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第三話:狂人の観察記録
乾いた筆致で、記録者は今日の出来事を書き残す。
『対象S、変化なし。行動は非目的的。だが結果的に、戦略的な点で特異点を発生させている』
筆記者の名はフィル=セナリオス。
元・地下会議の議長補佐。
かつて闇と呼ばれた男は、今は片田舎の師範代を演じている。
「彼の行動は“狂気”ではない。“秩序の破壊”だ。……だが、そこに“整合性”があるとしたら?」
記録の途中、フィルは顔を上げる。
部屋の隅に置かれた鳥籠が、カタリと揺れた。
「……さて、世界はどう応じる?」
彼は筆を置いた。
それがどんな意味を持つのか、まだ誰も知らない。