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性壁  作者: 香椎 結月


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プロローグ

ジェンダー論

課題:女性らしさによる弊害を性的な要素を絡めて自由に述べなさい


『女性として生を受けた者は、女性特有の恥ずかしさから身を守らなければならない』


 性的な恥ずかしさは男女問わず誰もが持っている。

 例えばもし第三者に、裸、排泄、性行為を見られてしまうのは、男性も女性も恥ずかしいという気持ちをもっている。

 しかし女性には男性とは異なる状況から生まれる性的な恥ずかしさがある。


 スカートが捲れて下着を見せぬよう気をつけなければならない。

 着替える時に下着は上下とも人前に見せてはならない。

 排尿は男性の様に気軽に出来ない。

 大きく分類すると、この3つに集約されると感じている。


 男性がスカートを履くことは少ない。現代において、中学校や高校の制服で女性はスカートかズボンを選択できるようになったが、男性が制服でスカートを履くことはまだまだ少ない。スカートは女性が着用するファッションの一つであるとう認識が高い。そして、ズボンと大きく異なるのは不意に下着が見えてしまう可能性がある点に尽きる。スカートが捲れてしまわぬよう神経を集中させることになる。

 そのため、日常生活においては、座る動作一つから気を付ける。椅子に座る時も、床に座る時も、足を閉じて座るように小さい頃から教育を受ける。ズボンを履いている時も出来るだけ足は閉じる。立っている時でさえ足を大きく広げて立つことはしない。女性なのにお行儀が悪い、端無いと言われることがある。

 これは結果的にスカートの時にうっかり足を開いておかぬ予防となる。そうして、親や先生の言いつけ、友達からの助言を守って過ごしていると、段々と下着を見せないような姿勢を自然とつくるようになる。

 だが、足を閉じて椅子に座っても、膝は少し開く。膝下の長いロングスカートを履いていれば、この姿勢のままで問題ないが、膝頭より上の丈のスカートを履いている場合は、膝の隙間から下着が見えてしまう可能性がある。

 柔らかい生地のスカート、例えば学生の制服のスカートであれば、座る前に両足の間にスカートを挟んで座れば、ほぼ下着が見える事は無い。多くの女性、特に学生は、この方法で座ることが多い。

 しかし、デニムのスカートやタイトスカートは生地が硬い場合が多いため、この方法は使いにくい。膝を閉じて座るか膝の前に荷物を置くしか方法がなくなる。

だが、膝を閉じ続けて座るのは、意外と辛い。膝を閉じる姿勢は、太腿の内側に力を入れ続けなければならない。

 床に座るような時は、さらに気をつけなければならない。スカートの後ろをしっかりと抑えて座らなければ、座る瞬間に下着が見えてしまう。

 座ってからも油断はできない。足を組み替える時、体育座りになる時、スカートの後ろを抑え続けなければ、スカートは重力に引かれて床に落ち、両足の太腿の隙間から下着が見えてしまう。

スカートを履いている日は、こうした戦いが日々繰り広げられている。

すると、いつの間にか下着を他人に、特に異性に見せるのは非常に恥ずかしいと感じるようになる。不意に下着が見えてしまうことは女性にとっては大変な恥だ。


 男性も当然だが下着を履いており、これを見られるのは恥ずかしいと感じる男性も多くいるはずだ。しかし男性と女性は胸の形が異なることもあり、肌着やブラジャーを見せてしまう事にも抵抗が生まれる。上下とも身を守る必要があるため、男性よりも下着を見せてはならぬ環境は厳しい。

 幼少期の女性はまだ胸の膨らみもなく、男女による体つきの変化は大きく見られないものの、小さい頃から肌着を含めた下着を見せぬよう教育を受けるため、下着を見せぬための技術を身につける事になる。

今の時代、男女一緒に着替える事は少ないが、それでも、男性の目を気にして着替えを行わなければならない場面が女性には少なからずある。その代表が学校の体育の時間だ。ここでは私服から体操着に着替える必要がある。学校によって体操着の種類は異なると思うが、概ねTシャツと短パンを着用するという事をここでは想定する。

