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夜桜

作者: 柊 潤一

 僕たちは、気の合った友人同士集まって、バーベキューで花見をしていた。 

 そこは神社の公園で、毎年、桜の花咲く頃になると、そこかしこの満開の桜

 の木の下で宴会が開かれていた。

 メンバーは男四人女四人の総勢八人だったが、僕ともう一人の男が彼女連

 れで、他の男二人は彼女がおらず、僕の彼女ともう一人の男の彼女が、友人

 の女の子を連れてきているのだった。 

 この花見は、それぞれ彼氏彼女のいない友人に、お相手を紹介しようと云

 う含みもあったのだ。

 昼前から肉を焼き、酒を飲みながらわいわいと過ごしてきた花見がはや夕

 暮れとなり、艶やかだった桜がライトアップされて、妖艶な雰囲気をかもし

 出していた。

 それにつられてか、誰かが桜の木の下には死人がいて、花の咲く時期にな

 ると夜な夜な花見に出てくるという話をしてから心霊スポットの話になり、

 一通り幽霊話が出た後で一人が話し出した。

「あぁ、そう云えばさ。」

 みなは聞き耳を立てた。

「〇〇の交差点に銀行があるだろ?横が地下鉄の入り口になってるとこ

 ろ。」

 彼が言った場所は、市内の中心街を南北に貫く片側四車線の道路と、東西

 を貫く三車線の道路の交差点にある銀行だった。

 そこは高台になっていて、緩やかに下っている西への道を歩いていく

 と、おもちゃの問屋が軒を連ねる、南北の広い※※※筋に出るのだった。

 その銀行から、※※※筋へは大人が歩いても二十分ほどかかり、子供の足では三十分以上かかる距離だった。

「俺が小学校のときはあの銀行の前の道も狭くてさ、あそこに誰も住んでない古い家があったんだよな。」

「それってお前、あの時のことか?」

「あれ?お前もいたっけ?」

「いたさぁ。あの時の事は今でもはっきり覚えてるなぁ。」

 女の子達が、なになに?と、興味津々で身を乗り出してきた。

「いやな・・・・。」

 彼は話を続けた。

「小学校三年位の時かな?その家に探検に行こうって事になってさ。」

 僕は、小学校の時は彼とは交友はなかったが、その家の事は覚えていた。

 大きな家で庭があり、家の南側に長い階段があった。

 そのあたり一帯は、戦争で焼け残った家が多く、都会のど真ん中なのにいまだに長屋が残っている場所だった。

その階段を下りると、右側に大通りの家の裏口があり、左側には長屋の入り口が並んでいた。

階段を下りて振り返るとその古い家の二階の窓が上の方に見えていた。

「友達三人と行ったんだよ。お前とあと一人は誰だっけ?」

「もう忘れたなぁ・・・。」

一緒にその家に行ったもう一人の男が答えた。

「そうだよな。俺も忘れてるもんな。」

「それで、どうなったのよ。」

女の子達が話をせかせた。

「それでさぁ、三人で中に入ったんだよ。」

彼は語りだした。

みんな無言で聞き入った。

ー門は鍵が閉まってたから入れなくて、みなで塀を乗り越えたんだ。

中に入ると左が庭になってて、正面に玄関があって、その玄関には鍵がかかってなかったから、そこから家の中に入ったんだよ。

中に入ったら、埃だらけだったけど、それほど荒れてもなくてさ。

僕たちは一階を見てまわって何もなかったから二階へ上がったんだよ。

階段を上ると板の間があって襖があったんだよな。

それでその襖を開けたら畳の部屋で・・・・。

子供だったからかも知れないけど、結構広かったな。

で、向こうの方に襖があるんだよ。

俺たちは中に入ってその襖を開けたんだ。

そしたら、同じような部屋で、又向こうの方に襖があるんだよ。

その襖を開けて中に入ると、又同じような部屋で、又襖があるんだよ。

俺たちはどんどん襖を開けて行ったんだ。

で、突然窓のある部屋に出たんだ。

お、やっと最後の部屋に来た、と思って窓から外を見たんだよ。

そしたら窓の下に☓☓☓筋が見えてて、玩具の店で働いてる人とかが見えたんだよな。

俺たちは、なんだ、☓☓☓筋じゃないかって言いながら引き返しかけたんだ。

そしたらさ、誰かが、こっちにも襖があるよ、行ってみようって言ったんだ。

誰かなと思ったら寺田って言うやつだったんだよな。

三人で中に入ったのに、いつの間にかそいつがいたんだよ。

寺田って奴は勉強が出来てさぁ、俺たちも一目置いてたけど、俺たちと一緒に遊ぶような奴じゃなかったんだぜ。

それがこんな場所にいるんだから、俺たちは変に思ってさ、いやもう帰るから行かない、って言ったんだよな。

寺田は、いいじゃん、行こうよぉ、って言って襖を開けて中に入っていったんだよ。

俺たちは怖くなって、そのまま帰ってきたんだけどな。

でさ、外に出て階段を下りて振り返って見上げたら、その家の窓が見えたんだ。

あぁ、さっきはあの窓から見てたんだな、と思って気が付いたんだよ。

どう考えたってあの窓からは☓☓☓筋があんなに近くに見える筈はないんだ。

そもそも、かなり距離があるし、家が邪魔になって遠目でも☓☓☓筋自体が見えないんだよな。

俺たちは、ぞぞぉっと背筋が寒くなってさ、走って家まで帰ったよ。

それで次に日に学校で三人集まって、寺田に聞いたんだ。

お前、昨日なんであんなところにいたんだよ?って。

そしたら寺田は、何のことだ?って言うんだ。

俺たちが昨日のことを説明すると、僕はそんな所には行ってないよ、って言うんだよ。

じゃあ、あれは一体誰だったんだ?って、三人で又怖くなってさ。

あのまま一緒に襖の向こうに行ったらどこに連れて行かれたんだろう?ってさ。

その家はいつの間にか取り壊されててなくなってたけど。

みんなどう思う?

あれは一体なんだったんだろうな?









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