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性壁  作者: 香椎 結月


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15/16

7.5

 下見をしながら遠い記憶を辿った。小さい頃に連れてきてもらった花火大会。多くの人で賑わう場所。そして、トイレも混雑する。仮設トイレも用意されているが、大行列になる。小さい子やおじさんに見えるような人たちはその辺の草むらで用を足していたと思う。

 そういえば、昨年歩いた時、使えないトイレがあったような気がする。スマホで調べると、地図上にはトイレとして存在するようだ。だが壊れているという情報は特に出ていない。

 その場所に向かいながら、綿抜との何気ない会話を思い出した。綿抜の志望校は国立大学の文学部を目指していると話していた。自分も同じ志望校だが理工学部を目指している。大学が同じでも、この国立大学の敷地は広い。学部によっては施設の場所も離れている。既にオープンキャンパスに足を運んでいたので、その光景を想像することが出来た。ひょっとしたら、もう綿抜に会えないかもしれない。

 そんな考えが支配していると、そのトイレに辿り着いた。当日この場所に着くためには、花火大会の会場から混雑を抜ける事を考えても10分。少し速足で歩けば10分はかからないと予想できた。把手が外れているが、その下にある鍵穴の出っ張りをつまんで右に引いてみると、あまり力を入れずに扉を引くことが出来た。中へ入ると人感センサーが反応してトイレの中が明るくなる。扉を閉めたが、鍵は壊れているようだ。そして、もう一つ発見があった。この扉を奥まで開き切ると、建付けが悪く扉が引っかかってしまい、扉を閉めにくい状況となってしまう。これを女性の力で直すことは難しいだろう。するとある閃きが浮かんだ。自分が欲しい最後の欠片を埋めるために、この扉を利用しようと考えた。

 そのためには、当然このトイレで用を足す必要がある。これは綿抜である必要は無い。自分が排尿すればいい。しかし、男という生き物は高揚感を得ると、どうしても股間が膨らんでしまう。膨らんでしまうと排尿行為は上手く行えない。この件に関しては、考える必要があったが、割とすぐに解決した。ある程度の尿を我慢して尿意が高まると、股間が膨らみにくい事に気が付いた。


 そして、ある程度の筋書きが出来た。花火大会の休憩時間にトイレに向かう。男女とも行列をなすことは予想できる。そこで、多目的トイレに行く事を提案する。ここで綿抜が着いてくるか来ないかという2つの選択を用意して考えておく。

 まず、プランA。綿抜に尿意が無く着いてこない事を選択した場合、自分は多目的トイレに行く事を諦めて少し外れた草むらで用を足す。綿抜には周囲を見張ってもらうよう、あまり離れた場所にいないよう説得する。可能性は低いが、綿抜にも実は尿意があり、草むらで用を足すような事になった場合は、当日持っていく予定のレジャーシートで綿抜を隠すことにする。

 プランBは多目的トイレに着いてくるといった場合だ。そして、多目的トイレに着いてからも選択肢を用意する。綿抜に尿意があり、先に用を足す状況になった場合は、鍵が壊れているので自分が外で見張りをする。当たり前だが決して中を覗くような事はしない。そこが目的ではないからだ。綿抜に尿意が無く自分が用を足す状況、若しくは綿抜が用を足して自分が後から用を足す状況になった場合は、扉を奥までしっかり開く。扉は引っ掛かる。女性の力で、この引っ掛かりを直すことは無理だと考えられる。自分も直せない素振りをする。そこで、扉を開いたまま自分は用を足すことにする。綿抜には草むらで用を足すことになった時と同様、周囲を見張ってもらうよう、あまり離れた場所にいないよう説得する。

 これ以外の選択肢は起こらないはずだ。

 肝心の尿意のコントロールは、幾つかの方法を試したが、コーヒーを適量飲んでから、ある程度の飲み物を飲む事で尿意は高まった。当日の体調にもよるので、何回か試してみたが、限界を迎えるには至らなかった。尿意が高まったとしても1時間ほどは余裕がある。余裕があれば思考も通常通り働くだろう。


 当日は全ての行動が予定通り進んだ。綿抜の希望で花火大会の最寄り駅を待ち合わせ場所に選んだため、駅の中の待ち合わせ場所は自分の希望で駅のコーヒーショップの前にした。自然な形でコーヒーを飲むことが出来た。そして、夕食は屋台の焼きそばとラムネを購入した。このラムネを飲み干すと予定通り尿意が高まった事を感じた。

 そして、花火大会の休憩時間。予想通り仮設トイレは大行列をなしている。そこで、多目的トイレの提案をしたところ、綿抜は着いて来るといった。プランBだ。自分が仮設トイレに向かおうとした時、綿抜もついてきた事を考えると、綿抜にもある程度の尿意があるのかもしれない。