 まず上着の着方として一般的な方法は、体育の時間の前に来ている服がTシャツであってもポロシャツのようなものであっても、その上から体操着を着る。そして、両腕を服の中で抜き、体操着のTシャツが捲れないように体操着の両袖に腕を通す。そのまま首から服を外せば上着の着替えは完了となる。

 短パンを履くときの注意点として、スカートを履いていれば、スカートを履いたまま捲れないように短パンを履く。このような方法であれば下着は見えにくい。キュロットスカートであれば、まず短パンに片足を通してから、もう片方はキュロットスカートの間を通して反対側の足を入れる。この際は、足を大きく上げなければ下着は見えにくい。ズボンを履いてきてしまった場合は、着替えが終わった他の子にスカートを借りて、前述の形で短パンを履く。

 こうした着替えを行っていても、不意に失敗して下着が見えてしまいそうになる場合もある。そうした際は、声を掛けあい、体を近づけて相手の着替えの様子を見せない、といったように女性同士で守りあう気持ちが生まれ、連帯感のようなものが生まれる。

 すると、着替えるという行為自体が、常に周囲を意識して行動するようになる。


 最後に排泄を挙げたい。排泄は男性と異なり、女性は小さい頃から個室が用意されている。男性の様に、小と大で分かれる事は無い。男性の様に個室に入る事の恥ずかしさは皆無だ。この点に関しては、周りから小か大か判別できないので、男性より利点だと思われる。

 ただ、男性と女性では体の構造が大きく異なる。男性は立って排尿が行える。便器に立つ。チャックを下ろし下着から陰茎を出す。排尿する。陰茎を振る。陰茎をしまいチャックを上げる。水を流す。この一連の動作は1分もかからず直ぐに行える。

 しかし、女性は陰部だけを露出して排尿することが出来ない。個室に入る。鍵をかける。スカートかズボンを下ろす。下着を下ろす。腰を下ろす。排尿する。陰部を拭く。下着を上げる。スカートかズボンを履く。水を流す。鍵を開ける。個室から出る。これだけの事を行わなければならない。男女ともに行う排便と同様の行為を、女性は排尿時に行う必要がある。この一連の動作は男性の排尿の時間と比べて二倍以上の時間がかかることが多い。

 故に厄介な事が起こる。個室の回転率が悪い。個室の前に列をなすことも珍しくない。加えて、女性は男性に比べて尿道が短いためトイレが近くなりやすい。しかし、男性の様に、気軽に出来るものではないため、排尿行為を少し我慢してしまう事が日常的に起こる。

 こうして我慢を重ねると、タイミングが合わない事も起こる。全て悪い方に流れた時、おもらしをしてしまう。おもらし自体は男性にも起こりえる事だが、上記の理由から女性の方がおもらしをする確率は高い。

 そのため、女性は小まめに小用を足すよう心掛ける。男性に断りを入れてから、場を立つことも少なくない。「これからおしっこをします」と宣言すること自体も恥ずかしさを感じる。故にこれも女性特有の恥ずかしさと言えるだろう。


 こうした行為に高揚感を得る男性は、少なからず存在する。残念ながら近年は盗撮の被害が事件として取り上げられることも少なくない世の中である。その多くはスカートを下から撮る行為や、更衣室やトイレに隠しカメラを設置する行為が挙げられる。

 つまり、女性特有の恥ずかしい行為は、男性にとっては高揚感を得る材料となっている。


 だからこそ、女性として生を受けた者は、女性特有の恥ずかしさから身を守らなければならない。無暗に男性に高揚感を与えてはならない。危険な状況に身を置く行為となる。

 しかし、心を許せる男性であれば、恥ずかしさを魅せることで、相手の性的興奮を高めて、性行為を行い、快楽を得るだけではなく、将来的には子孫繁栄にも繋がる。

 女性特有の恥ずかしさは時として武器にもなるだろう。

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