒きます」

「何でですか?」

「この散水はコンクリートに加水するように思えるかもしれませんが違います。打設前散水は型枠等を濡らすことで、コンクリートの水分が型枠に吸込まれないようにします。水分がなくなることでコンクリートが脆弱になるのを防ぎます。特に仕上がりの面で水分がとられて綺麗な仕上がりにならない場合が多いので注意してください」

「うわー、色々あってよく分からないよー」

「まあ、とにかく、実施してみましょう」


 まずは、水を汲んできて型枠内に水を撒いた。打設の速度が遅い、気温が高いとすぐに乾いてしまうので、乾いていないか確認しながら打設することにした。

 打設時は同時進行でコンクリートを練り続ける。バロンがミキサーを回し続けられるように、歯車を使った工作をして木の台の上を歩けばミキサーが回転するようにした。

 練り終わったコンクリートは金属の滑り台――シューターで型枠内まで滑らせる。高いところから落とすとコンクリートが分離してしまうので出来るだけ低く打って、打っている最中は型枠を木槌で軽くたたき、竹の棒でコンクリートを突き続けた。振動を加える事で、コンクリートが行き渡り、仕上がりが綺麗になります。

 建物は広いので、ミキサーを順次移動させながら、コンクリートが固まる前に次々に打っていきます。コンクリートはしばらくすると固まり始めるので、コンクリートを立ち上げる部分以外は鏝を何回かかけて綺麗に仕上げます。この作業は俺以外したことが無いようなので、靴の下に木の板を結びつけて上に乗り、鼻歌と共に撫で付けた。固まるにつれて余分な水が浮き上がってくるが、欲しい物も抜けすぎないように押さえつけるという意味もある。

 全員汗を流して疲れている。俺とバロンの他に、レッド、ユーリ、ダルシャン、ビィとほぼ全員で働いているが、俺とバロン以外は順次休みながら働いている。

 俺のコキ使われっぷりが半端無い件。

 まあ、良いか。


 俺のしている仕事は左官屋の仕事だ。もしも、ここが仕上げの必要な場所なら土間専門の左官屋の仕事だ。普通の左官屋と違って、土間屋はかなりの重労働であり、現代の闇である。朝は早く、昼も食えずに、深夜まで働き、車の中で寝泊りする。地方都市では大きな建物の三割は「俺たちが仕上げた」と言うほどに、人数が少なく色んな場所で仕事をして、誰もがやりたがらない仕事である。労働基準監督署としても彼らを救おうとしたら工事現場が成り立たないのを知っているのだろう。完全無視である。

 頑張れ、土間屋!

 お前たちの犠牲で俺達は建物を建てることができる。

 ……関係ない話をし過ぎたようだ。話を戻そう。


 俺は一仕事を終えて、レッドに授業した。

「コンクリートの打ち継ぐ、打ち重ねる部分は脆弱になるので、荷重がかかる場所は避けます。だが、床の部分と立ち上がる部分のコンクリートの打設する時期があくので、このままだと脆弱になる。だから、打ち重ねる部分にこれを塗ります」

「……油」

「そうです。油はコンクリートの遅延剤となり、塗って置けば他の部分が固まって強度がでても、塗った部分だけは強度が出るのが遅くなります。強度が弱いうちに、骨材が露出するまで削ります。こうすれば、時間差があっても一体化することができる。実際にこういう処置をしておかないと、コンクリートの間を水が通ったりして、漏水事件が起きたりするんだよね」

 現代では遅延剤と呼ばれる調合された液体が存在するが、古代では油を使って打ち継ぎ面を処理していた。古代からある建物の漏水が少ないのも、このような細かな仕事を行っていた賜物だろう。

 レッドは該当箇所に刷毛で油を塗って歩いた。


「ふー、とりあえず今日の部分は終了かな」


 終了したけど、立ち上がりの部分を一緒に語ったほうが良い気がするので、後日の話もまとめてすることにした。

 コンクリートは打設後にも水を欲するので、常に濡れているように水をかけた。化学変化して硬化するのに必要だし、水によって適温を保つことが可能だ。コンクリートがひび割れするのは水不足か温度が原因だ。二つの原因を水によって予防することが可能だ。

 俺は立ち上がらせる部分を削って、コンクリート屑を掃除して、内側の型枠を建てこんだ。墨で線を描いた部分から距離を追い出して、内部の束となる部分にも型枠を設置した。コンクリートと木を接続するための金属の棒――アンカーボルトをつけるために、型枠の内と外に木を渡して、コンクリートを打っても動かないように固定した。

 再びコンクリートを打設する段階になり、大人数で打設した。この段階でも、アンカーボルトが動かないように注意する。一度固まってしまったら、後から手直しするのが大変だからだ。


「という訳で、今度こそ終わった」

 俺とバロンが死ぬほど働いた気がするが、まあ良いだろう。ダルシャンもビィにも手伝ってもらったので、なんとか失敗せずに終わることができた。

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