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100、終わり
「あら、朝日が…」
最後に言った女性が、障子を左右に開いた。
1本だけ残ったろうそくの灯が、開け放たれた障子からの風でチロチロと揺さぶられる。
すぐ前の家々の隙間から、日の光が一筋部屋の中へ突き抜けてくる。
その光は、先ほどまで彼女が座っていた一番窓側の席のところまで届いていた。
「今日はこれまでのようね」
彼女が振り向いて部屋をみると、すでに誰もいなくなっていた。
「せっかちなんだから」
ため息ひとつついて、部屋の中に散らばっていたろうそくを近くにある箱の中に適当に投げ込んでいく。
99本箱に入れると、最後の1本をじっと見つめた。
スーッと風がろうそくの灯を包み、その息の根を止めた。
同時に、部屋の中は誰もいなくなった。
後には、お香のような匂いが、部屋の中に漂っていた。