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性壁  作者: 香椎 結月


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13/16

6.5

 昔から、どうしたら近付くことが出来るか。ずっと考えていた。

 そして、やっとここまで近付くことが出来た。


 相川という苗字と綿抜という苗字は、同じクラスになっても出席番号順で座ると、ほとんどの場合は最長距離で座ることになる。

 故に話しかける機会も少なかった。

 加えて綿抜の恥ずかしい姿を想像するだけで、話しかけることが出来なかった。

 綿抜のおもらしを見たあの日以来、思い出しただけで目を合わせる事も出来ない。


 それでも、同じクラスになれたらいいなという漠然とした気持ちだけで過ごしていた。

 それでは、何の進展もなかった。

 小学校低学年ではたまたま同じクラスだった。何回か隣の席にもなったはずだ。そう思えるのは、綿抜の秘部を見てしまったのは偶然にも隣の席だったことに由来している。

 小学校高学年はクラスが別だった。第二次成長期を迎えたであろう綿抜の姿を遠目に眺めるだけしかできなかった。

 中学校では同じクラスになったのは中学3年生の時だけ。かなり大人びた雰囲気になり、自分から見て才色兼備という言葉にふさわしい女性となっていた。ただ、周囲からは綿抜に好意を持っているような男子はいないように感じた。教室では持参した本を読んでいる事が多く、女子同士で話している姿も滅多に見かけない。物静かな綿抜はクラスでも全く目立たないこともあり、男子からも注目の的とはならなかったようだ。しかし、自分だけは綿抜の事を見ていた。綿抜を見ていても、男子の目線が全くなかったからだ。そして、この姿をもうあと一年したら見る事は金輪際無いと思った。


 だが、中学3年生の一学期の中間テスト後に、どうやら綿抜の成績がクラスで1位であり、学年全体でも1位であるという話を誰かが言っていた。

 綿抜は部活動に入っておらず、部活動で推薦を得るようなことはない。そうすると中学校からもあまり遠くない、偏差値の高い公立高校を目指すだろうと思っていた。その予想は結果的に当たった。

 綿抜と同じ高校に通いたいと思った。これまで進路を全く考えていなかった自分は、初めて進路を考えて目標を決めた。しかし、自分は地頭が良い方ではない。今から相当な勉強を行わなければ、同じ高校には絶対に通えないと思った。

 そこから、全てを投げ打って勉強に打ち込んだ。部活動も早期引退をして、両親に頼んで塾に通うようになった。漫画もゲームも封印して、スマホは物事を調べる道具として最大限に活かした。塾から帰ってきても、まだ足りないと感じて、深夜2時まで勉強をすることもあった。

 両親はあまりの変貌に驚いていたが、勉強に打ち込んでいる姿は悪い事ではない。塾の送迎や、参考書の購入、夜食の提供まで、かなり協力してくれた。

 その甲斐もあって、成績は一気に上がり、無事に志望校に合格を果たすことが出来た。両親は大変喜んでいた。自分も嬉しかった。これが綿抜に対する気持ちに対して動いた初めての行動だった。


 高校入学後、1年生の時は同じクラスにはなれなかった。それでも、同じ高校に通い、少しでも綿抜を目にするだけで十分だと思えた。

 しかし、転機が訪れた。当時の生徒会の書記が式典で司会進行を務め、生徒たちの前で話をしている場面を見て、ある考えが浮かんだ。

(前に立てば、綿抜の姿を見ることが出来る)

 ただ、純粋に綿抜を見たいと思った。

 そして、生徒会役員の書記に立候補したが、幸いにも書記は人気が無く当選した。

 これが、綿抜に対する気持ちに対して動いた二回目の行動となった。


 書記の仕事として司会進行を行いながら前に立つことに慣れていくと、演台の原稿、全生徒の様子、そして綿抜の姿も余裕を持って見られるようになった。

 1年生の時は、ただ見るだけだったが、2年生となってから、久しぶりに同じクラスになった。この学校は3年時にクラス替えが無い。あと2年間は必ず一緒のクラスになる。

 人生において最後のチャンスだと思った。ここで何かを行わなければ、一生後悔してしまう。しかし無情にも時だけが過ぎていき、高校2年生の二学期に突入しようとしていた。そんな時、当時の生徒会副会長の緒方からメッセージが届いた。

『明日の始業式の後、生徒会役員会議を行います。議題は生徒会新聞11月号の特集記事についてです。何か案があれば明日の会議で話し合いましょう』

 これを活かせるのではないかと直感的に感じた。考え抜いた末に、この生徒会新聞を最大限活用した。全てが上手くいった。綿抜に対する気持ちに対して動いた三回目の行動で、胸元からブラジャーを見ることが出来た。

 また、久しぶりに綿抜と会話をすることも出来た。そこから、奇跡的に何かが嚙み合っていった。文化祭の日に偶然にも綿抜の妹を助けた事から始まり、排尿音を聞いてしまった。勉強を一緒に行うようになった。その時間がきっかけとなり下着を見てしまった。


 そして昨日、柳本からメッセージが届いた。

『俺と渡辺で7月の花火大会に行くんだけど、渡辺が綿抜も誘ったらしいんだ。ついでみたいで悪いけど、相川も行かないか?』

 他愛のない様子で問題ない事を伝えたが、心の中では欣喜雀躍していた。

 しかし、今日になって、また柳本から少し長いメッセージが届いた。

『すまん、俺は7月に父親の実家に帰省する事を忘れていた。渡辺は仕方ないと言って花火大会に行く事を諦めたみたいなんだが、綿抜の方は一人でも花火大会に行きたいらしい。なんか綿抜に悪いから、お詫びとして相川が綿抜と一緒に行ってくれないか?』

 この上手くまとめられていない文章を見るに、柳本と渡辺が仕組んだことは明白だったが、この機会を活かすほかない。快く承諾した後、綿抜にも連絡を取ってみたが、綿抜はあっさりと花火大会に行く事に同意してくれた。


 図書室で勉強をしている合間の息抜きとして、花火大会のプランを立てる事にした。

 待ち合わせ場所を決めた。お互いの最寄り駅は同じだが、綿抜の希望で花火大会の最寄り駅を待ち合わせ場所に選んだ。

 服装も決めた。綿抜は浴衣を用意すると言っていた。それならば自分も甚平を着ていこうと思った。

 夕食は屋台で買う事にした。少し早めに会場に行けば、そんなに並ぶことなく買えるだろうと判断した。

 花火大会を見る場所も決めた。小さい頃、メインとなる会場から少し離れた場所で見た記憶があるものの、せっかくだから大勢の観客が賑わっている中で雰囲気を楽しもうという結論に至った。

 完璧な当日のプランが出来上がった。

 

 しかし、普段とは異なる環境では、何かしらの予期せぬ事態も起こり得る。

このプランを完璧に遂行したとしても、必ず隙が出来る部分が生じる。

 そのために、自分一人で下見に行こうと決めた。

 生徒会の仕事がある日、綿抜は渡辺と一緒に帰る。ただ、生徒会の仕事と言っても、あまり時間をかけずに終えることが出来る日もある。この日を使って、自宅には帰らず。花火大会の最寄り駅、そして予定会場へ行こうと考えた。昨年の様子などは、公式ホームページや、各SNSにも掲載されているので、当日のイメージが良い具合に浮かんできた。

 そういえば、昨年の生徒会交流会でも、同じような場所を歩いた記憶がある。そういった現地の様子、昨年の記憶、ホームページやSNSの記事を組み合わせた。

 最後の欠片を集めるために策を練り始めた。

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