 しかし多目的トイレに着いてから予想外の事が起きた。綿抜は、このトイレの存在を知っていた。綿抜が先にトイレの中に入ると、自分に入るよう促した。困惑した。扉の引っ掛かりは使えない。何を考えているのかが分からなかった。しかし、綿抜は言葉をかけた。

「ここ鍵が壊れているの。百花と一緒に来た事があるから知ってるの。だから、二人で一緒に入らないと扉が開いちゃう。緊急事態だから仕方ないよ」

 予想外の出来事だったが、この状況は活かせる。少し明るいところで自分の姿をはっきりと綿抜は見るはずだ。

 膨らんでいない陰茎を出すと封水に向かって放尿を始めた。

 全てを出し切った後に「ごめん、綿抜……みっともない姿を見せたね」と謝罪しつつ綿抜の方を見た。綿抜の頬が紅潮している。綿抜はこの状況を恥ずかしいと感じているはず。綿抜の恥ずかしそうな顔を見ることが出来た。

 最後の欠片は、綿抜の恥ずかしい表情だった。幼稚園の時、おもらしをして、そして着替えていた姿の欠片を全て集めたかった。もう一度見てみたかった。

 小学生時代に綿抜の秘部を見てしまったのが全てのきっかけだったかもしれない。中学生時代は何もできなかったが、高校に入って行動を起こすと運も巡ってきた。ブラジャーを見た。あの時の肌着がブラジャーに変わった。排尿音を聞いた。あの時おもらしをしたおしっこの音を聞くことが出来た。下着を見た。濡れたパンツは、真っ白い無地の綿のパンツだったが、今になっても同じようなパンツを履いている事に歓喜抃舞した。そして、今ここで恥ずかしい表情を見た。幼稚園の頃に見た、綿抜の恥ずかしそうにしていた姿を、成長した今も改めて見ることが出来た。欠片がすべて埋まった。

 達成感を味わうと同時に安心感から股間が膨らみだすことを感じた。甚平の様なゆとりのあるズボンを選んだのも、こうした理由からだ。ジーンズのように体に密着するようなものを着ていたら、間違いなく股間の膨らみが目立ったに違いない。

 また、綿抜が自ら恥ずかしい姿を見せてしまうのは申し訳なく感じた。だから自分が恥ずかしい想いをすることで綿抜にその気持ちが伝われば良いと考えた。全てが上手くいった。

 これで十分だった。これで終わるはずだった。


「でも、ごめん、私もちょっと限界なんだ」

 その言葉を聞いて、自分はトイレの外で見張っていようと伝えようとした時だった。

「ごめん、この巾着持ってて。あと、扉は背中で抑えててね……」

 綿抜が言った言葉に耳を疑った。言葉が出なかった。先ほど綿抜が行っていたように言われた通り背中で扉を抑えた。綿抜は浴衣の裾を捲ると、その下には肌着を着ていた。それも捲り上げると、以前も見た真っ白い無地の綿のパンツが全て露になった。それを戸惑いながらもぎこちなくゆっくりと下ろしていくと秘部を覆う茂みが現れた。いつか見た母親よりは薄い茂み。思い出も合わさっているかもしれないが、うっすら筋を確認できたようにも見えた。そのまま腰を下ろすと、茂みの間から勢いよく放出される音が響き渡った。本当に綿抜も我慢していたのだろう。5分ぐらいに感じたおよそ30秒の放尿が終わった。

 しかし、まだ終わらない。綿抜は自分に巾着からティッシュを出してほしいと要求した。難なく見つけて渡すと、ティッシュを受け取るために綿抜は座ったまま少し自分の方に体を向けて足を開いた。秘部を拭く必要があったからだ。綿抜の視線は自分の秘部に向いている。自分も綿抜の秘部に目が行ってしまった。

 2回ほど秘部を拭くと、そのまま恥ずかし気に下着を上げて、浴衣の裾を直した。

 今しがた綿抜の恥ずかしそうな顔を見て、全ての欠片を集め終わったと思った瞬間に、その欠片が一塊となって再び自分の前に全て現れた。胸がはち切れそうになった。


 多目的トイレの周囲に人がいない事を確認してから二人で出ると、綿抜から「ねぇ、相川君、手つなご」と言われた。先ほどの行為から手を洗っていない事に気付いたので、慌てて「いや、僕の手汚いよ……洗ってないし」と言ったが、綿抜は構わない様子だった。

「私もだよ」

 全ての指を絡めてきた。恥ずかしさの全てを共有するかのように。

 この気持ちは単なる高揚感ではない。好きだ。綿抜の事が好きだ。綿抜でなければ駄目なんだ。自分の気持ちに今はっきりと気が付いた。

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