1-11 元引きこもりは自分の才能に驚く
「今日はこれで終わりにしましょう」
ラストが笑みを浮かべ、終了を告げる。
火照った感じでどこか妖艶な雰囲気があった。
「あぁ、疲れた」
椅子に座り込み、大きく息を吐く。
何度も魔力を流したことでだいぶ慣れることができたが、流石に回数が多かったので消耗も激しかった。
「シェイド様は結構才能がありますね」
「そうなのか?」
思わぬ褒め言葉に聞き返してしまう。
俺に才能があるのは本当なのだろうか?
「魔法の使い始めはすぐに気分が悪くなりやすいんですよ。慣れないことをしますからね」
「ああ、たしかに俺も最初はふらつきとかあったな」
「ですが、すぐに魔力の循環に慣れ、かなりの量の魔力に耐えられるようになりました。まあ、私が徐々に量を増やしたせいでもありますが」
「やっぱりか」
とんでもない暴露に思わずツッコんでしまう。
流れる魔力が増えている気がしたが、気のせいではなかったようだ。
「過剰な魔力は危険なんじゃないのか?」
非難の言葉を口にする。
危険なのは彼女自身が言ったことだと思うが・・・・・・
「たしかに過剰な魔力は危険ですが、上限を少し超える程度ならばさほど問題は無いです」
「上限を超えた時点で問題ないことはないだろう」
「ですが、身体はなんともないでしょう?」
「まあ、そうだけど・・・・・・」
納得せざるを得なかった。
かなりの疲労はあるが、体調は悪くなっていない。
彼女がギリギリのところで訓練したおかげだろう。
「最終的に流した魔力は最初の10倍近いですけどね」
「・・・・・・それって、かなり危険だろ」
「だから、才能があるって言ったんですよ」
たしかにそこまで急成長したのなら、才能があるのだろう。
まさかそこまで凄いとは思わなかったが・・・・・・
「ということは、魔力量が10倍になったのか?」
説明を聞いて、自分の身体を確認してみる。
だが、そこまで大きく変わった感じはしない。
本当に10倍の魔力を流したのだろうか?
「魔力量はおそらくあまり変わっていませんよ」
「え?」
予想外の指摘に呆けた声を漏らす。
魔力は増えていないのか?
「この訓練の目的は全身の魔力の循環を感じることです」
「そういえば、そうだったな」
あまりにも上手くいきすぎていたので、元々の目的を忘れてしまっていた。
その目的なら10倍の魔力を流す必要はないと思うが・・・・・・
「流す魔力を増やすことで通り道が強くなったはずです」
「通り道が?」
理解できず、首を傾げる。
魔力の通り道の意味は理解できるが、強くする理由がわからなかった。
「強力な魔法を使う場合、大量の魔力が必要になります」
「そうだろうな」
強い魔法ほど必要な魔力が増えるのは当然だろう。
初心者の俺でもそれぐらいは予想できる。
「その魔法を使うために魔力を集中させる必要がありますが、その際に通り道が狭かったらどうなりますか?」
「魔力を集めるのに時間がかかる? いや、無理矢理集めようとして、身体にかなりの負担がかかるのか」
「どちらも正解です。時間がかかる程度なら良いですが、過剰な魔力を流すことによって通り道を傷つける可能性もあります」
「それは危険だな」
魔法を使うのは意外とリスクがあるようだ。
それを避けるために訓練をしているわけだが。
「魔力の通り道を広げるためには早めの訓練が大事です。大人になってからでは通り道を一気に強くすることは難しいのです」
「・・・・・・」
神様もそんなことを言っていた気がする。
あれは魔力量の話だったが、通り道についても同様なのだろう。
変化しやすい初期のころこそ訓練すべきなわけだ。
「まあ、ここまで増やせるのはかなり珍しいんですけどね」
「そうなのか?」
「当然でしょう? 例えば、水を飲む訓練をしたとして、コップ1杯が限界の人がすぐに10杯飲めるようになると思いますか?」
「・・・・・・ありえないだろうな」
挙げられた例を想像してみたが、不可能なことはすぐにわかった。
そんなことをすれば、確実に身体を壊すだろう。
「だから、シェイド様には才能があると言ったわけです」
「理解できたよ」
ラストの褒め言葉を今度は素直に受け取れた。
たしかに俺には才能があるようだ。
正確に言うと、シェイド少年にだろうか?
だからこそ、手放したことをもったいないと思ってしまった。
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