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第105話 坑道戦

 ゴブリン王はEater達と共同で、俺――フィオナ軍とハロハルハラ軍を撃滅しようとしたが、俺たちの急転進を予想していなかった。俺達はEater達から逃げながら戦い、ゴブリン王の所まで一気に攻め入ろうとしたため、ゴブリン王は慌てて城門を閉じた。

 篭城――城内と外が分断されるに至った。

 城内には多くの兵士たちが立て篭もっているが、兵士たちの家族や一般人たちは城外に排除された。困ったことに、食料は城内に移動させられていたため、俺達は僅かな食料を頼りに民衆たちを守らなければならなかった。

 仕方が無いことだ。

 兵糧が少なくなろうとも、国は民衆のためにある。当然、国は民を守らなければならない。だが、それは真実の片側だけしか見ていないけど……。

 国のために民衆は居る――それもまた真実。

 それは相互依存した関係、左右の車輪のような関係は良好を保ち続けなければならない。ゴブリン王は国のために動いているが、バランスを崩しすぎている。崩壊はすぐそこまで迫っているが、俺たちには時が無かった。

 ハロハルハラが合流するのを待っていては、状況はどんどん悪くなる。ゴブリン達は攻めてこないが、問題は後ろからゲリラ活動を続けているEater達だった。

 俺は久し振りに後悔していた。

 九頭竜くとるぅを完全に殺しておけば良かった。

 いや……殺しても、この状況は防げなかったかも知れない。

 Eaterたちは俺達を襲ってくるだけではなく、食った物達に変身することができる。それが恐ろしいものと分かるのに一日もかからなかった。

 ある目撃証言によると、Eaterたちの能力の負の面もあるそうだ。Eaterたちがある一家を襲ったときのことだ。

 一家を殺し、成人前の男を食い、その男となり、家族が死んだことを号泣する。自らが殺して、殺した男に変身して、止め処なく涙を流す。

 Eaterとはそう言う生物だ。

 勝手に悲しめ、馬鹿! と言いたい所だが、瓜二つに変身されたら、家族ですら相手が本物か嘘かも分からなくなってしまう。戦いが進めば進むほどに、疑心暗鬼が進み、どんどん状況が悪化してしまう。

 だから、早期決着しかない。


 ……うへへへっ。

 楽しいなぁー楽しいなぁー。

「殺意がぴょんぴょんするのー!」

 もー、逆境って、大、好、物っ!


 鶴嘴ツルハシを持ち、最前線へ爆走していると、フィオナが縋りつく民衆たちに語りかけていた。堂に入った態度は器の大きさを感じさせ、本物の現人神のように神々しかった。堂々とした態度はレッドも劣らないが、フィオナの神々しさは夜空を輝かす円い月のようだった。

 人には決まった器がある。

 たまたまフィオナの器は大きいものがあったのだ。

 神すら入る器は俺には無かった。

「あっ、オジさん」

 フィオナは民衆達を連れながら、俺の所まで歩いてきた。

 民衆たちは俺を恐れながら、尊敬した眼で見つめていた。

 これが俺の器の限界だろう。俺は武人である。軍に匹敵する単独の武力も、その器は武人としての形にしかなっていないのだろう。

「どこに行くの?」

「ちょいと、そこまで」

 俺はゴブリン王が引きこもっている城を指差した。

「えっ、どうするの?」

 俺はフィオナの取り巻きを睨んで、フィオナを担いでぴょーんと跳んだ。屋根に上り、屋根を足場にして跳び、アイビーの真後ろに降りた。

「ぎゃっ!」

「驚いたか」

 アイビーにカンチョウして悶絶させ、地面に絵を書いた。城壁を描き、壁の左右に地面を引いて、右側の地面の下に暗渠を書いた。」

「暗渠を使って内側に入ろうとしたが失敗した。だが」

 俺は暗渠の下から穴を延ばして、城壁の内側まで線を引いた。

「穴を掘って侵入するの?」

「それもあるけど、城壁の下側まで掘って、城壁を下側から木で支える」

「支える?」

「そう、穴をどんどん広げて、城壁を土ではなく木で支える」

「……それを壊すの?」

「ああ、普通だったら燃やす。そうすると、支えがなくなり、一気に城壁に損傷を与えることができる。上手くいけば倒壊だ」

「へー」

「でも、そんな暇は無いから、一気に侵入したいな。相手もそれを狙ってくると考えられるから、対抗坑道を掘ってくるとは思うが」

「相手も穴を掘って来るんだ」

「ああ、城壁を崩されたら終わりだろ。相手も穴を掘って、一番奥に水を入れた鉢とか置いてさ。さざなみが立つのを見て、相手が近くにいるかどうかを確認するんだ。あとは妨害してくるんだけど……逆にそれは狙い目だ」

「なんで?」

「坑道の半分を掘る必要が無くなるだろ」


 ほーれーほーれーほーれー。

 ○○掘れ、×××××……。

 お前の父ちゃん、×××××……。

 夜な夜な不気味は声が響いていた。

 残念ながら男社会は卑猥が満載なのだ。

 俺とドワーフ達は婦人たちが飽きれるような低レベルのシモネタを連呼しながら、どんどん坑道を掘り続けていた。穴は一つだけではなく、どんどん数を増やして、俺は寝ないで掘りまくっていた。

 眠い。

 超眠い。

 殺意もぴょんぴょんしなくなってきた。

 その時、風を感じた。

「ぐがあああああっ」

 鶴嘴ツルハシが岩壁を砕き、いつの間にかゴブリンが鶴嘴でめった刺しになっていた。おや……坑道が繋がった。ん? 繋がったと言う事は……。

 目の前のゴブリンたちが慌てふためいていた。

 後ろの味方が「敵だ! 剣を抜け!」

「アホ! 剣は抜くな」

 穴の中では剣は自由に振れない。

「徒手空拳で殺せ。俺に続け!」

 俺は目の前のゴブリンを殴り倒して、穴を突き進んだ。

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