あるおじいさんの死
ある老人が穏やかに淡々と自分の死を受け止めます。後に残る家族への感謝をつづります。
幸せだった人生が、温かな家族愛に包まれ天に昇っていきます。
ああ、ワシは死んだのか。九十近い人生じゃったから充分生きたわい。
まだ成仏するには時間があるようじゃ。
皆に挨拶でもしてこようかのう。
いたいた、ワシの子供等。
長男夫婦には世話になったのう。
特に、あの嫁はできた嫁だ。
ワシら夫婦が寝たきりになっても、
ちゃんと家のこともワシらの世話もしてくれた。
感謝してもしきれんな。
これからも、婆さんを頼むぞ。
家を出た子供等は、当てにできんからな。
認知症の婆さんは、大変だろうが、あの嫁なら任せられる。頼むぞ。
他の子供等は・・・。
「さすが爺さんだよな。雨も一緒に持っていってくれた。」
「ほんとだよ。昨日までの大雨が嘘みたいだ。」
「あの爺さんは、天国だろうな。」
「絶対そうね。」
まあ、各々、頑張ってくれとしか言えんな。
影ながら応援はするぞ。
子供が一人足らんが、九十近い人生だ。
いろいろあったさ。
一番堪えたのが、次男に先に逝かれたことだなあ。
突然の事故であっけなかったな。
人生、いろいろだ。そんなこともあるさ。
ワシの兄弟も全員いなくなり、ワシが最後だしな。
ただ、ひ孫も見れたし抱っこもできた。
思い残すことは、無いな。
えーと、孫等は……。
いたいた。元気そうだ。幸せにな。
だが、内孫等とひ孫がいないぞ。
ちょっくら、探してみるか。
内孫に男の子がいないのは、ちと残念だ。
だが、初孫の長女がしっかりしてるから大丈夫だろう。
家を頼むぞ。
次女は、まだ、結婚してない。
本人は、のほほんとしているし、どうにかなるだろう。
三女は、これが一番かわいかった。
ワシの耳掃除や、髪をバリカンで刈ってくれたんだよ。
婆さんよりわしに懐いてくれてな、一緒に寝たことも数え切れないんだ。
ワシが入院して手術時は、暇だからと付き添ってくれた。
これは、うれしかったなあ。
なんせ、ひ孫の母親だからな。
ひ孫は、この母親に似て、わしや婆さんにニコニコ接してくれてな。
婆さんと「この子はカワイイナ。」なんて言ってたんだよ。
あっ、いたいた。
内孫等とひ孫の姿はたまんないな。
なんか、話してるぞ。
「ねえ、ひいおじいちゃん、もえてるの。あのけむり?」
ひ孫もあの鉄の扉の前にいたからな。
ワシが燃えているのが分かったんだろう。
まだ、五歳なのに賢いのう。
「そうだよ。それから天国は行くんだよ。」
誰もが、ワシは天国へ行くと言ってくれる。
うれしいね。
「そっか。ひいおじいちゃんは、けむりになって天国へ昇っていくんだね。」
煙突から白いけむりが真っすぐに空に向かって昇っている。
孫等は、ひ孫の手をしっかり繋ぎ、空を見上げている。
ワシは真っすぐ天に昇れるんだ。
なら、ぼちぼち逝こうかの。
あ~。かわいい孫等やひ孫をながめながら天に昇れる。
それが、こんなに幸せなことだとは思わなんだ。
「みんな、ありがとう。世話になった。達者でな。」
それにしても、空へ一直線だ。迷わなくていいな。
それにしても、このけむりはなんと優しく温かいんだ。
まるで・・・。
天国へ行ったら、会えるかなあ……。
読んで頂いてありがとうございます。
ほんのちょっと皆さんの家族を思い出していただけたら、
ほんの少し、ほんわかしていただけたら幸いです。
投稿は初心者なので、読み終わっての感想を書いていただけたら嬉しいです。マイナスの感想でも結構です。これからの糧にさせていただきます。




