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第16話 推理

 故郷の焼けた家から集めた銅貨には手をつけられていなかった。結構重いのもあるけど、見た目が悪いので銅と分からなかったのかも知れない。それにしても、あの大金に手をつけるなんて盗んだほうもアホだ。あんな大金盗まれたら、絶対に犯人探しを諦めない。

 予想はだいたいついている。

 隠し扉か通路がある。日本の推理小説の中には建物を使った推理小説が多いが、隠し扉や通路が使われていたことはあった。イギリスの貴族の部屋で、使用人用の扉と通路があって驚いたことがある。彼等の中には姿を見せてはいけない使用人のために作られたものだ。

 俺は部屋を見渡して、隙間が無いのを確認した。老いたゴブリンは可哀想なことに、部屋に幽閉されて警察が来るまで捕まってしまっている。食事を取っている時間がほとんど同じだったのでゴブリンは無実なのは分かるが、どういう訳か盗まれた時計がゴブリンの部屋にあったそうだ。

「そんなことより眠ろうよ」

「先に寝ていてくれ」

 レッドはベッドに寝る前に、服を全部脱いで入った。ベッドにはノミがついているようなので、服に移らないように壁にかけている。西洋人が全裸で寝る習慣は、レッドと同じように服にノミがつかないようにしたことからだと言われている。

「枕を濡らして待っているわー」

「おとなしく寝ていろ」

「イケズッ!」

「金が無ければ旅がしづらい」

 俺は天井を見て、壁を見た。見ただけでは分からなかったので、手で壁を叩いてみた。どこも同じ音がしていたので、後ろに抜け穴がある訳ではないようだ。俺は椅子を使って天井を手当たり次第に調べてみた。すると、小さな棚の上の天井が上がった。かなり細かい工作がされていて、押し上げてみないと上がるとは思えないほどだった。天井を上げて、天井裏に上ってみると、やっと合点がついた。見渡す限りに壁は無くて、階全体に天井が広がっていた。普通なら部屋ごとに壁が上の階の床まで伸びていて、天井は壁にぶつかるように張られているが、この建物は天井が先につけられていて、天井にぶつけるように壁が張られていた。

 つまり、天井裏を這って行けば、どこの部屋の上にも行けるということだ。俺は天井を這いながら、別の部屋の上に行ったり来たりした。盗んだ誰かはこれを利用してゴブリンの部屋に時計を置いたのだろう。

 すると建物の角に穴があった。上下階に貫いて梯子ハシゴがかかっており、下へ通じる仕掛けになっていた。降りていくと各階の天井裏に行けるようになっている。俺は滑るように梯子を降りると、たどり着いた先は地下室だった。そこには金目の物が詰まれており、宿屋の主人が種類ごとに分別していた。

「おい」

「なっ」

 主人の首を絞めて意識を落として、尻を蹴り上げて、少ない髪を毟り取って、口に突っ込んでやった。上に行く階段を昇って、盗まれた人たちに種明かしをした。泊まっていた人たちは全員何かしらを盗まれていたようで、各々盗品を取り返していった。幽閉されていたゴブリンも盗まれていたようで、大きな巻物を取り返していた。全員が取り返しても金目のものは残っていた。仕事代金として、金時計を取って、俺は部屋へ戻った。レッドは寝息をたてて眠っていて、俺も服を脱いでベッドへ入った。男女だったが十歳なので裸同士でも大丈夫だろう。

 ……多分。

 朝早くに扉が叩かれた。レッドも起きて、一緒に服を着て、訪問者を部屋に入れた。


 老いたゴブリンは、頭を下げてお礼を言ってきたが、俺は謝礼の金時計を見せた。すると、崩れた笑い顔を浮かべて、声を出して笑っていた。

「しかし……ゴブリンがどうして人間の国に?」

「実は人間の技術を学ぶ旅でして、各地を回っているんですよ」

 ゴブリンはジノと名乗り、大きな地図を広げた。そこは半島の形をしており、自然に包まれた場所だった。どこかで見たことがあるような気がするが、しばらく考えていると分かった。北にいき、海を越えた先にある半島だった。

「ここが私の故郷です。私はここに国を作ろうと思います」

「国?」

「はい、近年加速しているのですが、この場所は人間に追われた魔物たちが集まる場所となっています。私たちゴブリンは昔からここで静かに暮らしていたのですが、魔物が増えるに連れて色々な問題が起き始めました。その為、人間と同じような国家を作ろうではないか――という機運が高まっているのです」

 ジノは地図を戻そうとしたが、もう少し話を聞いてみたかった。

「この場所に都市を作るの?」

「そうです。分かりますか」

「いや、唯一の平地だから、ここに建てるのが道理かと思っただけだよ。それに川が近いからね。物を運ぶのにも楽だ」

「しかし、そこは湿地なのです。だから、私たちは山の上に城を作ろうかと思っています。」

「湿地なら、排水をすれば良い」

 俺は地図の上に指を這わせて、川へ直角に線を描いた。

「川の近くにある湿地なんだから、川が氾濫して湿地帯になっているんだろ。大地をかさ上げするのも大事だけど、湿地のままで嵩上げしたら地面が緩くなってしまう。排水と同時に盛り土をする必要があるだろうね。排水路の材料はコンクリートか煉瓦か石が必要になるね」

「……湿地帯の開拓はするつもりは」

「防御するだけなら山に作るのもありだと思うけど、物の運搬の苦労は川よりも陸のほうが倍以上にあるんだよ。大事な拠点を山の上に作る考えは良いと思うけど、都市に暮らす人々のことを考えたら、この湿地帯を開発するほうが良い――と俺は思うよ」

 ユーラシア大陸は地続きだけど、大航海時代には香辛料の運搬は海上が支配した。海上運搬の苦労が一だとすると、陸上運搬の苦労は二十八と言われている。川での運搬は五ぐらいだと言われているので、それでも陸よりは簡単に荷を運ぶことができる。

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