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お久しぶりです

「っ!?…ここは……」


突如、馴れ親しんだ執務室から膨大な魔力による力任せな強制転移によって全体が石造りのデカっ広い部屋に飛ばされた。


この部屋は床に複雑かつ巨大な魔法陣が描かれ、陣を囲むように配置されている燭台の灯りだけが照明の為にかなり薄暗い。


喚ばれた俺の他に、壁際に立つ数十名の今ではファンタジーの世界ぐらいにしか登場しない槍と鎖帷子ていう日本人が持つ中世ヨーロッパ感みたいな武装をしている兵隊らしき連中に、この薄暗い部屋の中でもハッキリ分かる位に存在感を放つ、所々覗く白い肌に対して全身を黒一色で統一している目が覚める様なロ…美少女がいた。


「ようこそいらっしゃいました勇者様。この様な形で御喚び立てしまい申し訳ありませ…ひゃああああああっっっ!?」


だがしかし、いくら美少女とはいえその少女が俺を確認し、型に嵌まった様な言い回しで俺を誘拐した犯人と自供したなら、拉致被害者な俺が魔力を固め創った大太刀を思わず少女の首元に突き出し悲鳴を上げさせても許されるだろう。


大太刀を突き付ける同時に壁際で周りを固めていた兵が殺気立って身構えるが、手出しはしてこない。


太刀を少し前に突き出せば少女の首に刃が突き刺さる状況では手は出せないだろう。


やはりこの少女が俺を拉致った張本人、違っても責任者な立ち位地には間違いない。


太刀を突きつけられただけでプルプルと震えてる辺りこういう修羅場はあまり縁が無さそうなだ。


現場ではなく研究を主にしてる術者なのかもしれない。


「いきなり人様をこんな力ずくで拐いやがって。戦隊連中でも捕捉出来なかった居城の、しかも俺の執務室の座標をどんな手段で特定した?」


俺が知る限り、こういう転移魔法は大概対象の座標を知ってなければ使えない。


なのに拉致られたってことは、居城の位置もその内部構造も知られてる可能性は高い。


流石にこれは見逃せない。


「そんな格好にあんな膨大な魔力を使う魔法を用意出来るって事はお前等欧州の魔術結社か?どんな思惑があるかは知らねいが、手を出す相手を間違えたな」


「ちょ、ちょっと待って下さい!何か誤解があるみたいですが私達はその、オウシュウノマジュツケッシャとか言うのじゃありません!」


「違うなら、じゃあ何だってんだ?」


「私はユーグベルツ王国の神子で、他の皆さんは私と勇者様を護衛して下さる近衛隊の皆さんです」


「ユーグベルツ王国?」


まるっきり聞いたことがない。


主の目的の為に、幹部として改造された際に一通りの裏側に属する影の知識、古今東西様々な魔術や武術とかと一緒に植え付けられたりもしたが、その中にもそんな国の知識なぞ全くが無い。


それにさっきはわざと聞き流したが今また変な事を言ってたな。


「そんな国聞いた事を無いな。それに勇者だと?んなもん何処にいるってんだ」


「ですから、先程…」


「いや待て言うな、嫌な予感しかしない」


「とおっしゃられても、勇者様に事情をご説明して協力のお願いをするのが私の役目なので一気に言います。実は数百年前に古神によって封印されていた魔王が復活し世界と神々の繋がりを薄めたうえで配下となる魔族を率いて私達人間や亜人種達に宣戦布告を行うと同時に数々の国に攻め込み滅ぼしていきましたこのままでは魔王によって人間という種族が滅ぼされてしまうのも時間の問題と考えた我が国は国宝たる聖遺物を媒体として救世の儀を行う事で勇者召喚の奇跡を神々に願う事を決め闇の巫女たる私と光の巫女の二人でそれぞれ救世の儀を行いましたそして闇の勇者として召喚されたのが貴方様となります」


「コイツ息継ぎもせずに一気に説明しやがった……!!」


「この様な無礼が許されるとは思ってはいません。ですが、それをせざる得ない程に人間種族は追い詰められているのです。勿論勇者様が不自由なされない様に全ての衣食住は我が国が保障しますし、魔王を討ち果たした暁には、元に戻った神々の御力を借り元の世界への帰還をお約束すると同時に、全ての人間種族の国家を上げて勇者様が望む報酬を可能な限り用意する事を全国家から了承を受けています。ですから、どうかそのお力をお貸し下さい」


初めの怯えっぷりが嘘の様に真っ直ぐと俺の眼を見つめる巫女を名乗った少女。


それでもまだ微かに震えてるのを見る限り怖くないという訳でもないだろうに、義務感なのか責任感なのかは知らないが大したもんだ。


そのやる気をウチの幹部二人にも分けて欲しい。


「確認するが、魔王を倒す以外に俺を還す手段はあるか?」


「…………申し訳ありませんが、その様な手段は少なくとも私が識る範囲では存在しません。此度の召喚も、弱まっている神々の恩恵を補う為に聖遺物を消費して行いました。なので、現在ユーグベルツ王国では帰還の為の儀を行う手段は無く、他の国ではそもそも儀式を行える人材がいません」


「そうか」


少なくとも嘘をついてる眼ではいないか。


《スカウトマン》辺りなら躰を流れる魔力の流れだとかで嘘を判別出来そうだが、いない奴の事を言ってもしょうがないか。


ここで巫女を叩き斬っても意味は無さそうだし、ここは悪の組織の幹部には似合わないが大人の対応で流しながら帰還方法を探す……


いや待て、そもそも帰還するって考えが間違ってはいないか?


戻っても待っているのはブラック企業顔負けの事務仕事とクソみたいな同僚が二人に話の上でしか知らない『主』。


冷静に考えたら、元の世界への未練何てそれこそ週刊漫画の続きが気になる程度しかない。


魔王退治にしたって大人しく従ってやる必要もないし、あの話からするともう一人巫女がいてソイツも勇者召喚を行ってるんだ。


ソイツに役割を全部押し付けて第三の人生ってのを始めるのもアリなのでは?


「あの、勇者様……?どうかされましたか?」


「ん?ああ、考え事をしてただけだ」


というか太刀を突きつけてたままだったな。


何か真剣モードが切れたのかまたプルプルしてるし。


…………なんか可哀想な気がしてきた。


今更な気もするけど、取りあえずは好意的にするかな。


「そっちの事情は分かった。何にしろ、ここでどうこう言っててもしょうがない。責任者……、国王と話を付けるから案内しろ」







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